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IMW「お気楽探偵アトレヤ」3回目鑑賞の感想(あらすじに犯人ネタバレ)


はじめに

ドリパスで上位候補にあがりなら、既に上映権利が消滅していたこの作品、配給会社のスペボさんが再取得してくれたようで、今回のインディアンムービーウィーク2023パート2にて、再上映が決定!
ということで、2023年12月15日の初日の18:40の回で初鑑賞、12月26日の18:50の回で2回目鑑賞、そして本日2024年1月7日の12:45の回で3回目の鑑賞をしてきました。
初見感想がかけなかったのは、とにかく脚本に圧倒されたから。
2回目も、初見で見落とした伏線を理解するのに徹してうまく感想がまとまらなかったから。
3回目にしてようやく書けそうです。

お気楽探偵アトレヤAgent Sai Srinivasa Athreya
考え抜かれた脚本が見事な探偵ドラマ
アーンドラ・プラデーシュ州の小都市ネッルールで探偵業を始めた若いアトレヤ。レイプ殺人事件を調査するうちに、線路脇で身元不明死体が多数見つかるという別の怪事件に絡めとられていき、彼自身が容疑者となってしまう。『きっと、またあえる』で重要な脇役を演じたナヴィーン・ポリシェッティが主演のユーモア・クライム映画。笑わせるだけではなく、インド特有の事情に根差した犯罪の恐るべき実態についても鋭く切り込む、考え抜かれた脚本が見事。IMW2020上映作品。

監督:スワループ R. S. J.
出演:ナヴィーン・ポリシェッティ、シュルティ・シャルマー
音楽:マークK. ロビン
字幕:日本語
ジャンル:探偵、コメディ
区分:G
2019年 / テルグ語 / 148分

インディアンムービーウィーク2023作品紹介ページより引用
https://imwjapan.com/

「サスペンスコメディ」とか「コメディスリラー」「ユーモア・クライム」というのがこの映画の売り文句なんですが、サスペンスとかスリラーとかクライムという言葉が、まさかコメディやユーモアの単語と同列に並ぶのを見るとは。さすがインド映画。あ、テルグ映画です。

