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「個別最適化」について考える〜前編

まえがき

ひょんなことから、「個別最適化」について勉強する機会をいただいた。
で、とりあえず、文科省の該当ページを開いたのだけど、
開いた瞬間気づいた「……これは…やばい…」と。

それがこちら

主たる資料が、めっちゃ充実している。最初は「なーんだ、これ読めばいいじゃん!ラッキー」と思っていたのだけれど、読んでいるうちに、いくつかわからないところがあって、「せっかくだから、参考資料を読もー!」と、下にある「参考資料」をポチッとした。

そこには、また答申のPDFが、約360ページあった。もう一度繰り返す、360ページあった。

( ゚д゚)ポカーン ←途方に暮れるわたしの図。

で、とりあえず、参考資料から該当しそうなところを読んでいるうちに、ふと思った。

「そもそもどうして『個別最適化』なの??」

と。

はじめるにあたって

ルール
基本的に、文部科学省(文部省)が出した、一次資料をもとに考える。

その1
わたしの解釈がたぶんに含まれます。なので、よかったら原典もチェックしてみてください。

その2
完結できるようにがんばります。思ったより長くなりそうなので、最後の最後に要約をつけます。結論だけ読みたい人はそちらを!

その3
間違った解釈、勘違い等あったら遠慮なく教えて下さい。

ぼんやりと、今思っている「個別最適化」のイメージ

・一人ひとりにあった指導をする
・学習方法を最適化する
・それだけだとたぶんだめで、協働とセットになる
・ちゃんと、「なんのためにやるか」をわかってないとやばそう
・でも、やり方に走っちゃいそうだから気をつけよう

「個に応じた指導」との比較

「個別最適化」に似た言葉として、「個に応じた指導」という言葉がある。とりあえず、その歴史を探っていけば、個別最適化のベースになっているものがなにかわかるんじゃないかな?と思ったからだ。

最初にいきあたったのが、KATSUIKU ACADEMYさんのこちらの記事

これが、めっちゃ参考になった。ぜひ読んで頂きたい!!
この中に、こんな一文がある。

初中等教育内での「個に応じた指導」への言及があったのが、1996年の中央教育審議会における答申でした。

ふむふむ。ではそちらに行ってみよう。

第15期中教審(中央教育審議会)の答申。

最初の印象→うわっ!懐かし!!教採(教員採用試験)のときに勉強したやつだ!!

この答申で当時大事だと言われたのが「不易と流行」に言及していること。変わっていく時代の中で、それにあわせていくこと(=流行)もあるが、そこにある変わらないもの(=不易)も大事にしていかなきゃね!(意訳…というより、超訳?)ということが書いてある。これは今にも当てはまること。

このなかでは、「今までの学校での学習っていうのは、『画一的』だという指摘があった。でも、これからは、一人ひとりを大切にしつつも、その個性を伸ばす教育を重視したい」ということが書いてある。

ふむふむ。

これには、文部大臣(当時はまだ文部省、そしてその諮問当時の大臣は田中眞紀子さん)の「諮問理由」がついていて、それを見ると、どうもその前から、一人ひとりの個性に応じた指導を志向している旨が見て取れる。

第二は,一人一人の能力・適性に応じた教育と学校間の接続の問題についてであります。これまで我が国の教育はともすれば画一的であると指摘されてまいりましたが,近年はこのような反省に立ち,一人一人を大切にしつつその個性を伸ばす教育を重視するという観点から,高校改革,進路指導の改善,大学改革等を図ってまいりました。今後,この問題はますます重要な課題となると考えております。(文部大臣諮問理由説明

ちなみに、この第15期中教審の審議を経てできた学習指導要領が、「生きる力」がキーワードとなる、平成10年告示の学習指導要領だ。「ゆとり教育」なんて小馬鹿にされることもあるこの指導要領だけれども、けっこう画期的なのである。

この指導要領の総則の中で「個に応じた指導」は、「指導計画の作成等にあたって配慮すべき事項」の項目で、以下のように述べられている。

(5) 各教科等の指導に当たっては,児童が学習内容を確実に身に付けることができるよう,学校や児童の実態に応じ,個別指導やグループ別指導,繰り返し指導,教師の協力的な指導など指導方法や指導体制を工夫改善し,個に応じた指導の充実を図ること。(太字はわたし)

ということで、個に応じた指導は、「学習内容を確実に身につける」ために行われると読み取れる。つまり(以下、解釈ね。)、わからない子のために、個別に指導したり、グループで指導したりという学習形態を工夫すること、繰り返し指導や、協力的な指導(当時の言葉で言えばティームティーチング)などの、学習方法の工夫をしようということだ。

<疑問>わかる子への指導はどうしようか?

この後、学習指導要領は、史上初の「改正」が行われる。「改訂」ではなく、「改正」である。つまり、字面を直したんじゃなく、内容を直したのである。キーワードは「確かな学力」である。

☆指導要領の歴史☆
基本的には、10年くらいで改訂されます。ただ、このとき(H10指導要領)は、「学力低下論争」や、いわゆる「PISAショック」もあり、(文科省はそれが原因ではないとおっしゃっているが…)一部改正が行われる。このH15指導要領は、ミニマムスタンダード(身につけるべき最低限)を示した指導案になりました。

このとき、さっきの(5)の文は、こう書き換えられる。

(5) 各教科等の指導に当たっては,児童が学習内容を確実に身に付けることができるよう,学校や児童の実態に応じ,個別指導やグループ別指導,繰り返し指導,学習内容の習熟の程度に応じた指導,児童の興味・関心等に応じた課題学習,補充的な学習や発展的な学習などの学習活動を取り入れた指導,教師の協力的な指導など指導方法や指導体制を工夫改善し,個に応じた指導の充実を図ること。 (太字が改正部分)

興味関心とか、発展的指導とか、ちょっとずつ個に応じた指導のイメージが変わってきている。学習指導要領がミニマムスタンダードになったことで、個に応じてやれることをやっていこう!というニュアンスになってきている。

と、書いているうちにもう2500字…。一度切ります!

まとめと次の疑問

個に応じた指導がクローズアップされたのが、平成10年度指導要領のあたり。その際、最初は補充的な意味合いが強かったが、のちに(目的は変わらずだが)発展的学習や、興味関心に応じた学習が加えられた。(これたぶん、中教審の議論の中で出てると思う…。未確認。)

次回予告

・その前の指導要領では、個に応じた指導って触れられてない?
・その後の指導要領でどうなった?
まだ、さわりにもなってねぇ…。外堀埋めまくり…。

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