幽霊船の物語
ある夜、海辺の小さな村に住む若者のトムは、海の上で奇妙な光を目撃した。
その光は月明かりに照らされた中、ゆっくりと浮かび上がる大きな帆船の形をしていた。
しかし、その船には乗組員の姿が一切見えなかった。
「あれは伝説の幽霊船じゃないか…」と村人たちは囁きあった。
その船は100年前に突然消えたと言われる「シルバーミスト」という名の船だったという。
トムは船に魅かれ、小さなボートで近づいてみることにした。
船に近づくと、彼は甲板から聞こえる微かな歌声を耳にした。
歌声は哀しく、しかし美しかった。
甲板に上がると、トムは船の中央で一人の女性が歌を歌っているのを見た。
女性はトムに気づくと、彼に近づき、「私たちはこの船に囚われてしまった。
そして、私たちの魂はこの船とともに永遠にさまよっているのです」と語った。
トムはその女性が100年前の船の乗組員であることを理解した。
彼女はトムに、船の呪いを解くための方法を教えてくれると言った。
それは、夜明けまでに船の全ての乗組員の名前を呼び出すことだった。
トムは時間との戦いとなる中、船の日記を読み、一人一人の乗組員の名前を大声で呼び続けた。
夜が明ける寸前、彼は最後の名前を叫び出した。
すると、突然船は光り輝き、海の中へと消えていった。
その場にはトムと、彼のボートだけが残されていた。
村に帰ったトムは、シルバーミストの乗組員たちの魂を救った英雄として讃えられた。
そして、それ以降、村の海岸で幽霊船の姿を目撃する者はいなくなった。
おしまい