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誕生日とキーライムパイ

いつからかわからないけど多分大人になってから、誕生日は「自分がこうあれたらいいなという過ごし方」をして「何か新しいことを始める」というのを意識してきたかもしれない。元日みたいに。

たまたま日曜であっても必要以上に寝坊しないとか、お酒飲みすぎないとかそのくらいの注意なんだけど、誕生日に何かをやらかしちゃうのは縁起が悪いというか罰が当たるよな気がするから。

何か新しいことを始めるというのは、気休めだけでも、年をとっても、成長をしていたいなという意地かな。
過去には当日に思い立ってバンジージャンプをしに行ったこともあった。子供たち3人を連れて山奥の橋からダイブ!それはある意味やらかしの部類でもある気がするけれど。
特に高いところが好きってわけではないが、死ぬまでに一度は飛んでみたいという密かな夢と、普段見られない景色を見たいという欲、ちゃんとプレゼント代くらいのお金もかかるし、誕生日だから飛ぶ!というのはなかなかいいアイディアだった。
子供たちも不安そうな顔をしながらしっかりと母の勇姿を記憶に留めてくれたと思う。

昨年は記憶にないくらいに混沌ど真ん中の誕生日だったのだけど、みんなちょっとしたイベントを欲していたせいで、今年は1か月くらい前から家族が何する?何したい?と聞いてくれて、家でできることを準備してくれていたらしい。

私は誕生日になる瞬間、これまで買って置きっぱなしになっていたスペイン語の新刊を読んでいることにした。その前後1時間読んだだけでも集中したせいでとっかかりがつかめ、このまま読み進められる気がしてきた。

これで「いい過ごし方」のスタートはよし!

午前中は、普段は週末行く川のゴミ拾いに行くことにした。特別に寒い日という予報が出ていたけれど、なおさら気持ちがよい。

ラプラタ川の静かな波の音とカサカサするプラスチックの音を聞きながら、1時間ほどでゴミ袋が小さなプラスチックでいっぱいになった。ちょうど手もかじかんできたから引き上げることにした。

帰りに温かいものを飲もうとカフェに立ち寄った。

寒すぎて糖分を欲している。

「KEY KIME PIE」という文字が目に入った。聞いたことだけはあるキーライムパイ。海外の映画に出てくる3大パイの1つ。

よし、今年の初挑戦は普段食べない甘いもの、しかもキーライムパイに挑戦しよう。

店員さんが持ってきてくれたのは、琺瑯のお皿に載った、かわいい白いケーキ。よかった、それほど大きくない。


パイというからどっしりとした重みのあるものかと想像していたけれど、上の白いクリームは絞り出しで繊細な模様が描かれていて、黄緑色のライムの皮が散っていて美しい。

スプーンを入れると、アップルパイの甲羅のような抵抗は一切なく、くしゅときれいに切れた。口に運ぶとレモンの爽やかな香りが鼻に抜け、すぐに溶けた。これがキーライムパイだったの?

調べてみたら、キーライムというのは黄色いレモンより南米ではレモンとして一般的な、小さい真ん丸の緑の「limon」のことだったらしい。コロナビールの瓶の口に差し込むやつ。はたまたセビーチェに添えるやつ。

なーんだ、みんな知ってたのかな。キーライムパイ。

もしかしたらすでに名前を知らぬ間にどこかで食べたこともあったかもしれない。

でも新しいことに挑戦は一応クリアだ!

帰宅すると子どもたちがせかせかと部屋を片付けている。今日はみんな手伝いをしてくれるんだな〜。ありがたいな〜と寝っ転がっていたらマンションのガードマンから連絡がきて、お客さんが下にいると。

何?!

子どもたちの仲良しがママと子どもたちでサプライズで来てくれたのだった。知っていた子どもたちはそれで慌てて片付けをしていたのか!

ちょうどこの前の週末はこのママの誕生日で、盛大なパーティーに呼ばれたところだった。我が家が誕生日に大きなパーティーを開かないと知っていても、遠慮なく来てくれるところが嬉しい。

そして、

持ってきてくれたのは、小さなケーキのセット。
キーライムパイも入っている!これは食べねば!

こっちのほうがメレンゲがもっちりしている。クリームというよりさくさくのメレンゲ感が強い。
そしてやはりレモンの香りが甘みをキリっと締めてくれる。

まさかバースデーケーキを食べる前に2つもケーキを、キーライムパイを食べるとは。。

夜になって、食後に1杯飲みに出かけた。前から気になっていたワインバーなのだが週末は混んでいるのでちょうどいい。ワインセラーというより本棚に並んだ本のようなワインボトルから、赤でも白でもないオレンジのボトルを選んだ。アルゼンチンは赤が人気だけど、このお店は白もロゼもオレンジもたくさん置いてある。2kmというボトル。

さて、軽く何かつまみを。とメニューを見ると

KEY LIME PIE!!
ここにもいるのか!

流石に夜に3つ目のメレンゲはきつい。しかもワインを飲むのに。

というわけで、茄子の料理とモルシージャのパイ重ね焼きを頼んだ。モルシージャは血の入ったチョリソーで少し苦手なのだけど、ちょっとずつ苦手ゾーンも開拓していこう。

なんだかんだ、モルシージャは一口しか食べなくて、あとはモルシージャ好きな夫に任せた。苦手ということはなかったのだけど、もう一口という勢いが湧かず。
ナスの一皿は、焼き茄子にピーナッツペーストを使ったソースがかかっていて、スパイシーで好みだった。

贅沢な1日を噛み締めました。
そんなわけで、飛躍とかはしなくてもいいから、じっくりじっくり広げていける歳にしていこうと思います。

好きなことを書いて好きな写真をあげているだけですが、サポートしてくれたら張り切っちゃいます。