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クライムズ・オブ・ザ・フューチャー初日で2回見てきた感想(ネタバレ有)



はじめに

本日、2023年8月18日(金)公開初日に、
「クライムズ・オブ・ザ・フューチャー」を見てきました。
しかも1日に2回も。
さてそもそも見たきっかけなんですが、テアトル系の映画館で、同じ監督の過去作のリバイバル上映があったんですよ。その過去作「ビデオドローム」と「裸のランチ」。調べてみるとこの監督さん、デヴィッド・クローネンバーグ氏、あの「ザ・フライ」の1作目作った人というじゃないですか。子供の頃にトラウマを植え付けたあの映画……。
「裸のランチ」は残念ながら上映時間に都合がつけられずに断念。「ビデオドローム」は半休とって、上映終了間際にかけこました。
そしてその独特の世界観、これは最新作が日本語字幕で見られるうちに見ておかねば!となって、初日が丁度有休消化日だったというのもあって、行ってきました。

初見の感想いきます。(Twitter初見感想とかぶる)

上記のトレーラーの日本語ナレーションでも言われている通り、
一言でいうと「未体験のアートパフォーマンス」でした。
美術館で絵画を見るようなものでそれ自体に答えを求めるんじゃなくて、自分で感じて自分で解釈するタイプの作品。
そういう景色を見せられているだけ。
映画に起承転結を求めるタイプの方には合わないかもしれません。 クリエイター……創作者向け……かもしれない? 自分はこういうの好きです。
小説とかだと読んだあとの余韻を楽しむ感じ。 何故こういう状況なの?とか、この後どうなるか判らないとモヤモヤする〜みたいな方には、ハードル高いかも。 そう言えば『ビデオドローム』も明確な答えなどない映画でした。
カプリース、 ずっとノーブラっぽいのが気になって。 お出かけの時も含めて。過激じゃないけれど、セックスシーン、女優さんのヌード程度はある。ぼかしてあってもベッドではヘア有だったし、お腹切ったりするし、モツは出るし、これでPG12ってのがよく判らない。

あと ヴィゴ・モーテンセン がエロかった。 苦痛にあえぐところとか。

日本の公式サイトはこちら▼


ここからネタバレ有りの感想へ。

映画しょっぱなからトレーラーにも出てきた少年が出てくる。
海に座礁した船が見える場所。座り込んでショベルで海水の中の砂利だかゴミだかとすくってる少年がいる。
後ろの建物の2階から母親らしき女性が声をかけ、見つけたものが何であっても食べるなと注意をする。少年は黙ったまま、家に戻った。
少年の名は、ブレッケン。母と子だけの暗くふるびた家。
洗面台で歯磨きをする彼は、母親が見ていないのを確認すると、そっとプラスチック製のごみ箱をかじり始める。
(なんでよりによって、トイレのゴミ箱なんだ。ただのゴミ箱よりも色々と病気になりそうな要素なのに)
それをまたか……という目で見る母親。彼女は、少年が寝静まると、その顔に大きな枕を押し当てて殺してしまった。
母親の名はジュナ。彼女は夫の仲間?に連絡を入れ、息子の遺体を引き取るように伝えて、その家を去っていく。
夫の名はラング、息子の死体を見て嘆き悲しむ。

しょっぱなからお腹一杯の展開ですよ。
しかし少年、冒頭であっという間に退場でした。

場面かわって、とある家の朝。
部屋の中央に、天井からつり下がった謎のベッド(※オーキッド・ベッドという)。
女性がやってきて窓を開け、日の光を部屋にいれて、そのベッドに眠る男性にお早うと声をかける。彼の名はソール・テンサー。加速進化症候群(※正式名称ではないらしい)であり、体内に臓器を生み出すことが出来る男性。臓器は不必要なもののため、腫瘍として切除して取り除くが、その取り除くさまをショーとして客の前で行う、パフォーマンス・アーティストとして有名人だった。そしてそんな彼を起こした女性は、彼のパートナーであるカプリース。元外科医だが、縁あって過去に彼を執刀したことがあり、その後、仕事をやめて、彼と共にパフォーマンスをするようになった。

