リバーシブル

満員電車で扉の近くのセーフティゾーンに立って、スマホをいじっている男がいた。
乗り降りの時にいじるのをやめず、「すいやせん、あっしみたいなもんがこのゾーン確保して」の顔もしていない。
乗る時、その人が前に抱えていたリュックに当たってしまった。
ガンを飛ばされる。
軽く会釈して、「すいません」と言うが、心の中ではガンを飛ばし返す。
それでも人には人の事情があり、何か急を要する連絡かもしれないので、「そんなことでムカつくな」と己を律する。
中程まで進む時に、そいつのスマホの画面がチラッと見えた。
ブロックを崩して王様を救出するゲームをやっていた。
人がひしめき合う満員電車の、しかもセーフティゾーンで。
なんとかして制裁を与えたかったが、王様の救出に失敗していたので、今回は不問とした。

そのあと、電車を降りて駅の階段を上がっている時に、右ふくらはぎが攣ってしまい、咄嗟に横を歩いていた男性の肩掛け鞄を掴んでしまった。
完全にこちらの粗相であるし、ムッとさせてしまったので、「ごめんなさい」と謝る。

人は誰しも、被害者にも加害者にもなり得る二面性があると思った。
現実は日々トラブって、たまに悔やんだりしてる、そんな、reversible days

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