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詩です。

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自作の詩、または「詩のようなもの」をあつめました。
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2024年9月の記事一覧

「比喩」【詩】

雲はとまったように流れ 鳥は黙ったままで啼く ああ こんなにも まったりとしたこころよい朝に…

桑島明大
1か月前
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「ふたつの手」【詩】

こんなにも 耳をすました わたしにも きこえぬほどしずかに しんでゆく そのふたつの手よ この…

桑島明大
1か月前
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「いってしまった あなた」【詩】

ほんとうに あなたはいってしまったのね このドアをたたいても なんのへんじもしないから あな…

桑島明大
1か月前
13

「澗冬」【詩】

夢はとぎれ 此処に至る 夜明け 見なれぬ車窓に 千年も閉ざされた カーテンの裾野を 時が …

桑島明大
1か月前
20

「手のひらいっぱいに」【詩】

手のひらいっぱいに 蛍があった頃 ぼくらの夏は土色で やらかい歌を口ずさんだ 手のひらいっ…

桑島明大
1か月前
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「目醒め」【詩】

まぶしいくらいの 街道で けさ やさしさにであった それはたとえば 口ずさむ歌の きのうまで…

桑島明大
1か月前
16

「東京行き」【詩】

葬儀のあと やけにさっぱりした顔が映る 雨の車窓 頭のなかはかたくなで 吐く息はぬるい 言葉もつきた この深夜に 凝固した星ぼしの いっさいはとめどなく流れてゆく 死んだら ひとはどこへ帰るんやろうな、と だれかがささやいた気がした わたしの生まれた故郷の訛りで ぽつりぽつりと灯が落ちる 心はいま ずっと軽やかで 古い歌をきき すこし涙する おみやげのメロンパンを齧りながら ラジオのボリュームをほんのすこしあげよう ゆっくりと 明るんでゆく 夢もいくつか途絶えてしまった なに

「しむしむ」【詩】

いとしむ しむ なつかしむ しむ 目にしむ しむ こころにしむ しむ しまないようにやさし…

桑島明大
1か月前
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「傷跡」【詩】

ほら ここを よく見てください わたしの傷あと こいつはいっしょうなおらないと お医者さんに…

桑島明大
1か月前
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「えらばれなかったもの」【詩】

えらばれるべきだった ぼくのことば えらばれなかった ぼくのことば ぼくは このごろ えらば…

桑島明大
1か月前
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「樹影」【詩】

べんとうばこをかかえて はしりすぎたあの樹影のなか あのときどこへいそいでいたのか とうに…

桑島明大
1か月前
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「怪物」【詩】

向かいの席でさっきから さかんに咳をする人よ たとえば それらの飛沫のなかに 手ごわいやつが…

桑島明大
2か月前
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「ちぶ」【詩】

ぼくの ちぶ そのあどけなさ そのもろさ はずかしいからとおざける しかしこんなにそばにある …

桑島明大
2か月前
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「花を買うより」【詩】

花なんか 買いに行くひまがあったら あなたをだましうる とびきりの嘘をかんがえる 素敵なうそは 花束よりも あなたの暗い妄想を ふきとばして 咲きみだれる うそなんか ついているひまがあったら あなたをだます とびきりの真実をかんがえる それから しずかな寝顔を見ている しばらくは  熱い息のかかるほどちかくに わたしも眠っていようか この黙約が 花となり 部屋を飾ることが とびきりの真実なら