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【IMW2023パート2延長上映】「後継者」ネタバレ感想


はじめに

1/12より【IMW2023パート2】の延長上映として、「後継者」の上映開始。

現時点での日本語字幕がついた最新のヴィジャイさんの映画、
IMW開催中、連日チケット速攻完売で人気で取れないということで、この1作品のみ1週間の延長上映が決まった。よくぞキネカさんが急な対応してくれたなぁと。

※noteに感想を残すのは個人的な覚えです。感想は感じたまま、忖度なく書くので、いわゆるネガティブ感想とかに拒否反応を感じる方は読まないことをお勧めします。

あらすじ

後継者 Varisu

天才肌の末息子、家族の危機に登場
大企業オーナー一族が住む屋敷に、当主と衝突して家を出ていた三男ヴィジャイが戻ってくる。彼は事業を引き継ぎバラバラの家族を結びつけようとする。ヴィジャイ(マスター 先生が来る!)主演、2023年1月公開のヒット作。

監督:ヴァムシー・パイディパッリ
出演:ヴィジャイ、ラシュミカー・マンダンナ、サラトクマール
音楽:S. タマン
ジャンル:ファミリードラマ、アクション
区分:G
2023年 / タミル語 / 169分

https://imwjapan.com/
インディアンムービーウィーク2023公式より作品紹介引用


ネタバレあり感想

好きな作品だといつもはさらっと話も流れも書くんですが、話の流れは英語版のウィキペディア参照してください。(丸投げ)

初回がいまいちだったので、note感想書かないつもりだったんですが、色んな映画を立て続けで見ていて疲れていたせいかも、と思い直したのと、連日人気だったから、見直すために2回目チケットとるのは多少気が引けて、このまま初回の印象のまま終わる予定だった。延長決定後の1日目だったけれど、平日だったのでチケットに余裕があったので、2回目鑑賞を決めてみた。

初回と印象変わるかと思ったが、残念ながら感想は同じだった。
やはりなんか……勿体ない脚本というか、惜しい。
とはいえ、初回では気付けなかった点もあった。特に周りのキャラクターの表情の変化とか。
惜しいポイントその1が、とにかく「合成感が凄い」。序盤のシーン、景色はほぼ合成。最後のシーンも合成。とはいえ、これはコロナ禍の影響とか事情があるのかもしれない。
惜しいポイントその2が、家族とのエピソードの尺が全然足りていない。

家族の絆を描く作品だから、正直ヒロインのダンス曲2曲も要らないなって。ぶっちゃけ恋愛要素も、ちょっと余計だった気がして。スター作品には絶対恋愛要素いれないと駄目っていうルールがあるなら、せめてマスター並の要素でとどめて欲しかった。ヒロインのキャラは可愛いし、義姉の妹ってことで良いポジションだったんだけど、女優さんが幼く見えるせいか、長兄の子供のリヤとあまり差を感じないし、申し訳ないがダンスシーン、タラパティとのダンスが親子ダンスにしか見えなくて。年の差さすがにありすぎるだろうって。
特に2回目のダンスナンバーについては、長男のエピソード解決直後で兄弟の絆を感じてじんわり来ていた時に急に差し込まれたので、余韻ぶち壊しだったのがしんどかった。
あと長男が改心するエピソードに対し、次男が改心するエピソードが弱くて、尺が足りていない印象。「父が死んでも絶対戻らない、葬式も出ない」と意固地になった相手を戻すのに、最後の流れはあまりにあっさりしすぎ。ダンス曲何度もいれるくらいならそこ排除して、徹底して家族のエピソードを掘り下げて欲しかった。
最後まで見ると「あぁ良かった」とは思えるんだけど、中盤で家族のエピソードが、主人公の恋愛エピソードでぶつ切りになる度に、「いま見たいシーンはそれじゃない」感が凄くて。
初見の時は、今後の展開が判らないからまだ集中できたけれども、2回目だと話がわかる分、その差し込まれる「中断」要素にだんだんと疲れてきて。
今までタラパティ作品て、脚本が秀逸で、物語の主軸とスター性のバランスが良かっただけに、今回も期待値を上げすぎたのかも。
中盤あたりだったか、急に主人公がカメラ目線になって、映画の観客に囁きかける演出も、今回に限っては正直裏目に出た感じ。真面目なテーマだけに、そういう小ネタ的な要素は、無理に入れなくていいんじゃないかなって気にし出したら、映画に集中できなくなったのが初回。