トレーラーでも散々「痛みのない世界」と紹介されている近未来の話、のはずなんですが、このソールは度々痛がる描写があるんですよね。
それをこのオーキッド・ベッドで寝ている間に痛みを分散させて寝ているという解釈だったんですが、2回目鑑賞した後の感じだと、夢の中で痛みを感じて、それが身体に影響するからこの特製ベッドを使っている?とも解釈できる。

普段ならベッドが痛みを事前に察して対策し、眠りやすいようにしてくれるのに、ぐったりした顔で言うソールに、カプリースは検査結果が出て、彼の体内に新しいホルモンが生成されたと伝える。新しい臓器の誕生。
さっそくカプリースは内視鏡で、彼の体内をさぐる。副腎のような臓器が出来ていたお陰で、ベッドのシステムが狂い、ソールが眠れなかったのだと判明。すぐにベッドのメンテナンスの手配をする。

近未来の話、の割にはこの映画全体が暗くて、どこか貧乏くさいというか貧しそうなんですよね。こんな化学制御されたベッドがあるにもかかわらず、そしてお金に困っている風もないのに、カプリースはキッチンの作業台みたいなところに座ってもくもくと朝食を食べている。パンとベーコン?それがなんとも質素なメニュー。
近未来なのに、オール電化どころか、どこか荒廃した世界。
一方ソールは、その特殊な体質のせいなのか、専用の椅子(ブレックファスター・チェア)で、離乳食のような食べ物を必死に口に運ぼうとしているが、スプーンがうまく口に届かない。全然介助の役割果たしていなさそうな椅子なんですけど。あと食べ物が、カプリースと違ってどろっとした食事なのは、彼の消化器系が通常じゃないってことを示しているっぽい。

ソールの身体に新しい臓器が出来たので、二人は「臓器登録所」なるところへ向かう。その途中、二人を見る男が一人。その男は、冒頭で亡くなった少年の父親・ラング。何やら二人に接触したがっている様子。

さて登録所には二人の所員が居る。中年男性?もっさり髭のウィペットと、その部下なのか若い女性のティムリン。二人は有名人であるソールの事は知っていて、特にティムリンは、臓器の摘出手術をアートパフォーマンスとしている二人をあまりよく思っていない様子。今までは臓器が出来る度に切除していたため、登録してこなかったらしいので、二人はこの登録所には初めての来所。(何故今回に限って登録に来たのかは不明。登録しないといけないという政府のお達しでもあったのか、そう匂わせる科白も若干あった。)
この登録所はまだ一般的には非公開であり、存在しないことになっている。ウィペットとティムリンは、内視鏡でソールのお腹を確認し始める。
「ビューティホー」と興奮するウィペット。ティムリンもまんざらでない様子で、奥までみようとぐいぐい内視鏡をお腹に突っ込んでいる。
この二人、やばそう。
ウィペットの解説によると、人類がさまざまな進化をへて、新しい臓器が出始めたが、それが遺伝して生まれつき新しい臓器をもったりすることを懸念していて、登録所でそれを管理する事を目的としているらしい。

初対面でパフォーマンスのことをあまり良くないように言われたため、カプリースは登録所の二人に対し、マイナスな印象を受けているよう。
彼らを味方につけられるかもしれないとして、ソールはアートショーに二人を招待した。

さてオーキッド・ベッドのメンテナンスとして、「ライフフォーム・ウェア」社からバーストとラウルという二人の女性作業員がやってくる。
彼女らがメンテナンスをしながら見ている資料は、クリップバインダー(がばんみたいなやつ)に挟んだ紙の資料。
(ここでも妙にアナログな感じを、わざと監督は出しているな。)
やがて二人の作業員は、ソールが「サーク」を所持していることを知る。
「サーク」はかつて彼女らの会社が生み出した最高傑作の解剖機械らしく、「伝説の逸品」だそうだが、大昔に製造が中止されて、本物を見るのは彼女らも初めてらしい。大興奮の二人。
「サーク」は、すっぽりとソールの身体を納めるだけの大きさがあり、例えるなら石の棺桶?機械制御で開閉し、メスが遠隔操作できる。
のちにカプリースが「サーク」の調整を「ライフフォーム・ウェア」社に依頼して、バーストとラウルの元に一人で来るシーンがあるんだけど、
彼女らあまりに「サーク」に魅せられて、いきなり二人で「私達ショーに出られるかしら?」などとカプリースの前ですっぽんぽんになってポーズ取ったりしている。流石にそこはちょっと笑った。

