見出し画像

「高齢者になることが待ち遠しい社会」をつくり出す大学生起業家。LibertyGate(リバティゲート) 菅原魁人

秋田市に拠点を置く株式会社LibertyGate(リバティゲート)は、高齢者や家族から依頼を受けた大学生が自宅へ訪問し、身近な困りごとを解決するサービス「アシスタ」を展開しています。

画像8

<「庭の雑草とり」、「話し相手」、「病院への付き添い」など、多種多様な依頼に対応する>


画像9

<アシスタに登録している大学生は約150名(2021年12月現在)>

※アシスタ利用の流れ
①電話・メールで大学生に依頼したい内容を伝える(依頼者)
②依頼内容の詳細を確認(アシスタ運営)
③大学生が高齢者の自宅などを訪問

アシスタは介護保険ではカバーしきれない高齢者の要望にも応えられることから、"新しい高齢者支援の形"として注目を集めており、依頼数は多い月で350件に上ります。

このサービスを運営しているのは、現役の大学生でした。

画像1

《名前》菅原 魁人(すがわら かいと)
《年齢》22歳
《出身》秋田市 
《経歴》秋田大学国際資源学部4年生。公益財団法人あきた企業活性化センター主催「あきたビジネスプランコンテスト2019」でヤングビジネス賞を受賞。2020年7月、「高齢者になることが待ち遠しいと思える社会」を理念に掲げ、株式会社LibertyGate(リバティゲート)を設立。県内では珍しい大学生起業家として注目を集めている。

今回のあきたびじょんBreakでは、菅原さんが起業したきっかけや、経営者として普段から心掛けていることなどを取材しました。

現役大学生が会社設立!

画像11

― リバティゲートを設立したきっかけを教えてください。

中学生の頃に通ってた塾の塾長や祖父の兄弟など、身近に経営者が多かったのがきっかけです。みんな輝いて見えて、どこか違う世界にいるんじゃないかと思い憧れを抱いていました。

画像3

<菅原さんが拠点としている秋田市内のシェアオフィス>

― 在学中の起業、不安はありませんでしたか?

そんなになかったです。やるなら早いほうがいいと思っていましたし、大学卒業後もサービスを運営し続けたいと思っていたので。とにかく、「卒業までに軌道に乗せればいいだろう」って気持ちが強かったですね。

「起業しよう!」と思ったのが大学1年生の冬でした。何をしようかと考えたとき、"自分ごと"の課題をビジネスで解決するのがいいんじゃないかって思ったんです。それだったら自分が顧客にもなれるし、問題や課題を見つけやすい。そこで、高齢者を対象としたビジネスを始めようと考えました。

― 「高齢者を対象としたビジネス」は"自分ごと"だった?

普段の生活のなかで、買い物袋をぶら下げてつらそうに歩いているおじいちゃんおばあちゃんをよく見かけます。それを見て秋田には、高齢者ができないこと、不便に感じることが多いと気が付きました。さらに自分の親など、身近な人もいつか高齢者になるんだって考えたら、「このままでいいのだろうか?」と思うようになりました。

「学べる現場」で人材確保

画像2

― アシスタで活動する学生をどうやって集めたのか気になります。

まずはSNSを使って募集を始めました。SNS以外には、学生同士の紹介もありますね。最初は秋田大学の学生だけを募集していたのですが、依頼数が増えてきて、カバーしきれないエリアがでてきたので、だんだんとほかの大学の学生にも参加を呼び掛けるようになりました。

― 「高齢者を支援するサービス」、学生にはハードルが高そうです...。人材確保は大変ではなかったですか?

実は、そこまでではありませんでした。現在活動している学生の半数以上は、医療福祉分野を専攻していて、学校で実習をするうちに「将来のため、もっと高齢者のことを知りたい」、「もっと高齢者と上手にコミュニケーションをとれるようになりたい」と考えて参加してくれた人もいます。大学の外で高齢者とコミュニケーションをとれるアシスタは、医師や看護師などを目指している学生にとって「学べる現場」になっているんです。

画像11

<高齢者にパソコンの使い方を教えることも>

実習の医療現場で高齢者と関わる機会はあるけれど、高齢者のリアルな生活に関われる機会はめったにありません。そんな貴重な体験ができるから、比較的スムーズに人材を確保できたのだと思っています。

設立から1年

画像4

― どのようにしてサービスを宣伝しましたか?

