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IDE「ヴィクラムとヴェーダー」比較(後半に少しネタバレ?)

個人的な感想のまとめ

インド映画沼初心者ゆえに、俳優さんの区別がまだつかないとか、映画の背景となる社会構造がいま一つ理解できていないという面があるので、素人感想になります。個人的に、あとでまた見直したいと思って、まとめています。

Twitterのご縁でこの企画を知ったのは本当に有難いことです。
そして今まで日本で上映されていたインド映画情報は、ほぼ自分には届いていなかったので、Twitterのお薦め機能がはじめて役立ちました。
(※自分は雑多垢なので、インド映画繋がりのフォロイーさんフォロワーさんとの関係がほぼ皆無)


ヴィクラムとヴェーダー「Vikram Vedha」

今回の「インド大映画祭」で、最初に話題になった
「ヴィクラムとヴェーダー」のタミル版とヒンディ版を連続で見られるという企画。
有難いことに、両方ともチケット取れたので、違いを楽しめました。
上映順は「ヒンディ版」→「タミル版」の流れ。
リメイク版を先に見ることに若干抵抗があったのですが、結果としてヒンディー版の方が伏線が判り易く、頭の整理が出来たので、その後のタミル版でさらりと提示される伏線を見逃すことなく楽しめました。

(ここから先はTwitterで一度記載した感想のほぼ再掲です)
ネタバレ過ぎない感想述べると、タミル版は人情臭いテレビ刑事ドラマの雰囲気で、ヒンディ版はエンタメ性をのっけ盛りにして派手な感じでした。
ヒンディ版で話を理解してからでも、タミル版の面白さが半減することはなかったです。
ヒンディ版のヴィクラムは堅物って感じで、どんどん精神的に追い詰められていく苦悩の顔が魅力的。
タミル版はもう少し人間くさいキャラの印象だけど、ラストは一回絶望見てから覚悟を決めて浮上した感じ。

タミル版のヴェーダは初登場はなんか大物感あるイケオジから、話すうちに人情くさい可愛さが。それが演技なのかと最初は思ったけれど、素みたい。
ヒンディ版はリティク・ローシャンを起用して差別化しただけあって派手なアクション。あと初登場はあえてムサイ感じの風貌で出して、回想シーンのギラギラ感のギャップ見せつけてきた感じ。あとキャラ設定も若いだろうし。ヤンキーぽい若造がギラギラしながら成り上がった感じが出ていたし、弟も対比で努力型エリート。
タミル版のヴェーダと弟は、人情あふれる素朴な兄弟。
ヒンディ版のヴェーダはヴィクラムの前では隙がなく最初から最後までずっと胡散臭い。 タミル版はどこか頼りないように見えて、したたか。
アルコールダンス曲、ヒンディ版はあんなに怖いボスが一緒に踊っている?みたいな驚きがあったし、演出が派手。 タミル版は兄弟杯で皆でわちゃわちゃ楽しい、土着のギャング。
同じ雨のシーンで、ヴェータがヴィクラムに対して言う科白の日本語訳が、 タミル版は「失望した」みたいな感じで訳されていたのに対し、 ヒンディ版だと「あなたを甘く見ていた」みたいな科白になっていたの、おや?と思った。 タミル版の字幕あっという間に流れたから、間違っていたら申し訳ない。

↓ヴィクラムとヴェーダ・タミル版予告
Twitterみたら、この撮影当時、

ヴィクラムとヴェーダー【タミル版】

容疑者の逮捕より撲滅に血道を上げているヴィクラムは有能な警部。彼の標的ヴェーダーの自首により数々の謎が浮かび上がる。善と悪とは?善と悪の境界線とは?浮上する事実にヴィクラムの信念は大きく揺らぎ始める。主演男優は『きっとうまくいく』のR・マーダヴァン。リリース年を大きく震撼させた犯罪ドラマ。
監督:ブシュカル&ガーヤトリ
出演:R・マーダヴァン/ヴィジャイ・セードゥパティ
作品データ:2017年/140分/タミル映画

インド大映画祭作品紹介ページより引用
https://www.ks-cinema.com/movie/ide2023/

第30回東京国際映画祭のページもリンク貼っておきます。

ヴィクラム役の俳優さん、R・マーダヴァン氏。R・マドハヴァンさんと表記されているところもあるから、どちらがカナ表記で近いんだろう。
映画公開当時は47歳。
ヴェーダー役のヴィジャイ・セードゥパティさん、お名前だけはちらほら見ていたもののやっと出演作品と出会えた。映画公開当時は39歳。え?白交じりの髭だから、もっと年上かと思っていた。

ヴィクラムとヴェーダ・タミル版 劇中歌
曲中でボスと一緒に踊るところが好きです。ボス、可愛いところあるじゃんって。
タミル版は義理人情を少し感じる任侠みがあって、日本人としてはこう何か近いものを感じる。このヴェーダーはボスのこと親分として慕っていそう。


ヴィクラムとヴェーダ・ヒンディ版公式トレーラー
予告編でも伝わる派手なアクション。タミル版もヒンディ版も監督ペアは同じと知って、これはあえて違いを出してきたんだな、と。
愚直な感じのタミル版の二番煎じではなく、全く違う印象を受けるリメイク版。でも本筋はちゃんとタミル版を継いでいるし、どちらも違う魅力を放っている。

