推しの服を着ること
「高級版無印良品みたいな感じ」
そう説明を受けてお店の服を見たときは
すごさがわからなかったMHL.(エムエイチエル)のお洋服。
気づけば毎年1着ずつ大事に買い足すのが
楽しみな大好きなブランドになっている。
推し(彼氏)が教えてくれた洋服は
推し(ファン)の人も好きなブランドのものだった。
根っからのオタク根性のわたしはMHL.の洋服を
「推し服」認定し、課金することに決めた。
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19歳、大学2年生のとき
ブランドなんてよくわからんけど高いもん、ってしか認識なかった。
服なんてどれ着ても同じやろ、
大事なのは中身やと、
古着屋さんでいかに安く服を手に入れるかに力を入れていた。
とはいえ好きな人に紹介されたものだったら
普段聞かないバンドだったり映画だったり
本だったり、
ちょいと背伸びをしてでも触れてみたい。
お店にかかっている洋服がどれも
見た目はなんら派手でも華美でもない
とことんシンプルな服だったので、
シャツ一枚1万円以上する理屈がまったくわからない。
たんに純情純潔ガールな下心のみで
シャツとスカートを試着した。
試着室から出て鏡を見ると
いつもの3割り増しくらいに品がよさそうに見える自分がいた。
その品良い姿に、ん?見覚えあるぞ。と、
脳内記憶が必死に誰かの姿を検索しはじめた。
あ、わかった
小林賢太郎さんと菊池亜希子さんや。
検索結果に出てきたふたりは
わたしが尊敬してやまないアーティスト。
シンプルながらも個性的な存在感。
誌面や画面越しにしか拝めない存在だけども、
おふたりが持つ溢れ出る品のよさのほんのかけらが自分にも宿ったような気がした。
帰宅して調べてみると、
小林賢太郎も、菊池亜希子さんも
MHL.の愛好者だった。
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推し服は、毎年増え続けている。
最初はプレゼントでもらった
靴下とポーチから始まり、
わずかなアルバイト代で買ったワンピース。
プレゼントでもらったスカート、
自分で買った冬用カーディガン。
就職して自由に使えるお金が増えて、
毎月1万円ずつ積み立てていたプレゼント貯金で
推しに推し服を買ったのが今年。
3年前は値段でクラクラしてしまったが
いまならわかる、その値段の意味が。
普遍的で、日常に馴染むのに
どこか品がある。
洗濯してもくたびれない丈夫さ。
毎日着たくなるほどの着心地の良さ。
推しの服を着ることは、
見た目から憧れのあの人へ近づけてくれるようなおまじないである。
推しの服を着ることは、
好きな人との時間をより楽しみにしてくれるパワーである。
推し服を私服にする至福は
他のものでは変えられないほど自分の中に出来上がっている。
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