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コロナと認知症

約3年前から未知なる病原体COVID-19と
医療スタッフは戦うこととなったのですが、
最初の1年ほどは、一般病棟には、ほぼ罹患している患者はおらず、3次救急から救命センターに患者が集められ、私は同じ病院にいながらもいつ自分も感染するのかヒヤヒヤしていました。

それがみるみるうちに
コロナの病棟が出来、スタッフが集められ、派遣されるようになってからは、他人事ではなく
世の中が在宅ワークに切り替わるなか、日々遅くまで残り、休みもなく出勤した辛い毎日を思い出します。

コロナが院内あちこちでクラスターになっていく中で、認知症ケアチームの活動は、今までにも増して難渋を極めていくことになります。

今でこそ、5類感染症になり様々な縛りは緩和されたものの、実際の現場では、まだ隔離や接触者の扱いはそんなに大きくは変更しておらず、
「何が5類だ!」と言いたいぐらい
管理は変わっていません。

認知症の人は、COVID陽性になると
まるで「歩くテロリスト」様な扱いを受けます。
・マスクがつけられない
・失見当識によって、隔離環境の継続が困難である
・手指消毒の必要性、実施ができない
などの理由により、隔離環境のなかでまず選択されること

身体拘束

この自由を奪う身体拘束は、
COVIDに罹患し、体調不良や炎症などせん妄の要因を多く持った認知症患者にとっては
せん妄のみならずBPSDを引き起こします。

大声を出す
暴力、暴言

隔離になり、自由を奪われた認知症の人は
この様な理由で抗精神病薬を投与開始されることも少なくありません。

このような状況で2週間近く隔離される認知症の人は
身体拘束や抗精神病薬の投与などの普段の生活からは予測さえつかない、悲しみの世界で生きていきます。


昼夜逆転
認知機能の低下
ベッド上生活による筋力の低下 
はたまた、
薬物の過鎮静によって食事が取れなくなる、二次的に誤嚥する

など、COVID罹患に伴い
COVIDそのものの病状以外のことで
元々の生活を送ることができない状態
はたまた最悪の場合、死に至るケースも多いのではないでしょうか。

また認知症の人は
予防的行動が取れず、入院という閉鎖的環境によってCOVID感染を起こしやすくなります。
実際に
私が関わる認知症ケアチームの中の患者さんも多く、入院中にCOVID感染しました。

最初のクラスターの際は
管理方法も厳重で現場も凄まじい混乱と多忙な状態でした。
何よりも、スタッフが感染していく中で
患者さんはどんどんやってくる。
残されたスタッフで、毎日を乗り越えながら
患者の安全を守る。

そんな厳しい状況の中で
認知症の人の尊厳を守る…
私は各個室を回り
少しでも抑制を外す
室内で歩く

そんな時間を繰り返しました。

それでも日々衰退する患者さんを前に
孤独を感じました。

しかし、チーム全員にその様なケアができるわけではなく、スタッフに強要することもできず
無力さを感じる毎日。

認知症の人に必要な「なじみのもの」など
もちろん隔離の部屋には、持ち込めるわけもなく
無機質な部屋にあるのは
時計、持っていても携帯電話ぐらいなもの。

リアリティオリエンテーションにも限界を感じました。使えていたら携帯電話が使えなくなる方もいらっしゃって、家族は本人に会えない中で、認知機能が落ちていく患者を感じ、不安の連絡をしてくる。
そんなことにも何度も対応しました。

Padを使用したweb面会を始めましたが、
1日の中で、その時間に必ずしも患者の体調や意識の良い時に行えるわけでもなく、
web面会をすることで、さらに不安を煽る様な結果になることもあります。

コロナ禍での認知症ケアは
難渋することばかりで
結果が出ないことばかりです。

その中で私が力を注いできた事。


スタッフへの教育と、家族への支援

まずはコロナ病棟の看護師に
せん妄とBPSDのケアや対策について、
学宿会を行いました。 
その内容を踏まえ、現場では非薬物療法を中心に行えることを共に考える。
なかなか結果は出ないことばかりですが、
COVID感染で起きる二次的障害に対して
予測し、予防的に関わっていくこと。
薬剤や身体拘束にはゴールや期間を決めて
漫然とそのままにしないことを徹底しました。

隔離の間に変わり果てていく患者さんに
不信感を持つ家族も多く、
メールや、LINEを使用して、家族に日々の様子を画像や写真を送り、
医療者が自らご家族に知ってもらうために動く。
そういった関わりも行いました。

コロナ禍の看護に
私自身が限界を感じている。


しかし、看護は、創造力にかかっています。 
沢山のスタッフの知恵を絞り
私たちが常に創造し、想像していく。
それが、この状況下でも、認知症の人に寄り添うということなんでしょう。
今も尚、毎日答えが出ません。


5類になり、世の中はCOVIDなんて、まるで過去の流行の様になってきています。
しかし、現場では今だに尚、この様に苦しむ患者とその家族、医療者が存在しているのです。


人類に突然の脅威をもたらしたCOVIDは、
まるで私たちを試している様です。

医療においても
私達が医療の中で
人を人として
どこまで治療できるのか。
看護できるのか。

COVID感染のトリアージでも、
老人より高齢者を優先すべき…といった様な議論は溢れていましたが、
本当にそうなのでしょうか。

などの様々な人間が故の課題をまざまざと見せつけられた様な、そんな気さえするのです。

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