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240323.SAT〜240329.MON

Lビルは工事請負契約が締結され、いよいよ着工。着工会議には施主の担当者が来てくれ、AWAからは僕の他にリーダーとアシスタントの3人で出席。現場からは営業担当と現場所長が出席したが、4月から若手2人が加わるとのこと。数日前に「常駐は若手ひとりで他にベテランの統括が着きます」と聞いた時は、単なるリフォームの延長だと思われていそうで危機感を感じた。強く言わなかったけれど、こちらの反応をみてすぐに体制を充実させてくれたみたいでちょっと安心。こういうのは本当に要注意だ。
建築の再生は、単なるリフォームや大規模改修では決してないし、ましてや工期と金額を守って言われたモノを発注するだけの単純作業では全くない。
意匠構造設備を全て更新する再生では、スケルトンにする過程で内装材では隠されていた色々なモノが顕になる度に大なり小なり設計変更を迫られる。しかも、半年〜一年がかりで躯体を建ち上げながら内装を考える新築とは違って、再生は1ヶ月で内外装を解体したらもう補強、設備、仕上げの工事が始まる。その上で不測の事態に対処しながら工期と予算を守らないといけないのだ。
このことを理解せずに施工会社が受注してしまうと、現場は悲惨になる。予算と工期の帳尻を合わせることでいっぱいになってしまうと作品どころでも無くなってしまう。苦い経験を何度かして、今では着工時に必ず単なるリフォームではない事を徹底的に周知することにしている。その一番の鍵が所長をはじめとした現場の体制だと思っている。

年明けに着工したAビルは11回目の現場定例。設備スペックや建具の方針についてオーナーの最終的な意思決定をしてもらったので、方針を現場に伝えて施工図の作成を依頼。色々な取りまとめは大変な苦労をしていると思うが、現場が上手く回るためには不可欠なのでぜひこの調子で取り組んでもらいたいところ。AWAのチェックも膨大だがやり切りたい。
こちらの現場は統括の所長と実働の監督がよく動いてくれて、今のところ上手く回っている(営業との連携までリソースが回っていない所があるけれど)。着工早々に不測の事態が連発してるけど、現状全て着工会議資料に沿って対応している。「そんな事いま話す必要があるのか」と初めてのクライアントや現場からは思われてたかも知れないけれど、十分に練った体制で着工会議を組んでやっぱり正解だったと振り返る。

企画終盤のSビルは、テナントが退去したとのことで早速スタッフを連れて現地調査。現場に足を運ぶと既存図面を眺めている時とは違った考えが浮かんで来るものだ。イメージを膨らませつつPS内部やテナントが塞いでいた窓といった技術的なポイントも隈なくチェックし、ついでに消防署に寄って今の状況や必要になる設備を確認。
前日にREDO JIMBOCHOのオーナーから小さな不具合があったと連絡を受けていて、午後に神保町へ移動。担当者が来るのを待ちながらスタッフにプロジェクトを説明する。現地を見るのは今回が初めてのスタッフもいて、いつもより少し丁寧な説明になる。修行時代は事務所の図面を持って竣工した作品を見て周り、担当しているプロジェクトにはないポイントを見つける作業や図面で予習したディテールやマテリアルを確認する作業が楽しかった。彼らにも色んな事を吸収して欲しいと思う。

金曜の午後はHビルのスタディ模型を囲んでデザインの議論。小さなプロジェクトだけど、直前のプロジェクトを発展させることにチャレンジしている。なるべくシンプルで抽象的な架構をつくれないか、あれこれみんなでアイディアを出し合う。
少し前まで就業前のプロジェクト報連相の最中にデザインの議論が始まってしまい気づけば遅い時間…となる日がしばしばあったので、プロジェクトの議論をする時間を取ることにしてみた。上手くいきそうであればこの感じでやっていこう。

いつも何冊かの本を読み進めているのだけれど、思い立って東浩紀の《存在論的、郵便的 ジャックデリダについて》を読み始めることにした。修行時代にボスの本棚に置いてあった本で、難しい建築本に太刀打ちできるようになるための訓練になるかも知れないと手に取ってみたらむしろ更に難解だったことで放り出して依頼のリベンジ。
冒頭でデリダが理論から実践に移行したことを指摘し、その動機に対する疑問を投げかける。デリダが見た理論的なものの限界を確認することが本書の趣旨みたいだ。執筆当時に哲学の博士課程にいた著者にとって、それはそのまま自身の問題に直結する。実際、東の活動は時代を経るごとに執筆による理論の提出からゲンロンカフェの運営や番組出演といった実践に移行している。もしかしたら、理論的なものの限界と出口をデリダに学んで実行しているのだろうか。

夜に雨に打たれたせいか、寝巻きが薄いせいか、睡眠時間がバラバラの日が続くせいか、木曜の朝から少し喉が痛み始めている。週末もやることが多いけれど、早めに寝てしっかり回復しよう。

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