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全体論的探偵ダーク・ジェントリーの影であるひとは

最近、Netflixでドラマを見ました。
正直に書くと、3周してしまいました。
そして終わるのが寂しくて、4週目のスタートラインに立ってます。

そのドラマのタイトルは『私立探偵ダークジェントリー』。
原作はイギリスのSF作家ダグラス・アダムズの「ダーク・ジェントリー」シリーズなのですが、“全体論的探偵”という部分以外はドラマオリジナルな部分が多いそうなので、原作というのか、原案なのかな、と思ってます。

ドラマはあまり得意ではない私が、何故このドラマを見ようと思ったのかと言いますと、理由はたったひとつ、イライジャ・ウッドが出てたからです。
はい、ロードオブザリングからのファンです。
顔をまともに覚えられない私が、はじめて顔と名前を覚えることができた海外俳優さんです。
そして今も絶賛大好きな俳優さんです。

フロド役のあと、けっこう個性強めの役を演じることが多いイライジャ君ですが、このダークジェントリーのドラマでもなかなかに変な役をやっています笑

見始めたきっかけはイライジャ君ですが、
このドラマ本当に面白くて、
一話目から目一杯SF色強めに、いくつもの人たちの道を並行して描いていきます。

主人公のひとりで、イライジャ君演じるトッドは不可思議な一日を送ることになります。
朝からアパートの大家に喚き散らされながら車を叩き壊され、
仕事先では(ホテルのベルボーイをしてます。制服が可愛い)メインのカードキーを失くしてしまい、上司から様子を見てくるように言われたペントハウスでは三人の男がサメに食い殺されているのを発見してしまい、
そのために仕事をクビになったうえ、
家に帰ったら見知らぬ男が窓から侵入してきていたのでした。

驚いて何とか侵入者を追い出そうとしますが、
その侵入者こそがもう一人の主人公であるダークジェントリーなのでした。

彼は言います。
「僕は全体論的探偵のダークジェントリー。
君に助手になってもらいたいんだ!」

猟奇的な事件ではじまるくせに、どこかポップな色合いが強くて、
はじまりから大量に情報を盛り込んでくるので「?」で頭が埋め尽くされてくるのですが、それがとても楽しいです。

SFだと知ってみていたので、
「あ、これはこうつながるのでは??」
とか考えながら見てましたが、本当に線のこんがらがり方が凄いです。
そして最終回に向かっての伏線の回収も気持ちいいくらい何も残さず攫って行きます。
ただ、疑問は少し残ります。
ジェントリーという人について、
そして彼をとりまく吸血鬼の荒くれ三人組(でも四人いるんです)や、
彼らを観察している様子の政府機関ブラックウィングのこと。
きっとこれはもっと大きな物語として描かれていくはずのものだったのでしょうが、残念ながらシーズン2で打ち切られてしまっています。

評価もとっても高いのに、、、

シーズン1のラストが「え?!」という終わり方なのに、
シーズン2が撮られたのが二年後というのを見て、
こんなラストで止められたらそわそわしてしょうがなかっただろうな、、、とリアルタイムで見ていた人を尊敬してしまいました。

このドラマ、お話の伏線回収もすごいのですが、
それに負けないくらい登場人物もよくて、
みんなキャラがしっかりしています。

その中のひとり「バード」という女性のことが、今ぐるぐるしています。



(ここからネタバレのようなことも書いてしまっています。)



彼女は、「全体論的殺し屋」です。
なんだそれは、、、ですよね。

すべては繋がっていて、起こること、知ることには全て意味がある。
その流れに従って謎を解く(状況を整理して絡まったものをもとのほぐして流れに返す)ことが主人公のダークジェントリーの役目であるなら、
バードは円滑な宇宙の流れを乱すものを次々に葬っていくのが役割になるのだと思います。
(このあたりのことに手を付ける前にドラマが打ち切られてしまったので、
想像です。)
彼女が望むならば何人もその行く先を阻むことはできないし、
どんなものでも彼女を傷つけることはできません。
(事実銃弾は弾道を変えますし、頭に突きつければけして銃口から出てこないのです。)
(唯一の例外は、同じく宇宙の意志によって動くダークに危害を加えよとしたときです。)
そんな彼女は、知り合うべくして知り合い、自分の道行きに同行させた電気技師(と言っていたけど、ハッカー的なことも電気技師という職業の人はできるんだろうか?)のケンとの交流を深めるにしたがって、自分のなかの「殺さなくてはいけない」という意志に反抗するべきではないか、と考えるようになります。
ケンが「誰でも殺しちゃだめだ」と言い、「殺されるのは嬉しくない」と教えたことで、人は殺されることを望んでいないし、殺されようとするその時は酷く悲しい気持ちになるのだと知っていきます。
だからシーズン2では、「殺さなくちゃいけない」と思った女性を見逃し、それによって彼女は新たにできた友人を失ったり、恐ろしい数の殺生をすることになってしまいます。
彼女は「私には壊すことしかできない」といい、
うなだれながらケンのもとに行くことを選びます。
ケンは、彼女が奮闘している間、バードやダークを管理しようと接触を続けている政府機関でいろいろあってプロジェクトのリーダーを任されることになっています。
その組織に捕まった当時は、彼にとって「バードのようなひとたち」というのは箱のなかに詰め込んでも力を発揮しないのだから、彼らは世界に放たれてこその存在だと信じていました。
それがこの組織が調べてきた他のそういう不思議な仕組みで動くひとたちの存在を知るうちに、「こんな危険なものを世の中に放していていいわけがない」と考えるようになっていきます。
今までこの組織のリーダーたちの多くが考えてきた思想に、ケンも飲み込まれてしまったのでした。
それを知らず組織に戻って来たバードは、彼との面会を果たし、
「言っておく。なんだかあんたを殺さなくちゃいけない気がしているよ」
と言います。
それに対してケンは「ああ、そうだろうね。でも君は僕を殺さないだろ?」と言って部屋を出ていきます。
そして部屋の電気は落とされて、終了。

、、、え??
そんなのバードが辛すぎるのですが?!
「するべきこと」をただこなしていくことに何の疑問も持っていなかったのを、ここまで自分の意志を持たせたのはケンなのに、そのたった一人の信頼さえ踏みにじられようとしていることに、気付いている彼女を残して終わりなんて。

ダークは、シーズン1で彼自身を受け入れてくれる友人を得ました。
シーズン2では、その役目ゆえに、まわりが巻き込まれて生活を変貌せざる得なくなっていくことに苦悩しますが、彼の負ったものまで受け入れてそばにいると言ってくれる人たちを、ダーク自身も覚悟を決めて受け入れ、晴れやかな笑顔で終わっていきます。

ダークのような終わり方を、彼女にはさせてあげられないのか。
その役割の違いはあるけれど、こんな差をつけなくてもいいじゃないか。
そんなことをぐるぐる考え、
またこのドラマを見てしまうのでした。

どこかで、彼女が救われる物語が生まれないかな、と思いながら。
どうせならば、ケンの不安も薄まるような、二人が楽しそうに笑い合い続ける結末がいい。

もうドラマで続きは望めそうもないけれど、
同じように彼女の行く末について心を痛めた人がいるのではないかな、と思っています。
そんな人の中から、その後を埋める物語を書いてくれる人がでてきたらいいな、と思っていたりします。

自分で書くかもしれませんが笑

『私立探偵ダークジェントリー』、そんな感じで胸にこもるものは残りますが、物語りも登場人物も素敵なので、気になった方いらっしゃったら見てみて下さいませ。
そしてできたら語ってほしいのでした。
求む、同士です。

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