さてアートパフォーマンスのショーのシーンになり、周囲には大勢の客。ショーだから有料なんだろうが、一体いくらで入場できるのだろう。
正体された登録所の二人や、「ライフフォーム・ウェア」社の作業員の二人や、息子を亡くした例の父親ラングの姿も。
ショーは観客の好奇の目に溢れ、カメラやスマホでその様子を撮影する人たちも多い。ラングはカメラを向けるでもなく、じっと沈んだ顔で、ソールやカプリースを見つめながら、チョコバーをかじっている。パフォーマンスを楽しみに来ている人たちと明らかにラングは雰囲気が違っていた。

ショーのシーンは、トレーラーにもある通り。赤いドレスに身を包んだカプリースが、手元のリモコン(※なんか生き物ぽい謎の形のリモコン)で「サーク」を操作しながら、中に寝ているソールのお腹をメスで切り開くというショーが始まる。
近未来の話のはずだけれど、わざと古めかしい小道具が映画中にちらほら出てくる。例えば、ショーのシーンの冒頭、トレーラーにも映っているけれど、「 BODY IS REALITY」と表示されているのが箱型テレビ(モニター)だったり、観客がショーを撮影しているところで、結構でかいカメラを構えている人が居たり。古いタイプのデジカメらしきものもある。
あと結構しっかりモツ描写あります。ただ絵面よりも、映画館の立体音響できく「ぐちょ」という音の方が気持ち悪い。(それでも「ビデオドローム」の最後のモツ描写よりは抑え気味。あれはぐちょがバーンだから)
痛みがないという世界だからこそ、麻酔もなしにソールは開腹されても苦しまないんだな。
観客の前でメスを遠隔操作するカプリースの表情は次第に恍惚となり、切られているソールも、色気ある表情見せてちょっとあえぎます。
(※ヴィゴ・モーテンセンのファンは必見・必聴のシーン)
身体の中に入り込み、やがてタトゥを施された臓器は摘出され、ショーは閉幕。


ショーの後は、観客も入り混じっての打ち上げパーティ?
取り出した臓器をホルマリン漬けにした瓶をテーブルに置き、その横で酒を飲むカプリース。そして談笑するソール。(ソールは起き上がれない状態のため、フード付きコートみたいなのにくるまっている)
登録所の二人はなんとも言えない興奮気味の顔でやってくる。そしてティムリンはソールに近付き、あの切除行為は新しい形のセックスだろう?と問い掛ける。そして見ている自分は、ソールに切られたい衝動にかられたと告白し去っていく。若い女性がソールに色目を使ったように見えたのか、むっとした様子のカプリースだが、あれだけ自分達に不審の眼差しを向けていた彼女に、アートが勝利したと笑うソール。二人はにっこり。

そしてショーの余韻を楽しむ観客たちの談笑。
作業員の女性2名も興奮気味に先程のショーの話をしている。
それを向かいで聞く男が2名。
一人は名前も判らぬ謎の男。
もう一人は、冒頭の少年の父親・ラング。
ラングは何も言わず、チョコバーをかじっていたが、その残りを何気なくテーブルに置く。
すると隣に居た謎の男がぱっとそれを手に取る。
不審そうに男を見るラング。
男は、その残ったチョコバーをかじる。
すると男はみるみるうちに苦しみだし、チョコバーの紫色を吐き出して、床に倒れそのまま死亡。
ラングはチョコバーの残りかすをさっと片付けると、その場を去った。


パフォーマンスに招待したことがソールたちと登録所の密な関係に繋がったのか、登録所にソールの今までの切除してきた新しい臓器の記録が保管されるようになった。それをどこからか聞きつけてきたコープ刑事がやってくる。
登録所の二人、もしや逮捕されちゃう?と思ったけれど、結局二人の熱弁を聞かされた上に、ソールの記録を見せられただけで、刑事の登場シーン終わった。何だったのか。

