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【日記】9月9日〜9月13日

9月9日(月)

「えっ」。スタバで今日から読もうと楽しみにしていた『文學界』の目次を見ている時に思わず声が漏れてしまった。予想していなかった自分の声に少し恥ずかしくなったが、幸いなことにカウンター席の隣りの席には人がおらず助かった。

 驚きのあまり思わず声が出てしまったのは、毎号楽しみにしていた藤原麻里菜さんの連載『余計なことで忙しい』が今月号で最終回だったからだ。調べてみると、今月号の最終回は34回目だった。恐らく休載はなかったと思うので約3年近く読み続けていた連載だった。これで毎月の楽しみが1つ減ってしまった。

 そんなことを考えていると感慨深くなり、昔渋谷で開催されていた藤原さ
んの展示に行ったことも思い出したりしていた。実際に展示に行った時、たまたま藤原さんがいるタイミングだったのだが、なんとなく声かけられるの嫌なのかもと思い、「余計なことで忙しい楽しみにしてます」的なことすら言えなかったのを思い出した。

 『余計なことで忙しい』は、毎回クスッと笑えて、面白い視点に出会ったり、少し考えさせられたりするのを楽しみにしていた連載だった。
 また毎月の些細な楽しみを見つけようと思う。

藤原麻里菜さんの連載『余計なことで忙しい』が最終回だった文學界 2024年10月号

【今日の一節】

作品は自分の子供だという芸術家は多いが、私はうんこだと思っており、うんこを保管するために毎月倉庫代を払うのがなかなかしんどくなってきたのだ。

藤原麻里菜「余計なことで忙しい 最終回」『文學界 2024年10月号』:P272

9月10日(火)

 最近電車の中ではオーディブルばかり聴いているから、久しぶりに本を読もうと思い、朝、家を出る前に本棚からまだ読んでいない文庫本の中から1冊を選ぶことにした。8月に買ったポール・オースターの『ガラスの街』もいいかなと思ったが、本棚に並んだ文庫本の上に横たわるように置かれていた小原晩さんの『ここで唐揚げ弁当を食べないでください』にすることにした。妻が買った本で、結構話題になっていたのでいつか読もうと思っていた1冊だった。

 読むのを楽しみにしながら駅への道のりを歩き、ホームについてリュックから本を取り出す。ページを捲ると小原さんのサインがあった。そうだった。妻が『ここで唐揚げ弁当を食べないでください』を読みたいと言った時に、本屋にもアマゾンや楽天でも売ってなかったため、別のネットショップで定価で売っていたのがたまたまサイン本だったのを思い出した。

 なんだこの瑞々しい文章は。彼女の東京での暮らしの一部を描き出したエッセイは、じんわりと自分の中に広がるような感じがあった。この本の薄さだとあと数日の通勤を楽し時間にできそうだ。 

【今日の一節】

ある人はローソンでPontaポイントをためるとカップラーメンなどに引き換えることが出来ることをおしえてくれて、「今回は特別に」と言って先輩のPontaポイントでカップラーメンを買ってくれた。その可もなく不可もないはずのカップラーメンが、とんでもなくうまかった。

小原晩『ここで唐揚げ弁当を食べないでください』:P12

9月11日(水)

 いいタイミングで昼休みに入ることができず気がついたら16時だった。朝にヨーグルトを食べただけで、あとはコーヒーと水しか口にしていなかったのに不思議とお腹が減っていなかった。
 それでも流石におにぎりでも食べようと思いオフィスビルの外に出ると、ムッとした熱気に身体が包まれた。9月になってしばらく経つのに、体感はまだ夏だった。近くのコンビニ向かう途中、信号待ちをしている時に何気なく見上げた空には夕方の気配があり、視覚からは秋が感じられた。
 信号が変わる。今日予定していた大きな仕事はもう終わった。おにぎりを食べて、もう少し頑張ろう。
 16時に食べるおにぎりは、お昼ご飯ではないよなと思いながら、コンビニのおにぎりコーナーへと進んだ。

【今日の一節】

タバコの煙の中、旨いブレンドコーヒーを飲み、たまごとソーセージのトーストを冷めないうちにむしゃむしゃ食べる。忙しなく食べる。喉につまりそうになったら、レモンが香る水を飲む。うれしい。右には甘いもの好きのサラリーマン。目の前には芸人と作家。左には破れたTシャツを着た若者がネットフリックスを見ている。私は紀伊國屋書店新宿本店で書いたての本をでれでれと読んでいる。そうやって、いつまでもいつまでもゆったり過ごす。

小原晩『ここで唐揚げ弁当を食べないでください』:P51


9月12日(木)

「あっ!!!」
 仕事終わりのランニングを終えて軽くシャワーを浴びた後、明日出す粗大ゴミに貼るチケットを買っていなかったことを思い出した。完全に何かを思い出した声色だったのか、声を上げた理由を説明する前に妻も粗大ゴミのことを思い出したようだった。
 これから夜ご飯を食べるというタイミングだったので、ご飯を食べた後にコンビニまで行くことが決定した。歩いて5分くらいなので別に遠いわけではないが、なんとなく面倒だ。そこで少しでも前向きな気分になるように、ついでにアイスを買うことにする。なんなら少しだけ高いアイスを買おうと思いながらコンビニに向かった。
 ネガティブな気持ちをポジティブに変えてくれるアイスは偉大で、数百円で買われしまう自分の面倒な気持ちはなんて安いんだ。これからも積極的に面倒な気持ちを買収していこうと思う。

【今日の一節】

女の子夜道は危ない送ります君が好きですでも無職です。

小原晩『ここで唐揚げ弁当を食べないでください』:P62

9月13日(金)

2週間連続で金曜の夜は瓶ビール。お昼くらいまでは、来週の土曜日にハーフマラソがあるしお酒を控えようかななんて考えていたけど、もう夕方になると1週間働いた自分を労いたい気持ちでビールを飲もうと決断する。

別に缶ビールでもいいだが、なんか瓶がイイ。瓶ビールを飲む時は、小ぶりなグラスがなんかイイ。居酒屋で瓶ビールを注文した時に、グラスが思ったより大きいとほんの少しだけ残念な気持ちになる。

なんかイイってのが大切なんだなと思う。

【今日の一節】

——そのままですよ。社会の敵ですから、社会にいい思い出がないんですよ。

宮内悠介「暗号の子」『文學界 2024年10月号』:P167

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