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IMW「Rラージクマール」を見てきた(ネタバレ有り感想)

はじめに

インディアンムービーウィークにて「Rラージクマール」(原題:R...Rajkumar)を見てきました。

恋と死闘のミュージカル
風来坊のロミオ・ラージクマールが流れ着いた田舎町は、麻薬王とマフィアの対立で荒れていた。ロミオは麻薬王の手下となる。ある日銃撃戦に巻き込まれた女性チャンダーを助けたことで、ロミオは彼女に好意を抱く。だが、麻薬王がチャンダーを見初めて彼女の意思を無視して娶ろうとしたことから、ロミオは麻薬王に対峙する。伝説級ダンサー&コレオグラファーのプラブデーヴァー監督作品。

監督:プラブデーヴァー
出演:シャーヒド・カプール、ソーナークシー・シンハー、ソーヌー・スード
音楽:プリータム
字幕:日本語
ジャンル:アクション、ロマンス、コメディ
区分:G(暴力シーンあり)
2013年 / ヒンディー語 / 146分

インディアンムービーウィーク2023年作品紹介ページ
https://imwjapan.com

監督がダンサー・コレオグラファーってだけだあって、えげつない動きのダンスシーンが多かったです。
先日の「狼と子羊の夜」と同じく、2013年つまり10年前の作品。
作品紹介ページのあらすじが若干不穏な空気を漂わせているのと、チラシの写真のヒロインが口から血のあとが見えるサムネだったので、暴力映画を想像してました。いや、実際後半は殴り合いなんですけど、基本コメディでした。驚くほど、前半ががっつりコメディでした。
あと悪役がここまでコメディに走る映画も、なかなか見ない感じで新鮮でした。


キネカ大森さんのポスターより

ネタバレ有りの感想

のっけから「恋か、けんかか」という歌詞の歌が始まり、本編しょっぱなから、夜のシーンで、複数の男達に足をつかまれ引きずられていく主人公ロミオ・ラージクマール。なんだか不穏。
ぼこぼこにされて引きずられているらしく、彼が心の声で色々独白しているうちに、数か月前のシーンに突入。
とある田舎に流れ着いてきた主人公は、ヒロインに一目惚れして以来つきまとう、ちゃらんぽらん系ストーカー。
地元のマフィア同士の抗争、そして彼らの争いを台湾から見守るもう一つの勢力。警察はどちらの味方でもなく、条件の良い方に毎回味方するような状態。
争う二組のうち、片方シヴァラージの元に入ったロミオ。状況の見極め能力が高いのか、敵の罠を見抜き、あっという間にボスのシヴァラージの右腕に抜擢される。14年間彼につかえてきた側近の男が、ロミオのことを生意気だと言いつつ、その洞察力などをちゃんと理解していて、やがて二人はデコボコ関係なドスティに。
敵地に乗り込むために、二人して女装して、ナイスコンビネーションを披露する辺り、もっと沢山見たかったです。
腕っぷしは強いロミオだけれど、一目惚れしたヒロインを見る度に、あっという間に仕事をそっちのけでストーカーになってしまう。
勝手に惚れられ、つきまとわれ、心底うんざりのヒロイン。
そのメロメロ描写が、なんか漫画にあるいわゆる「あほの子」状態なんですよ。諸星あたるのように、なんど邪見にされてもめげないタフさ、でも違うのはヒロイン一途な事。
当初彼女の名前が判らないので、仮称(愛称)で「ぺろりんちゃん」て呼んでいる字幕なっているんだけど、字面的には「ぺろりんちゅわーーん❤」という感じだった。

しかしヒロインの気をひくためとはいえ、燃えさかる家に飛び込んで人助けをしたり(※ここも実はコメディ要素多い)、一途な彼にだんだんとヒロインも心動かされていく。

前半、中盤、本当にダンス見せ場が多くて、中盤は特にヒロインとラブラブモードなので、やや冗長な印象も。
ヒロインは、ロミオの属するボス・シヴァラージに気に入られてしまって、しかも彼女は敵対勢力のドンの姪っ子ということで、彼女とボスの結婚によって2大勢力が手を結ぶ……という話が浮上。
ロミオは彼女をめぐってボスと対立。圧倒的な強さを見せつけたロミオは、彼女をつれて……何故か逃げず、ボスと彼女の結婚式まで待って、そこで自分と彼女が結婚式を行う宣言。
え、何いっているのかよく判りません。
このまま勝ち逃げすればいいのに?
このボス、ヤクを巡る対立には容赦ないのに、一応ヒロインとの婚姻までは手を出さないと割と律儀な人。しかもヒロインの会話を盗んで得た情報によって、英語を習いだしたり、ダンサーから踊りを習おうとしたり。

ヒロインはヒロインで、ロミオの手前、ボスが自分に手を出してこない安心からか、結構ボスに対して強気発言が目立つ。そんなに煽ると、今は紳士然としている彼も、突然キレるのでは?とこちらが心配するレベル。
ヒロインは両親がいなくて叔父(伯父?)が唯一の身内ぽいけれど、その叔父が、ロミオと連絡を取り合うヒロインを殴るシーンがあって、それを電話越しで聞いていたロミオが後日、その叔父を連れ出して、ベルトで鞭打ちするシーン。本来ならかなりのアレなシーンなのに、そこもコメディな流れに持っていくのが徹底していた。