ソール以外にも、身体をいじったアートパフォーマンスをする人間はいるらしく、クリネックという男のショーをこっそり(カプリースにも内緒で)見に来ている。偵察か?
このクリネックが、公式のTwitterアカウントで散々「イヤーマン」としてアクリルスタンドとして、あちこちおでかけしている様子が投稿されている人。
40個の耳をつけ、口と目をぬいつけてふさいでしまった状態で、踊るクリネック。
開腹シーンよりも、この口を縫い付けるシーンの方が、個人的にはきつかった。
その会場の片隅でフードで顔を隠しながら座っているソールに、生体構造トレーナーを自称するエイドリアンという女性が近付いてくる。
(※急に出てきたから、どなた?ってなったけれど、どうやらクリネックのトレーラーらしい)
彼女はソールにナサティルという人物に会うように伝える。
何故話しかけてきたのか(ソールは顔を隠してもバレるくらい有名人だということは判ったが)、何故ナサティルに合わせようとするのかは、2回目鑑賞でもいまひとつ判らない。エイドリアンの後ろに組織でもあるのかと思ったが、謎。
ただこれは、何故とか思っちゃいけないんだ。物語としてそういうものだと理解しておく。
案外ただのお節介かもしれない。臓器の取り扱いについて、

その帰り道、ラングがソールに近付いて、新たなパフォーマンスとして、自分の息子の死体を解剖してみないか?と言い出す。
唐突だな、おい。それ警察にバレたらよろしくない案件では?
半信半疑なのか、男の提案をイエスともノーとも言わずに耳を傾けるソール。男は必死に売り込むが、ソールは去っていった。

ソールはコップ刑事に接触し、自ら秘密捜査の協力を申し出る。
いや唐突だな。
ソールさん、何やってんの。
コップ刑事もなんで?って顔している。ソールいわく、自分はアートパフォーマンスをしているが、それは他者と違い、自分の体内に出来る新臓器を不快に思っていて、どうやらこの状況を打破したい様子????
秘密捜査についてはカプリースには黙って協力らしい。大丈夫か?それ後からバレて関係がまずくなるパターンでは?
更に、ラングから提案された死体の解剖の話を受けて、彼の妻に会いたいと刑事に伝える。
この刑事、ラングを怪しんでいる様子。
ラングの食べかけのチョコバーを食べて死んだ謎の男は、捜査中の刑事だったと判明。

ソールは、エイドリアンから紹介されたナサティルに会いに行く。
彼はソールの信望者なのか、それとも臓器を生み出すという身体に興味があるのか、会った途端にテンションが上がっている。
そして機械技師らしく、ソールのお腹に窓をつけないか?と提案してくる。
結局、エイドリアンが彼を紹介した理由は不明。ナサティルがソールに興味あると知って、単に縁を作ってあげたのか。それとも裏があるのか。
(2回見てもよく判らない)
彼の話から、ソールは臓器に関わる美しさ?を競うコンテストの存在を知る。

そして帰宅したソールのお腹には、ジッパーが。
カプリースは(自分をおいて外出を頻繁にする彼に不信感はあるような感じだが)ジッパーに見せられ、それをこじあけるとソールの肌(というか、中身ぱっくりの場合はモツ?)に吸い付いた。
そこでソールが「中身をこぼさないでくれよ」というのが、モツの事なのか、なんか腹から出てくる液体?血液?……的な話なのか?不明。そして怖い。

再び一人で登録所へやってきたソール。
迎えるウィペットは、彼に見て欲しいものがあるといって別の部屋へ案内をするその途中の会話で、ナサティルがいっていた「内なる美コンテスト」の主催者が実は、このウィペットだと判明。
登録所の人間が、秩序を守る人間が、手術をパフォーマンスにすることに難色示していた人が、実はコンテストの主催をしていて、煽るような真似をしていたって、このウィペットやばいな。
コップ刑事に秘密捜査を申し出たためか、ウィペットに色々と聞き出そうと会話を続けるソール。
結局、彼がソールに見て欲しいと言っていたものも判らないし、コンテスト主催することが今後どう話の展開に絡むのか?と思ったら、その後の話出てこないし、何が何やら。

ウィペットとの話を終え、帰ろうとすると今度はティムリンに呼び止められるソール。彼女は、ウィペットが(アートショーに招待されて以来やばい感じなのを)心配なのだと言いながら、話がだんだんと言い訳がましくなっていき、最終的に「私をパフォーマンスに出して欲しい」と本音を吐露。
ウィペットよりも彼女の方が数倍やばくないか?
元よりその素質があったのか、それともショーを見て目覚めてしまったのか、ソールに対し、切り刻まれたい衝動を告白する彼女。
ソールに迫り、キスをするが、通常の身体ではないソールにはキス一つも持続できず咳き込む。
ソールは彼女に謝り、「古典的なセックスは下手なんだ」という。
この辺りの倫理観全然わからんな。パートナーいても、ティムリンとのキスは有りなのか?

