2022/03/21-2 伊達政宗公

伊達政宗公の御遺訓と言われます。まずは前半。

仁に過ぐれば弱くなる。義に過ぐれば固くなる。礼に過ぐれば諂(へつらい)となる。智に過ぐれば嘘を吐く。信に過ぐれば損をする。

冒頭の仁義礼智信についてのところは、「五常訓」とも言われている模様です。人間の本質をついていると言われますが、「何事もバランスが大切ということ」のように感じます。(レーダーチャートのイメージ)

続いて後半。

気長く心穏かにして、萬(よろず)に倹約を用いて金銭を備ふべし。倹約の仕方は不自由を忍ぶにあり。此の世に客に來たと思へば何の苦もなし。朝夕の食事うまからずともほめて食ふべし。元来、客の身なれば好き嫌いは申されまじ。今日の行くをおくり、子孫兄弟によく挨拶をして、娑婆の御暇(いとま)申すがよし。

ベースにあるのは仏教的世界観でしょうか。この世で起きることは夢まぼろしのようなことで、人は生まれいでた限り、必ず逝く時がやってきます。そういう限りある時間の中で穏やかに心乱さず、周囲との良い関係を保ちながら、生きていくことが大事だと言われているように感じます。

前後半を通じて思うのは、いずれも自分がかくあるべきと、只管に自我を通すというよりは、社会の中にある自分という立場を認識して、その間で生かされている(一人生きているのではなくて)自分の姿を受け止めて、節度を以て暮らすことの大切さを語られているような気がします。

伊達政宗公は戦国時代のピークを超えて生まれました。既に豊臣秀吉、徳川家康の天下がほぼ定まった時代の中で、時に自分ではどうにもならない環境の中で悔しい思いもしながら過ごされたかと想像されます。色々な思いを感じながら生きてこられた結果、最終的に人と人の関係の中で生きることの大切さを語ったというのが、伊達公の器の大きさや、あるいは人のあるべき姿を感じさせます。