ネタバレ無しのアトレヤトリヴィアの記事がnoteにあるので、気になる方は下記をどうぞ。劇中に出てくるテレビの中の映画は何か、とか判ると、より鑑賞が深まります。

ここからネタバレ有りのあらすじ

<あらすじ>
ネッルール市で探偵業を営むアトレヤは、探偵を志望してきたスネーハを助手とするが、彼の元にくるのは地元の馴染みの警官からの小さな事件ばかり。ある日、新聞記者のシリーシュから身元不明死体の調査を依頼され、彼のタレコミでかけつけた線路脇の現場で死体を調べていたところ、警察に第一容疑者として捕まってしまう。留置所で一晩過ごすはめになった彼は、その夜に留置所にあらたにいれられた老人マルティ・ラオから、レイプ殺人の話を聞き、娘ディヴィヤを奪われた老人に心を痛め、捜査に乗り出す。
老人から得た情報を元に、3つの電話番号の主を調べ始めるが、うち1名で唯一の女性であるヴァスダの情報はつかめなかった。そして残り二人の男性、アジャイとハルシャについて、アトレヤとスネーハはそれぞれ尾行を始める。やがて彼ら二人が合流し何か諍いをしていること、そして二人が、アトレヤが逮捕された原因である線路脇の身元不明死体にかかわっていることを突き止める。その捜査途中、留置所でマルティ・ラオが見せてくれた死んだ娘ディヴィヤにそっくりの女性を見つけたアトレヤ。彼女は生きていて、父親は別に存在していた。死んだはずの娘が生きている。老人が嘘をついていたのか?彼に問い質すため警察を尋ねていくと、マルティ・ラオなる男などいないと言われる。
やがて捜査していたアジャイとハルシャが殺され、尾行していたアトレヤが第一容疑者として捕まる。
ハルシャ殺しの凶器として使われた刃物にアトレヤの指紋があったが、彼はハルシャの死亡時刻、マルティ・ラオを尋ねて警察にいっており、その時のビデオを証拠に仮釈放を得る。
アジャイ殺しでアトレヤを逮捕したヴァムシ警部補は理解ある人物で、アトレヤ達に協力し、一緒に捜査を進める。
アジャイとハルシャとアトレヤの接点は、線路脇の死体にいずれもかかわったこと。これが重要と考えその死因を探るが、検死結果は自然死。
誰がアジャイとハルシャ殺しの罪をアトレヤになすりつけたのか。
アジャイとハルシャを尾行するきっかけとなったレイプ事件の話は、老人マルティ・ラオの主張のみで、該当する日のその州では女性の死体などそもそもなかった。
アトレヤと同じく事件に巻き込まれた探偵のボビーを味方につけ、捜査をするうちに、線路脇の身元不明死体は、いくつもの州にまたがって発見されていることが判明。道路も近くにない線路脇にも死体があることから、死体は列車から投げ捨てられたものと推測。貨物車両に死体をこっそり積み込んだ駅は、30分の停車時間がある小さな駅だと場所を特定し、彼らは駅へ聞き込みに。そして駅舎の壁に貼られた写真の中に、マルティ・ラオと名乗ったあの老人ゴーパーラムの姿を見つける。彼らは、捕まえたゴーパーラムから線路脇に多数見つかった身元不明死体の謎を聞きだす。
しかし犯罪の片棒をかついだ彼は、黒幕の存在を知らなかった。
アトレヤは身元不明死体から犯人たちが指紋を手に入れ、犯罪に利用していたことを推理する。その身元不明死体を独自に調べていたアジャイとハルシャのことを調べる為、彼らの大学を尋ねるヴァムシ警部補とスネーハ。そこでアジャイとハルシャ、そしてヴェスダは同級生であり、大学時代に宗教犯罪について研究していたことを知る。
犯人たちはNGO団体を名乗って、死体回収の詐欺をし、その死体から指紋を採取して犯罪に利用していた。アトレヤ達は彼らを追いつめ、警察に引き渡した。


序盤から張り巡らされた伏線

映画の冒頭、アトレヤが伯父からの電話で、母の死を知るシーン。
日本語字幕では特に触れていないのだけど、アトレヤはどこかの寮の部屋にいるような感じだった。
そして下記の動画は、アトレヤで本編に採用されなかったシーン集のようで、そこで大学時代らしきアトレヤのシーンがある。
つまり冒頭の寮は大学寮かと。3年前に大学生だった彼。探偵業を始めたのは少なくとも3年未満。

それからこのカットされてしまったシーンで、大学時代にアトレヤはスネーハと出会っていることになる。つまりスネーハは探偵を目指してたまたまアトレヤの元にきたのではなく、明らかにアトレヤを認知していて彼の元にやってきたことに。憧れたのかどうかはさておき。
このカット集、せめて英語字幕がついていれば、日本語自動翻訳で何ていっているのか判るのに、惜しい。

そういや最初に線路脇死体の件でアトレヤを逮捕しにきた警官、物凄く背が高くて目立っていた。留置所の柵越しにアトレヤがその高身長を褒めて「アミターブ・バッチャンみたい」という科白があるところ、やはりニヤニヤしてしまう。そしてこの高身長の警官、何かというといつも食べているシーンが多い。何かのオマージュだろうか。

エンドロールでアトレヤがスネーハにバーフバリの話をするところ、これはバーフバリを見ていないと何のことかぴんと来ないだろうなと思ったので、アトレヤ見る前にバーフバリ見ておいて良かったです。別に知らなくても問題ないといえば問題ないですが。

