第5話 腸の不具合と抗がん剤治療

抗ガン剤の話の前に。
この話は書くことを躊躇したが、やはり勇気を出して書き残すことにした。
同じ悩みの人に届けばと。

大腸の腫瘍は小さいものであれば内視鏡検査の時に取れる。私の退院後、ほどなくして夫も胃カメラと大腸内視鏡検査をしてもらい、大腸に3つの小さなポリープが見つかり除去した。内視鏡で取れてしまえばとても楽だけど、私のように大きく成長してしまった腫瘍は大腸ごと幹部を切りとって繋げるという手術が必要になるのだ。下行結腸を20センチほど切除したのだが、短くなってしまった大腸との付き合いは慣れるまで大変だった。

まず、トイレが我慢出来ないのだ…

腸閉塞のリスクや縫合した部分が心配なため、便秘は禁物なので便を緩くするお薬を服用する必要があり常にお腹はゆるい状態である。

私の場合は下降結腸を切っているので左上のカーブがなくなりS字結腸にストレートにつながっているため、我慢ができなくなったのだと思う。

常にトイレにすぐに駆けこめるようにしていないといけないのだ。

出先で困らないようにトイレ情報を事前に調べたり、電車も特急に乗らないようにしたり、食べ物に気をつけたりする努力も必要だった。

最初の頃は恥ずかしくて夫にしか打ち明けらなかったが、ネットで同じような手術をした人のブログを探して読んだり、SNSのコミュニティ(少なかったけど)をのぞいたりもして情報を集め、同じように悩んでいる人が多くいることに少し心がほぐれたのだった。
今でこそ、がん患者会やネットでの患者のコミュニティが多くあるだろうけど、当初は孤独な戦いだったのだ。

あと、腸がよじれるような感覚、という症状もあった。

体をねじったり腹筋に力を入れたり大笑いしたりすると、腸がひきつるような感じになり痛くて身動きが取れなくなる事が時々あった。

医師いわく
「腸の位置が落ち着くまで仕方ないです。他の臓器との位置関係を修正してるんでしょう」
とのこと。

自分のお腹の中で内臓同士が譲り合い、位置を確認し合ってる様子を想像してみたりした。
「みんなで仲良くやっていこうね」
と自分のお腹に語りかけてみたりした。

今では殆ど症状も緩和されたが、本当にトイレ情報検索アプリはどなたか充実したものを作ってほしいと切に願う。オストミー対応トイレや、混雑状況などもわかるもの、子連れ対応、介護用などなど、色んな状況をサポートできるものが充実するといいなと思う。
世界一トイレが綺麗な日本だからこそ、さらなる進化を期待して、そして海外でもトイレ情報が共有されることを願う。
排泄のことは生きていく中でとても重要な事なのだ。


肺への転移が確定し、今後の治療法の説明を受ける。

まず、抗ガン剤で患部を叩いて小さくして、運が良ければそのままがん細胞は消滅するかもしれない。消えなくても小さくなったら呼吸器外科で手術し患部を切除しやすくなるだろう。

がんによって抗がん剤の薬も治療方法も変わってくるのだが、大腸がんの抗ガン剤はとても副作用が強い事をあらかじめ納得しておいてくださいとの説明も受け、そしてとても高額だということも付け加えられた。

薬は2種類を提示された。

・folfox+アバスチン
・folfori+アバスチン

この二つの違いは難しくて説明されたことも殆ど覚えてないけど、
前者の副作用は痺れが強く、
後者は脱毛が強くあらわれる、

それだけとてもよく覚えている。

私は脱毛より痺れを選びfolfox+アバスチン療法を選ぶ事にした。

この薬を投与するには血管にカテーテルの挿入と針を刺すCVポートを埋め込む必要がある。
薬の投与が3日間に及ぶため、普通の点滴では血管が持たないことと、確実に漏れる事なく体内に薬を投与するために必要なのだ。

3日間の投薬を2週間ごとに、とりあえず6クールやることになり、
CVポート設営手術と最初の投与のために2度目の入院をする事になった。

第1回目の投薬は入院中に終了するため針は抜いてもらえるが、2回目からは初日に病院で点滴を5時間行った後に、薬の入ったペットボトルみたいな容器を肩に下げて点滴したまま帰宅し、3日目に自分で針を抜き、次回の投薬時に針も容器も持参するという流れになる。

消毒なども含めとても慎重に行わなくてはいけないので針を抜くのはひとりで出来ないため、夫も一緒に講習を受けてもらい、手伝ってもらう事になった。

なんだか、どんどん大変な事になっていく。

二人とも、この先いったいどうなってしまうのか、不安を抱えたまま、消化器外科の病棟は満床のため、別棟にある緩和ケア病棟に入院することになった。

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