砂場に磁石を投げ入れて砂鉄を拾い、その質量を見ていく
ROM専だったnote。ユルッと始めていこうと思います。
簡単な自己紹介から、、、現在とある大学のデザイン系学科の教員をやっていて、主に「空間」に関わるデザイン領域を軸足にして周りに散らばる様々な領域にピボットしながら教育・研究に携わっています。現在の大学に着任して2022年で8年目、大学教員としては13年目となりました。
学生時代に取り組んでいたのは、学部では建築設計、大学院修士では幅広く建築・都市デザイン、大学院博士では都市空間解析と、自ら少しずつ領域を越境しながら過ごしてきました。根なし草のように様々な領域を渡り歩いてきて、前職では建築・都市計画の研究室で助教をしたのちに、現在のさらに広い「デザイン」の学科に研究室を構えました。
確固たる専門領域を持たない自分が何を看板にした研究室を立ち上げ運営していくのかこの数年間ずっと考えてきました。研究室のウェブページをしっかり構築しようと、学生たちと一緒にホームページのトップページに表示されるリード文を考えている過程で、これまでの活動を振り返り、現時点の一つの大事にしているデザインを説明するアナロジーに至りました。
それが、「デザインとは、砂場に磁石を投げ入れて、砂場に混じる砂鉄を拾い集めて、その質量を考えること」でした。これが何を意味しているのか紐解いていきたいと思います。
砂場とは何か。砂場には様々な粒度や組成の砂が混ざっていて、ときにゴミが混ざっていてその実態を知ることは一見するだけで把握することはほぼ不可能です。それがデザインを取り巻く現代社会の不確実性を象徴していると考えました。
そんな砂場に磁石を投げ入れると砂鉄だけ拾い集めることができます。その磁石も様々な形状や磁力の強さが違うし、それによって集められる砂鉄の量も質も変わってきます。デザイン行為の中で提案するプロダクトはこの時の磁石として位置づけられて、それによって拾い集められる砂鉄がデザインプロダクトによってもたらされる価値に代表されるアウトカムとして位置づけます。
砂鉄を集めるためにどんな磁石投げ入れるのかも大事。ただそれによって拾い集められる砂鉄がどんな質量なのかは、とりあえずあらゆる磁石を投げ入れてみないと集められる砂鉄の質量が分からないことの方が多い。また、一つの砂場でうまく砂鉄を集められた磁石であっても、組成が異なる砂場に同じ磁石を投げ入れたとしても、うまくいったときのようになるとは限らない。
つまり、しっかりデザインをするためのフィールドを読み込み、様々なソリューションを試しながら、もたらされるアウトカムを観察し、選択し判断を繰り返しながらデザインしていくマインドセットを大切にしていきたいという想いをこのアナロジーに託しているつもりです。リサーチだけ、ただモノを作るだけでもだめ。他方でアウトカムをやる前から考えるのもちょっと違う。「とりあえずやってみる」という精神でトライアルを繰り返し、考えうる数々の「正解」からどれを選択するのか。そういう思考力と探求力、観察力と判断力に加えて、良し悪しを判断する倫理観と審美眼をトレーニングしていくことがいまのデザインには必要だと思ってます。
そんなことを軸にして徒然と考えていきたいと思います。
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