サービスを始める前、リアルな課題を知るために高齢者へ「困ってることはありませんか?」と街頭インタビューをしたんです。そこで必ず連絡先をもらうようにしていたので、解決できそうな課題があったら、僕から連絡してインタビューした高齢者にサービスを利用してもらいました。最近は高齢者ご本人だけでなく、ご家族からも依頼が来ます。

ほかにも高齢者が集まる地域のコミュニティでチラシを配ったり、福祉事業所のケアマネージャーさんにサービスを案内したりするなどして、福祉関係者にもサービスの周知を図っています。また、「病院の付き添い」の依頼では学生が診察室まで同行する場合もあるので、そこでお医者さんがアシスタの存在を知り、病院から直接依頼が来ることもありますね。

画像5

― 会社を設立して1年経過しましたが、どのようなやりがいを感じてますか?

アシスタを何度も利用されている方には、とても喜んでもらっています。週に1度、学生が自宅にやってくるのを楽しみにしている方もいて、サービス利用後に感謝の電話をくれたりして...。やってよかったな、と思っています。

高齢者の課題を解決したい!と思って始めたサービスですが、始めてみればご家族にとっての課題(家庭内の課題)の解決につながっていることにも気付きました。高齢者を相手にする他の分野の方たちにとっても、プラスになれていることにうれしく思います。

― 運営する中で難しいと思ったことは?

高齢者に対応する学生のクオリティーを担保することです。ありがたいことに今までクレームはありませんが、今後サービスを拡大していく上で重要になる部分だと思うので、採用時の面接やマニュアルの整備をしっかりと行い、学生をマネジメントしています。

若い時の苦労は買ってでもせよ

画像7

― 今後のビジョンを教えてください。

「高齢者になることが待ち遠しいと思える社会」をビジョンとして掲げているのですが、アシスタに来る依頼が毎回同じであれば、不便が続いているということです。そのため、ビジョンに向かうには、高齢者の不便をなくすという、根本的な解決をする必要があります。

例えば、介護人材は将来、かなりの人数が不足するというデータがあるので、人材不足を解消するため、高齢者を支援しようと思う人の「入り口」をもっと広げたいです。健康寿命を延ばすためには食も重要なので、自分たちのプラットフォームを使って商品のテストマーケティングをしてもらい、高齢者のためになる良い商品を作ってもらうなど、間接的でもいいので活動を通して、ビジョンに向かっていけたらなと考えています。

― 最後に、起業したいと思う若者にメッセージをお願いします!

僕は会社を設立するまで、特別な知識や資格はありませんでした。なので、行動するしかなかったんですよね。行動していく中で課題が見えて、そこで本を買ったりアドバイスをもらったりして、ここまでやって来ることができました。まずはアクションを起こすことが大切かなと思います。

画像7

「若い時の苦労は買ってでもせよ」ということわざがあるように、僕は苦労を積極的にするようにしています。苦労をすることはつらいですが、苦労の積み重ねが知識や経験値となり財産になると思うので。

物事を自分の価値基準だけで判断した場合、自分が想定した以上の結果は見込めません。なので僕は、どんなに嫌なお願いでも「イエス」と答えるようにしています。その結果、苦労することもありますが、そこで得た経験も人生においてプラスになると思っています。まだ体力があるので、若いうちにできることをしておきたいですね!

【株式会社LibertyGate(リバティゲート)】
《住所》秋田県秋田市中通5丁目5-29
《TEL》018-853-4639

【取材・文:秋田ブロガー兼YouTuber じゃんご】https://dochaku.com/

県公式Facebook、Twitterにも取材の様子や裏話を掲載しているので、よろしければご覧ください。
【県公式Facebook】 https://www.facebook.com/pref.akita/
【県公式Twitter】   https://twitter.com/pref_akita