キャッチイメージー_-強制連想法

“強制連想法”で思考を発散させる

≣概要

思考を広げ、何かの「発想(アイデア)・着想」を得る方法として、“自由連想法”と“強制連想法”があります。どちらも技法そのものではなく、発想のための技法のカテゴリですので、「“強制連想法”の具体的な技法として“ガイドワードを使用する技法”や“表を使用する技法”がある」という関係になります。

『日本国語大辞典』によりますと、「発想」とは、

① 思想や感情などをある形に構成して表現すること。また、その構成した考え。
② どう取り扱い、どうまとめるかという考えが浮かぶこと。また、その考えのもとになる思いつき。
③ 音楽で、楽曲のもつ気分を的確に表現するための演奏の緩急や強弱など。

の意味とのことです。ソフトウェアの「テスト分析」でいう発想は、②の「(テスト対象やプロジェクトのテストをどう理解し)どう取り扱い、どうまとめるかの考え」のことでしょう。

※「まとめる」については、私はテスト分析とは分けて実施しています。実は、テスト分析で「まとめる活動」まで行う人(にしさんやミッキーさんなど)もいます。どちらが良いということではなく、「まとめる」ことが必要ということは同じですので、あとは、「思考を発散しつつまとめる」方がやりやすいか「一度発散させ切ってからまとめる」方がやりやすいかの違いと思っています。

本エントリーでは、“自由連想法”と“強制連想法”の違いと、その使い分けについて書きます。なお、下記の方法で思考を「発散」し、アイデアを種を見つけたあとには、それをまとめる(「収束」する)技術が必要となります。
思考を収束し、使える発想にする技術としては、KJ法の「グループ編成」、「図解化」、「叙述化」などがありますが、本エントリーの対象外となります。興味がある人は、『続・発想法―KJ法の展開と応用』を読まれることをお勧めします。

(参考情報)
発想法には、自由・強制のほかに、“類比発想法”があります。“類比発想法”では、類比(アナロジー)を使って発想を広げていきます(なお、私は「“類比発想法”は“強制連想法”の一種」と思っています)。
“類比発想法”とは、簡単に言えば、類似したものを思い浮かべ、それが持っている機能・性質・構造・原理を転用できないか? と考える方法です。例えば、「撥水性の良いレインコートを作るアイデアを得るために、蓮の葉が水を撥く『ロータス効果』を思い浮かべ、その原理を適用してみる」などです。

≣“自由連想法”について

もっともよく知られた“自由連想法”の技法に「ブレインストーミング」があります。
みなさんも会議の席で問題の解決策が見つからないときに、「これからブレストを始めたいと思います。何でも自由に発言してください。でもただ一つ『誰かの発言を遮ったり否定したりしない』ことは守ってください。ではご意見のある人、お願いします。」といって、多くのアイデアを集めた経験をお持ちのことと思います。それがブレインストーミングです。「集団発想法」ともいいます。

他の人が出したアイデアに対して、「だったらこんなアイデアはどうだろう?」と触発・誘発される形でどんどん良いアイデアが生まれることを期待する技法です。
「ブレインストーミング」のコツとして、
 ① ほかの人の意見を批判しない
 ② 実現性が怪しい奇抜なアイデアを重視する
 ③ 質より量でたくさん出す
 ④ ほかの人の意見を自分の意見に融合し改善することで、発展させる
ことが推奨されています。この4つのコツを一言でまとめれば「自由に気持ちよくアイデアをたくさん出し合う」ということになるでしょう。

“自由連想法”を用いたテスト分析の例としては、テスト観点や因子を見つけるためにテスト対象やプロジェクト名をトップノードにして、それを木構造で分解していく方法があります。また、先日、改訂新版が出版された『マインドマップから始めるソフトウェアテスト』も“自由連想法”で発想を豊かにすることをテーマのひとつにしているように思います。

以下は、上記本の内容の紹介文です。

観点を創造し、広げ、深める。発想力を高めるマインドマップの利点をいいとこ取り! テストに必要な作業工程を俯瞰してとらえ、クリエイティブなテスト設計で脱初級者を目指そう! (「BOOK」データベースより)

マインドマップでテスト観点を創造するときに、「木構造にまとめていくルールを細かく決めない」ようなら、“自由連想法”と言い切ってよいでしょう。(現実的には、マインドマップを使用するときにも、全くルールなしで使うのではなく、CBIFWや6W2H等のフレームワークを用いる等々の緩いルールを設ける場合もあります。)

≣“強制連想法”について

“自由連想法”とは異なり、HAZOPのガイドワードを使ったり、ソフトウェアテストであれば、鈴木三紀夫さん考案の“意地悪漢字”を使って、連想するテーマを与え、強制的にその範囲の発想を引き出す方法を“強制連想法”といいます。小田部健さんの“バグッぱ”というカードゲームもガイドワードを用いた“強制連想法”です。
ガイドワード以外では、表を使う方法もあります。“ゆもつよメソッド”では「機能カテゴリとテストカテゴリが交差するセルのテストケースが不足していたら、そこに新しいテストケースを考えて埋める」ことをしますが、この方法も“強制連想法”です。(行列見出しの、機能カテゴリとテストカテゴリを見つけ出す部分については“自由連想法”かもしれません。)

≣どう使い分けるか?

直感的に「“自由連想法”を使用して、自由に発想の翼を広げたほうが良いアイデアがたくさん生まれるのでは?」と思われたかもしれません。私も“自由連想法”の方が良いだろうとずっと思っていました。しかし、研究結果はその逆で「“強制連想法”の方が短時間にたくさんのアイデアを出せる」ことが分かっています。ゼロから自由に考えるのは案外難しいようです。

“自由連想法”の方が難しいので、実務的には“強制連想法”の要素を加味して使う場面が多いと思います。例えば、先に述べたようにマインドマップで“自由連想法”を使うときにも、全てを自由にするのではなく、よく知られたフレームワークを使うことで大きな漏れを防ぐなどです。
もっとも、エキスパートになると、細かに定義されたフレームワークはかえって煩わしく思う(発想の邪魔と思う)ようになります。そのような人の場合は“自由連想法”で、自由に発想していただければと思います。

≣まとめ

思考を広げ、発想を得る方法として、“自由連想法”と“強制連想法”があると書きました。
新しい発想を得ようと集まったメンバーがエキスパートだったり普段関わりが薄い他部門のリーダーが集まったときなどには自由に意見を出し合う(ブレストなどの)“自由連想法”を使い、逆に、同じグループで業務を行なうときに、まだ経験が浅いメンバーを含む場合には、色々と学習しながらアイデア出しをすることができる(ガイドワードを使った)“強制連想法”を使うと良いでしょう。(“強制連想法”を使用中に飛び出した「自由な思い付き」も大切にしたいですね)
他にも、発想を得る技法は多数ありますが、各技法の特徴を十分に理解したうえで、業務に適した技法を選択・使用することが大切です。また、“自由連想法”と“強制連想法”の二者選択で考えるのではなく、どちらを使うにしてももう一方の要素を取り入れるなどの工夫が必要と思います。

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