後日、刑務所?へ行き、ラングの妻・ジュナと話をするソール。(またカプリースに黙って外出)
プラスチックを食べるという特異があるとはいえ、自分の子供を殺すことはないというソールに対し、ジュナはあれは化け物だと言う。そして夫のせいだと伝える。
殺されたブレッケンには、プラスチックを消化できるだけの消化液・消化臓器があった可能性が高かった。
そしてそれを期待して、父親のラングがソールに解剖を依頼してきたことが判る。

さらに今度はカプリースと共にラングに会いに行くソール。
サークを使ってブレッケンの死体解剖をするのかどうか決める為、解剖する死体と対面する二人(冷凍保存中)。
それを見て、本人の同意が得られないから無理と顔を歪ませるカプリース。
警察の解剖じゃだめなのか?というソール。
ラングは警察では解剖結果を隠されてしまうといい、ショーにすることで公式に発表したいという意図を明かした。
彼はチョコレートバーをソールに差し出す。匂いをかぎ断るソール。
なんとそのチョコレートは、産業廃棄物で作った紫色のチョコレート。
ラングも含めて、この産業廃棄物を食べ物として摂取できる一定数の人間がいる。人工的に消化器系をいじったらしい。
そしてコップ刑事は、このチョコレートバーを製造する組織(グループ?)を捕まえないらしいことも判ってくる。
環境に順応するためには、人間もそれに合わせた進化が必要とし、ラングたちは自分達の身体をいじって無理やり適応させた。
そしてこのチョコバーをあちこち販売展開するため、ソールの行うパフォーマンスの場を利用したい。
彼のショーで、息子の遺体を解剖すれば、中にはきっと進化した臓器があるはず……と。
この辺りになると、ラングが冒頭で息子の死を見てなげくの、あれ子供のために泣いているんじゃなくて、息子の身体の進化をいきている内に世間に紹介できなかったという気持ちが強いんじゃないの?という気持ちに。

カプリースは、一人でのアートパフォーマンスを見に行く。
そこで彼女の友人が、整形外科医に顔面の皮膚を傷つけてそいでもらう様を客人達に披露していた。それを見て、カプリースは自分も顔を傷つけたい衝動にかられ、それを彼女へ伝える。
帰宅してソールに見せた彼女の額は、何かを埋め込んだように盛り上がっていた。
そして今までみたいに執刀係だけでなく、ショー全体の構成にもかかわりたいと言い出す。

ナサルティは、自宅でなぜかソールと同じ「ブレックファスター・チェア」を使って食事をしようとしている。
何、推しと一緒にものを試したいっていうファン心理?
そこへ来訪者。ドアを開けると、「ライフフォーム・ウェア」社のバーストとラウルが、呼ばれたので来ましたと言う。
呼んだ覚えがない様子で???という顔をするナサルティ。
そして作業員の彼女たちが去った後、部屋に残された「ブレックファスター・チェア」はカタカタと動き、そこでは死体となったナサルティが椅子の動きにあわせて揺れていた。

後日、ブレッケンの遺体はアートパフォーマンスにおいて解剖されることに。
期待の目で誰もが見守る中、少年の身体の中からは変色した臓器やタトゥの臓器などが出てくる。
ショックの様子で立ち去る登録所のウィペット。一人残ってショーを見守るティムラン。
ラングはこんなはずじゃないと絶望しながら、ショーの会場を出る。出入り口の階段に座って、嘆くラングに、背後から近づく二人。それは「ライフフォーム・ウェア」社のバーストとラウル。
ラングが、息子の死体から汚染臓器が出てきたのは、妻のせいだと言い出す。それは違うと否定する彼女たちは、持ち歩いていた作業用ドリル?で、背後からラングの後頭部をさして殺してしまう。

────えええええ?!急展開すぎる。
先程の機械技師のナサルティが死体になった時点で、彼女らが怪しいという流れにはなったものの、ここまで直接手を下すとは。
この作業員おねえちゃん達、ただのサーク大好き女子じゃなかった。

