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コラムの裏側 暗闇のシャンパンファイト
https://the-ans.jp/photo/367096/
コラムの裏側。ついに決勝戦、最後のコラムとよりAnother Story.
喜怒哀楽の全てが詰まった80分だった。私のコラムで試合を語る必要はない。目の前に起きたことをここに残したい。
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ノーサイドの笛とともに、デクラークを狙った。好きな選手を追いかけよう、79分ごろからずっとそう思っていた。その時が来た。
ボールの行方を追いかけながらもファインダーの片隅のデクラークを見つめた。ニュージーランドのペナルティー、主審の笛が鳴った。デ、デ、デデデ、デクラークは?!
その瞬間、ファフ・デクラークは立ち尽くしていた。拳を上げるでもなく、喜びを爆発させるわけでもなく。世界一地味な瞬間だった。
写真を見返しても、画にはなっていない。優勝の瞬間として紙面では使えないだろう。ただこの立っているだけのファフ・デクラークこそ、至極を尽くしたこの戦いを表すものだったのかもしれない。
試合後の表彰式後、ピッチサイドのフォトグラファーの前に「CHAMPION」の看板が担ぎ込まれた。W杯を締めくくる歓喜のシャンパンファイトが始まる。これで全てが終わる。この68日間におよぶ取材のハイライトだ。
南アフリカの選手やスタッフが看板の前に集まる。コルビが激しくシャンパンを振った。カウントダウンが始まった。
3、2、1・・・
その瞬間、スタジアムの照明が落ちた。
「えっ!?」
その瞬間、色とりどりの花火がスタッド・フランスの上空に打ち上げられた。ピッチに降り注ぐわずかな閃光が歓喜のスプリングボクスを照らす。スタジアムの明かりは落ちたまま。待ち望んだ歓喜の瞬間は暗闇の中だった。
100人近いフォトグラファーたちが叫ぶ「NoooooooooO!」その声も虚しく。思い描いていたハイライトは泡と消えた。
大会のオフィシャルフォトを担っていたGetty Imagesのフォトグラファーが運営担当に激しく詰め寄っていた。私はただただ立ち尽くしていた。デクラークとは真逆の感情で。
すべての取材を終えて、アパートへの帰路についた。言葉が出ない。達成感と失望感が入り乱れ、自然と涙が出た。決勝トーナメントに入り、2人で共同生活しながら取材にあたった先輩フォトグラファーのAさん(過去)は笑って言った。
「悔しいだろ?また来いってことよ。W杯に」その一言に救われた。
笑ってしまった。そういうことかもしれない。悔やんでも時間は戻らない。暗闇のシャンパンファイトは「次へ」進むための必然だったのかもしれない。
FIN
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