ヴィクラムとヴェーダ【ヒンディ版】

リリース年を震撼させた犯罪ドラマで2017年同名のタミル映画のヒンディリメイク。ヴィクラムは優秀な警視。容疑者の逮捕より犯罪の撲滅を目指し、偽装襲撃に血道を上げるが、標的ヴェーダの自首により数々の謎が浮かび上がる。明白となった事実にヴィクラムは我を忘れるほど驚愕するが…。関東地方初上映。
監督:ブシュカル&ガーヤトリ
出演:リティク・ローシャン/サイーフ・アリー・カーン
作品データ:2022年/157分/ヒンディ映画

インド大映画祭作品紹介ページより
https://www.ks-cinema.com/movie/ide2023/

ヴィクラムとヴェーダ、 どちらも違う魅力があって良かった。 ただヒンディの方が判り易かった気がしたので、この点は監督さん達が観客のためにアレンジしてくれたのかなぁって。 あと、ヴィジャイ・セードゥパティさんという可愛い俳優さんをご存知になってしまって、また楽しみが広がりました。

ヒンディ版の方でしか出てこないシーン
ラジカセからこの曲が流れてきてヴェーダが思わず手を止めるところ。
事前にTwitterでこの曲のツイート見ていたから、ここかーって。

ヒンディ版の方が17分長いんだね。 エンドロールはタミル版あっさり終わりましたが、ヒンディの方は途中で曲が終わって、SEと科白が真っ黒な背景で流れるんだけど、その科白の字幕がなくて内容が気になりましたね。

潜伏先から抜け出して、抜け道さくさく通っていくシーンで、 ヒンディ版は街中にヴェーダが馴染んで親しまれていることを強調するシーンだったし、 タミル版は「(俺も)年かなぁ」ってぼやきながら、ちょこちょこ歩いているところが可愛い。
タミル版はヴィクラムがメインで撃つ流れからの最後だし(途中ちょっとヴェーダが可愛い)、ヒンディ版はヴィクラムもヴェーダもバンバン撃ちまくってからの最後で、 最終的な絵面は同じなのに、そこに至る描き方の違いが印象的でした。


ここから少し場合によってネタバレも有の追記。

この映画の肝は、警察とギャング。どちらが正義でどちらが悪かの禅問答。
警察では伝説の存在みたいなヴェーダーをずっと追っているが、一度も捕まえられず……という冒頭から、いきなり本人が突然自首してくるという話。

ヒンディ版のヴェーダーは最初から最後まで、彼の言葉は常に疑わしいと思わせる異質な存在で、ヴィクラムを煽りながら話を進めていく。
タミル版のヴェーダーは人懐こい様相で、ヴィクラムに話をきいてきいてとぐいぐいくる。
ヴェーダーの語る過去の話から、しだいに正義というものが判らなくなっていくヴィクラム。


たまたまなのか、タミル版の紹介がヴィクラムが先なのに対し、ヒンディ版はヴェーダーのリティク・ローシャン氏が先に記載されている。
チラシ画像も、タミル版は二人が並ぶ写真に対し、ヒンディ版はリティク単体写真。
それほどヒンディ版のヴェーダーは存在感がある。ヴィクラムと対等なのに、ビジュアルな派手さはヴェーダーが勝っている印象。
だからといって、本編で影が薄い訳でもない。なんだろう。キャラが真面目過ぎるのかも。いやでもそれがいい。
タミル版のラストの盛り上がりは、少し開き直ったヴィクラムがヴェーダーを良い感じに利用しつつ手伝わせているいんしょうだったのに対し、ヒンディ版は完全に共闘になっている。

また、ヴェーダーの弟の幼馴染である女の子、ヒンディ版だと心の弱さゆえのとある行動と思えたところが、タミル版の彼女は割としたたかで姉御肌。
弟もヒンディ版だと優等生で、芯が通っている。彼の将来のためにヴェーダーはヤクザな仕事を続けている。お兄ちゃん大好きマン。ヴェーダーはヤクザというよりも、風貌も含めてヤンキーぽいというか、組織でも異質な感じ。機転とアイデアでのしあがった印象が強い。周りからはおそらく「やばい奴」という認識で、恐れられていたんだろうな。

タミル版の弟は勉強はできる方だと思うけれど、少し軟弱というか、普通の子供。彼の為というよりも、生活全般のためにヴェーダーはヤクザの世界で稼ごうとしている。こちらのヴェーダーは人柄も含めて、のし上がりながらもどこか魅力的。だからこそ、ボスに反旗を翻した時に、彼についていく子分たちがいるんだろうなと納得がいく。

ヒンディ版の劇中歌
リティクさんだからこそのこの曲なんだろうなと思わせる派手さ。

最後に

オリジナル版とリメイク版を比較鑑賞できる機会が得られて本当に良かった。
タミル版はスルメみたいに味わいぶかくて、ずっと心に残っている。
ヒンディ版はそれをエンタメ性マシマシにしたので、盛り上がりたい時はこっちを見たい。
どちらも違う魅力で本当に良かった。

リメイク版もオリジナル版と同じこの曲が印象的。
なんとも癖になる曲です。ヴィクラムとヴェーダーと言えば、この曲なんでしょうね。

また見たい映画が増えました。

色んな映画、見ていきたいですね。