後日、コップ刑事とおちあうソール。
ここで、実は少年の身体は一度こっそり警察が解剖していることが判明。
そして少年の身体には、おそらくプラスチックを消化できる新たな臓器が生まれ、その存在が知られると、社会への影響が大きすぎると判断されたのか、少年の臓器はすげかえられていた。
そのすげ替えられた臓器は、ティムリンが絡んでいた。
なんだ、あの子。警察に通じていたのか?それともソールに心酔するあまり、カプリースを出し抜きたくて、裏から先手を打った?
また少年の父親であるラングが殺された件についても、ソールは警察を疑う。それは想定外だったと返すコップ。
ここまでくると、もう誰も信用できない。
そもそもこのコップが、まともな刑事かも怪しく感じてしまう。
仲間の刑事は出てこないし、あくまでも警察と名乗っているのは本人のみ。
ラングの死については、警察も判っていない。
ソールは犯人が誰かはどうでもよく、彼が死んだことで、チョコレートバーを作っている組織が打撃を受けるよりも、彼の存在が殉教者のように扱われていくんじゃないかと言い出す。
それを聞き、コップ刑事はまるで敵側の思考じゃないかと言い返すと、良い秘密捜査員は相手の思考にも寄り添うと答えて去っていくソール。
なんか闇落ちしかけているみたいな展開で、コップが呼びかけるのも聞かず彼は帰ってしまった。


ソールは身体の変化の頻度が高くなっていて辛いのか、今日もまともに食事が出来ず、うんざりした様子。
そこへ例の産業廃棄物チョコバーを持ってくるカプリース。
え、いつの間に入手していたの。それともラングにもらったの?
入手経路は不明だが、ソールはそのチョコバーを口にする。
そしてぴたりと身体の動きが止まり、あわせて「ブレックファスター・チェア」も止まる。
カプリースが記録する映像越しに映るモノクロの世界、そこには一粒の涙を流して微笑むソール。

エンディング。

え?え?もう終わり?
なんか色々伏線たっぷり用意されていた気がするのに、それ全部丸投げで終わり?

解釈

まぁこの監督さん、ビデオドロームの時も謎をなげかけておいて、回答は示さず終わったので、これがいわゆるお家芸なのかなぁと。
とはいえ、臓器登録所のウィペットの裏の顔とか、彼が主催している謎のコンテストとか、コップ刑事が本当は警察として普段どういう動きしているのか(そもそも正義の人なのか?)、女性作業員2名はなんだかあちこちで殺しまくっている印象受けるけれど、あの人たちそもそも何なのか、
ラングの仲間達がやっていたあのチョコレート製造工場はどうなったのか。
全部この辺りは投げっぱなしで映画が終わりました。

最後、産業廃棄物を口にしたソールがにっこり笑うところは、もう彼にはまともな食事が出来ない身体しか残っていないという事なのか、それともその上で今まで苦労していた食事が、このチョコバーは楽に口に出来て、しかも美味しかったということになるのか。
そもそももうなんか色々吹っ切れちゃった笑顔なのか。
涙の意味、解釈しだいで無限に展開できそうですね。

で、ふと気づいたんですが。
これ、ソールが知り得ないものは、映画の観客も知る術がないっていう描き方なのかな、と。
観客は、ソールたちと同じ視点で物語を追う。決して傍観者でも第三者でもない。全体を俯瞰的に見る立場じゃない。
パンフレット読めばその辺りの解説ももしかしてあるのかもしれませんが、初見感想で残しておきたかったので、パンフはちょっと前の方をぱらぱら見ただけでちゃんと読んでません。

それにしてもこの映画、やはり癖が強いです。

ただ作中に、環境汚染で人々の身体が変化してきていることなど、社会問題要素もちょっと含まれているのかな、と。
監督はだいぶ昔から、この話の構想はあったようですが、その当時では技術が伴わず、満を持しての映画作成になったよう。

いや、訳わからないけれど、描き出す世界観の雰囲気とか、考察とかで延々と考え続けられることに楽しみを覚える人には嵌るのでは?

ところでこういう映画で、
まさかアクリルスタンドがグッズで出るとは思いませんでした。


メディアリンク貼っておきます。