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情に掉させば

智に働けば角が立つ
情に棹させば流される
意地を通せば窮屈だ
   とかくに、人の世は住みにくい


夏目漱石「草枕」の名文だ。
たった四十一文字で人の世とは…と言い切るあまりにも端的すぎる文章だ。今回調べ直したとき、ことわざに入っていて驚いてしまったがそこまで存在が認めらているのかと改めて夏目漱石の凄さがわかる。
自分が情に流されてしまいがちな事にこの頃気付いてしまった。
情に流される―――というか、情に引きずられる。そんな感じがこの頃増えてきた。
数年前、仕事で少し神経にひびを入れてしまった。それ以来ひびはどうやら接ぎは出来ても無くなりはしなかったらしい。
ふとした拍子に胃のあたりが重く感じる。自分のことだけでなく自分と直接関係ないような出来事でも引き摺って落ち込むことが増えてきている。
持ち直しはする。それに時間がかかる。
心にかかっていることを忘れる為に一瞬でもなにかに熱中する。それが、なかなかに難しい。

とかくに、人の世は住みにくい。


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