ただ、役者陣の演技は素晴らしかった。
長兄ジャイの表情の変化、怒り→戸惑い→悲しみ→思い直し→家族との絆の再確認と、物語が進むにつれて、彼の気持ちが表情や間合いなどからひしひしと伝わって、「よくぞ戻ってきた、お兄ちゃん!」となる。
次兄アジャイ、長兄よりも頑固。面倒くさいタイプ。でも最後はその頑固ゆえに素直じゃない形で「俺の流れる血は贖罪だ」なんて言って、「お前、素直じゃないな、お帰り」となる。ただそこに至るまでのエピソードが尺が短くて説得力が足りない。急な心変わりにしか見えない。次兄の掘り下げエピソードが全然足りていない。

JP役プラカーシュおじさん。
清々しいまでのヴィランなんだけど、気持ち良い。怒ったり戸惑ったり、笑ったり。良いプラカーシュおじさんも、悪いプラカーシュおじさんも大好きなので、2回目は特に彼をじっくり堪能した。
ラスト、主人公が「あなたを潰すのは簡単だがしない。何故なら父親と同じ年だからだ」みたいな科白のところ、JPは何も言い返せずじっと彼を見ているだけなんだけど、初回ではただ難しい顔して黙っているだけに見えたところが、2回目では彼の表情の微妙な変化に気付けた。
「あなたと父はライバルだ」のところ、主人公が最後くらいは(うちの)父親を(倒すだけではなく)ライバルとして見送ってやれと言っているような雰囲気に対して、初回はPJにはそれが充分に伝わっているか判りにくかったけれど、2回目であれはもう察したんだろうな、と。父親の病気のことは公表していなくても、倒れた事実は報道されただろうから、JPももしやもう長くない?とうっすら気付いていそうだし。

そして安心のヨーギ・バーブさん。ギスギスする家庭内の雰囲気を彼が中和してくれている。

お父さん役のサラトクマールさん、冒頭の厳しい顔から、余命を宣告されてからの表情変化が……。周りに知られないように努める反面、死への無力感が伝わってきて、見ていて辛かった。2回目は特に、彼に感情移入して見ていた。最後に次兄も戻ってきた後の、彼の顔!
色々展開はご都合主義だった気がするが、この終盤の父親の姿みたら、報われた気にはなる。
欲を言えば、JPが、姿は見せないけれどこのお父さんになんか言葉をかける(手紙なりで)シーンとかがあったら良かった。中盤以降、JPと彼が顔を合わせるシーン、全然ないから。

アナンド先生。お父さんの主治医であり、おそらく古い付き合い。彼いわく「唯一の友人」らしいので、仕事に厳しいお父さんにとっては本当に唯一の友人であり、本音を話せる相手だったんだろうな。だからこそ、二人のシーンもっと欲しかった。

カメオ出演のSJスーリヤさん、アディティヤ・ミッタル役。
メルサルを3日前に見たばかりの2回目鑑賞だったから、余計ににやにやしてしまった。金貸しというか投資家の役。
まさかヴィジャイさんとSJスーリヤさんが笑顔で並んで歩く姿を見るなんてね。こういう要素は、本編に沿った形での遊び心だったから楽しかった。

あ、主人公が社長としての承認を得るために、役員たちをなかば脅して得票していくシーン、マスター先生がくるのネタとビギルネタあって、あれくらいのお笑い要素はバランスとしては良かった。役員3名が、JDのエントリー曲でダンスしながら寝返るところとか。

ダンスシーン余計だなとは思ったけれども、労働者たちとのダンスは、彼らの環境を知って改善していく様子を要所ではさんで、セリフやナレーションに頼らない説明としては成立していたので、あれは違和感なく楽しめた。

おまけ

題材と役者は揃っていて、でもところどころ見た後に「惜しいんだよな」と感じてしまうのが初めてのケースだったけれど、この監督さんの作品を1作品だけで判断するのは避けたいので、他に何つくった方かなとウィキみたら、自分がとても日本語字幕で見たがっている「Oopiri」の監督さんで驚いている。え、あっちは英語字幕とはいえ、見た感触とても良かったのに……。(とはいえ、Oopiriはリメイク映画であるが)
あと結構いろんな有名どころ作っている方のようで。
うーん、今回はたまたま自分には合わなかっただけか。

後継者を初回見た時も、2回目見た時も、その前後にメルサル(現状、自分が一番好きなタラパティ映画)を見たせいで、つい比べてしまうのも良くなかったのかも。

数年経って見返したら、また印象が変わっているかもしれない。