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さらされたうなじに強く風は吹きつけた

お正月明けすぐ、髪を切った。
私はもともと腰を超えるくらいの髪の毛だったのが、ここ数年は二年に一回くらいばっさりと切るようになった。
切ると言っても、美容院なんて洒落た場所に行くのでなく、美容師の友達にちょっとかじらせてもらったことがある母が鋏を握る。
なのでただただ切って整えてちょっと空いてとするだけだ。
そんなわけで私の人生で美容院に行った回数は片手で足りてしまうくらいだ。染めたこともない。
そんな私が美容院で髪を切ることにしたのは、その母がいきなり「ヘアドネーションをしてみたい」と言い出したからだ。
だけど自分が髪を伸ばすのは面倒くさい。母は肩に届いていたのはいったいいつの年代か、、、というくらいのショート歴の長い人で、とてもじゃないけれど伸ばすのは耐えられない、という。だから私に代わりに伸ばしてくれと言い出したのだ。切りに行くときはお金を出すから、と。
髪の毛を伸ばすのは別に苦ではなかったのでOKをして、私は二年ほど髪を伸ばした。ヘアドネーションは30センチは最低必要だという事だったので、そのくらい伸びたら切ろう、と思っていた。
そして去年の12月にはそのくらいの長さになっていた。
よし、切ろう。
そう思ったはいいけれど、ヘアドネーションをしてくれる美容院を探し、予約しなくてはいけないというのが、変なところで尻込みしてしまう癖を発揮してなかなか進まなかった。おかげで年をまたいでの決行となったのだ。

せっかく切るのだから、もういっそ染めるのもしてみよう。
染めるなら、赤が良い。
昔いっしょに働いていた子が内側だけ真っ赤に染めていたことを思い出したのと、今一緒に働いているおしゃれ番長が素敵な赤っぽい色を毛先にだけ入れていて素敵だったからだ。
短くして、毛先だけ赤くしよう。
そう決めて、美容院へ。
なにしろ10年ぶりくらいの美容院だったので、勝手が全く分からす、切ってくれたお兄さんにはびっくりされた。カタログを見せてもらい、まさに最初の画の女の子のような髪型にしてもらった。色はあまり目立たない程度に赤くなった。どちらかというと赤茶なのだけど、光の加減で赤だ、と感じるくらいには赤い。今度はもっと赤くしたいし、もっと少年のような髪型にしたいと考えている。それはまた夏ぐらいの予定だけれど。

髪を切った日は、この冬一の寒い日で、出たばかりの襟足に容赦なく北風が吹いていた。物凄く寒くて、切る前もちょっと止めようかと思ったくらいだった。でも全く後悔はない。軽くなったのは髪の毛の重さだけではない気がした。

髪を切って最初の出勤日、他のスタッフにも概ね好評だった髪型。もう少し短くするのかと思った、もっと赤くするのかと思った、とのお言葉をいただいたが、それはもう私にとってはほぼはじめての美容院というハードルが高すぎたために、きちんと伝えられなかったせいだ。
お客さんに、一度レジを終えて離れたのに戻ってきて
「その髪型は何というんですか」
と聞く人がいた。すみません、髪型に詳しくないので「たぶん、ボブ、、、です」としか答えられなかった。あとでかわいい後輩ちゃんに聞いたら「前下がりボブ」というのだとか。ひとつ賢くなったなあ。

染めてから一週間になるけれど、切ってくれた美容師さんの言った通り赤が少し落ち着いて、自然な赤茶になってきた。目の端で日の光に当たった髪の毛は、私の思った赤で、そのたびにうれしくなる。
それにしてもやっぱり本職の人の技術はすごいなと思う。
前にこれくらいの長さにしたときは先端が跳ねるし、うっとおしいしだったけれど、まったくそんなことなく、快適に過ごせている。
あんなに時間をかけて、手間をかけて、髪型を整えてくれるのにこちらが払う金額はあれでいいんだろうかと思うくらい、いい時間だった。
みんなが美容室に行く気持ちが少しわかった気がする。
ほぼはじめてだったので、合う合わないは正直よくわからなかったけれど、次に切るときも美容室に行ってみようと思う。今度はおしゃれ番長のスタッフさんおススメのお店に。

次男が、おかっぱ頭なのだけど、「母とおそろい!」とかなり喜んでくれたこともよかった。髪を切って最初の反応が兄弟そろって「すごく可愛い!!」で、次の日には祖母や夫にまで「母の髪型気づいた?すごく似合ってるよね!」と褒めるよう促すことまでしていて、なんて子供たちだ、、、とびっくりした。
そしてなぜか髪を切ったことで幼稚園のお母さんにまで話しかけられた。
髪の話って、ふりやすいのだろうか。あまり他のお母さんと話すことがなかったので、ちょっとおっかなびっくりで話してしまったけれど。

もっと赤にも、青にも、みどりにもしてみたい。
そのときの私もきっとこんななんだか楽しい気持ちで日々を送ることだろう。そうであるように、その日までまたがんばろうと思う。



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