やがてロミオを捕まえた警察(いやなぜ捕まったのかは謎過ぎる)が、ボスに連絡をとり「彼を始末するなりお好きなように」と引き渡そうとするも、そこへ第三勢力のトップがやってきて、実はロミオが、対立する2大勢力に送り込まれた鉄砲玉と判明。(※彼らをかき回すためか、収束させるためか不明だが)
しかしヒロインに惚れたのは、別に仕事のうちではなく、彼の本能で、恋に盲目すぎて、ボスの麻薬を奪い損ねたことを指摘され、そのトップに腹を刺されることに。更に、彼と手を組んだボスにも刺され、瀕死の状態に。
そのままヒロインはボスに連れていかれ、主人公は生き埋めにされるため引きずられていく……という冒頭のシーンに繋がる。
割と本編の7割くらいの時間、主人公が圧倒的に優勢だったから、そりゃこのまま終わらないよなと思っていたけれど、本当に最後の方で形勢逆転されてしまった。

映画のノリが中学生男子の集団みたいな気がしないでもないし、シヴァラージ(サムネの髭の人)も中盤は割とコメディ部分担うシーンもあったんで、油断してましたが、まぁ冷静になれば麻薬で儲けるマフィアなんですから、いつまでも大人しくしているわけもなく。

シヴァラージとヒロインの結婚披露宴?で盛り上がるそこへ、生き埋めにされたはずのロミオが登場。とはいえ散々さされている傷が治っているわけもなく、ズタボロ状態でとぼとぼと歩いてくる。
ヒロインが見ている手前だからか、部下に彼をまかせず、自ら一対一の肉弾戦をしかけるシヴァラージは、男気ある……のかも。
コメディ描写多くてつい忘れがちですが、状況はハードなので、最終的に主人公がシヴァラージを苦戦しながらも倒して、やっとエンディング。
何度も入るダンスシーンが、ちょっと多すぎな印象もあったし、最後の殴り合いもわりと長めで若干やきもきするけれど、楽しい映画でした。

あと、最大のネタバレですが、生き埋めされたロミオに手を貸したのは、シヴァラージにずっと仕えて、彼に右腕ポジションうばわれたけど一緒にコンビ組んで何度も組織のために働いた長髪アニキ。
ヒロインの結婚によって、大物二人が手を組むなら「小物同士も手を組むんだ」と言い放って、ロミオの横に立つシーンはすごく良かった。
とはいえ、振り返れば、彼がロミオに真っ向から敵対するシーンは無かったのだ。シヴァラージに最初にロミオが反旗を翻して暴れるシーンなど、状況察してすぐ姿を消しているんだけど、この時点では巻き込まれたくなくてその場から逃げた程度だと思っていた。
あとヒロインが捕まった車の運転手をしているところでも、シヴァラージが車から降りて再び戻ってくるまでにヒロインが逃げ出すんだけど、その時にした言い訳が「ロミオが奪い去った」といって、怪我した額をかばっているんだけど、そんなにひどい怪我ぽくなくて、ここ若干演技なんだろうなって気はしていた。
とはいえ、ロミオと手を組んでいるとまでは思っていなくて、巻き込まれ回避で距離を置いていたのかと思っていただけに、最後にロミオの横にすっと立つところ、そして周りにいるシヴァラージの手下たちもそれに賛同しているシーンは、グッときましたよ。その割に、彼の名前がちゃんと出てきたか定かじゃない。字幕見逃したか?
そして手下たちが、シヴァラージがロミオに倒された後に、対立相手のトップに対し、向かっていくところ、すがすがしかった。
あほの子も、シヴァラージ一派の手下たちの間では割と人気者だったのかもしれない。

今回日本語字幕でいいなぁっと思ったのが、ロミオが怒って😡相手を睨みつけて反撃に出るところ「いいの?俺、暴れちゃうよ?」みたいな言い回しで、これがロミオのキャラにマッチしていた。厨二くさい科白も、ロミオがいうと痛々しいんじゃなくてどこか可愛らしい。
手がつけられなくなって後悔するよ?知らないからね?と相手に対し、自分の力が圧倒的なことを宣言。しかも口先だけでなく、本当に強いもんだから、ただのアホの子じゃない。
あと一番最初に映画の中で笑いが起こったの、多分ボスが上半身裸で鍛えている?ところを、ロミオがすれ違いざま、どれくらい(の期間鍛えたら)そんな(マッチョな)身体に?みたいな子供みたいな疑問に、ボスの胸筋がピクピクってするところ。
あと面白かったのが、食事中のボスが仕事の話で、ロミオと兄貴を前に質問投げかけるところで、ボスが食べているご飯をガン見しながら🍚ロミオが「マンゴー🥭(だったと思う?)の漬物と一緒に食べるといいです」って言って、兄貴がおいおいと頭抱える表情するところ。結局仕事の話が終わって、二人が去っていくときにボス、その漬物持ってこさせて一緒に食べて美味いなって納得しているようだけど。

あと敵対勢力のやっている店で一人で飲んでいるロミオを見つけて「この野郎よくもぬけぬけと」と相手方のチンピラ数人が取り囲むんだけど、珍しくロミオがコテンパンにやられるシーン……と思ったら、
「……なんてのを想像したでしょ?」とメタ発言して、実際はその妄想と真逆に彼らがロミオにこてんぱんにやられるという。
ドリフみたいなコントで楽しかったです。