冒頭の、アトレヤの母の死については、終盤で今回の事件に無関係ではなかったことが判るですが、これはアトレヤにとっては知りたくなかった事実だろうな、と。

映画の出だしで、「実在の事件を元に着想を得たフィクションである」と注釈があり、エンドロールでは新聞記事のようなものがちらちら映るのだけど、あれは単なる演出なのか、それとも本当にインドで指紋の犯罪があったのか。
Wikipediaの英語版によると、この映画、脚本につて主演のナヴィーン・ポリシェッティさん自ら共同執筆だった様子。

アトレヤはホームズに憧れて、スーツにコートという暑苦しい姿で捜査をする。この地域の年間の気温の変化がよく判らないが、周りの人たちの恰好を見ると、多分コートは暑いだろうなと思う。実際、ならず者に追いかけられるシーンでの彼のシャツは、両脇が汗でびっしょりになっている。
あと彼のシャツ、前ボタンの両側がちょっと絞ってあってただのワイシャツじゃなくて、お洒落なデザイン。貧乏な探偵にしては、頑張って衣服は揃えている。実際のところ、スネーハを雇えるだけの収入があるとは思えないんだが、大丈夫なんだろうか。車もバイクも一応所持している様子だし、そもそもこの探偵事務所も、住処ではなくちゃんと借りている様子。とはいえ、テレビも電気もファンもつけっぱなしで出かけたら、光熱費が結構大変な気がするんだけど、大丈夫?
アトレヤの寝室の壁には、あきらかにカンバーバッチ版のシャーロックらしきシルエットがある。インドでもあのドラマ、配信されたりしたのかな。

圧倒的な脚本で、初見でも最後の伏線回収はうわぁとテンション上がったが、やはり細部は見逃したり聞き逃したりしていた。でも細かいことはどうでもいい!2023年みた探偵モノ映画の中で一番面白かった。
そして2回目の鑑賞で、警察署ですれ違った人物が実は犯人であったりとか、そういう詳細が理解できてきて更に楽しめた。
3回目、更に見落としていた伏線とか演出があったことに気付いて、全然飽きない。

個人的に好きなキャラ、ヴァムシ警部補。
私服警官?制服きてないんですが、一番気になるのは左手の包帯。登場当初から負傷しているのですが、これについては何かの伏線かと思いきや、全然判りませんでした。もしかしてカットされたシーンに、警部補のエピソードが用意されていたとか?
彼の協力なしでは、アトレヤは真実に近づけなかった。警察でも良い人物はいるんですね。彼の人望によって、検死の結果を教えてもらえたり、別の管轄の警察署にいって協力を得られたり。

そして中盤から出てきた探偵ボビー。当初はアトレヤ達を付け回す謎の男だったけれど。実はアトレヤと同じように、形から入るタイプの探偵。格好へのこだわりはさておき、額の絆創膏お揃いには笑った。
彼がスネーハに、カンナダ語でしゃべるシーンがあり、その後にスネーハが「日本語でも判る。それのテルグ語版をきいているので」と日本語訳されている部分、スネーハの科白、音声だけだとジャパニーズっていうよりはチャイニーズに聞こえたんですが。

初見では、アトレヤを巻き込んだ発端であるシリーシュ先輩が犯人かもと思ってました。最初のタレコミの人だし。それだと馴染みの友人が犯人になってしまう……アトレヤお友達失ってしまうと心配してました。


再上映、有難うございます。DVDも買えたし、大満足です。

やはり記念撮影は、同じホームズオマージュの某ビーグル犬さんで。

おまけ

歌詞付きのテーマ曲動画ありました。

アトレヤの中で印象的な科白……
ホームズは架空の人物だが、アトレヤは実在……って辺りもいいんですが、
でもやはり3回鑑賞して一番に浮かぶのは

「タッパー!!」

ですかね。
この記事の1番目の動画の中盤にでてきます。
探偵事務所の宣伝動画を撮っているシーンで、「朝の11時までにお電話いただいた方には特別に……タッパープレゼントします」ってくだり。