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それぞれの秋

陽溜まりの坂道に立ちどまり
通りすぎる学生を見ていた
俺もあの頃はあんなふうに
きらきらと輝いて見えたろう
授業にも出ずに お茶を飲みながら
くだらない夢を話した
突然おこった無精ひげのおまえも
噂では苦労していると

今も忘れられないのはあの時の言葉
幸せになろうなんて思っちゃいけない

愛した女ひとりと 苦労を共に出来たなら
そんなささやかな人生も きっと悪くはない
夢、散りじり夏は過ぎ去り それぞれの秋

たしか去年の夏の頃
届いた一通の手紙には
旅好きなあいつのおふくろから
痛々しいほどの細い文字
ある雨の朝 見知らぬ町で
自ら命を終えたと
母に残した一行の言葉
悲しみだけが人生

今も忘れられないのは あいつの口ぐせ
人は自分の死に場所を捜すために生きる

ささやかに 生きている友達の
人生とは 一体何だろう
夢、散りじり夏はすぎ去り それぞれの秋

今では二人の思い出も 忘れかけるほどの毎日
ふと立ちどまる道端に 悲しいほどの赤い落日

夢、散りじり夏はすぎ去り それぞれの秋
夢、散りじり夏はすぎ去り それぞれの秋

これはワタシが20年位前に聞いていた谷村新司のCD中に収録されている「それぞれの秋」
今日、ニュース速報で谷村さんの訃報を知った

20年ほど前、ツレと奈良の東大寺で行われたコンサートに行った。
本当は当時広島に住んでいた妹を誘って一緒に行くつもりでいたのだったが、妹が体調を崩し来られなったので、急遽、ツレと出かけることになった。
芝生にシートを敷き観覧。東大寺の大仏様を背に谷村さんは洒落たトークで笑わせて、歌では酔わせた。紳士的でスマートな話し方も素敵だった。
確か、音楽家の千住明さんもおられたと思う。
季節は丁度今頃だったが、夜の野外はとても寒くて、持っているものを体中にまとったことも覚えている
あっという間に数時間のコンサートは終わったが、古都奈良の空気感と余韻は今でもありありと思い出せる。

谷村さんの歌で一番好きなのは?と聞かれても答えられない。余りにも多くありすぎて。

皆様もそれぞれの秋を過ごしておられるのかと。
明日はカーテンを洗おう。
扇風機を片付けよう。
拾ってきた銀杏を乾そう。
CDを取り出して、久しぶりに谷村新司を聴いてみよう。

合掌。


画像はクリエイター山根あきらさんのをお借りしました
ありがとうございます。







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