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ゴマフアザラシ飼育係のYouTubeが大人気!その理由を徹底取材してきた。男鹿水族館GAO 柿添涼太朗

突然ですが、男鹿水族館GAOに公式YouTubeチャンネルがあることを知っていますか?このチャンネルでは、GAOの人気者でもあるホッキョクグマをはじめ、ゴマフアザラシ、ペンギンなどの生態や飼育の様子が配信されています。

中でも人気の動画は、アザラシの赤ちゃんの成長記録。

ゴマフアザラシの成長過程をYouTubeで配信しているのは珍しく、自宅からでもその様子を見られることから人気となりました。

2020年3月25日に産まれたゴマフアザラシ・あんずの成長記録は、なんと翌日からYouTubeで配信。執筆時(2020年10月13日)には、成長過程を収めた動画が43本も配信されています。

このYouTubeを手がけているのは、神奈川県出身の柿添さん。

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《名前》柿添 涼太朗(かきぞえ りょうたろう)
《生年月日》1992年9月4日
《出身》神奈川県相模原市
《経歴》「東京コミュニケーションアート専門学校(ドルフィントレーナー専攻)」卒業後、「名古屋港水族館」のベルーガ(シロイルカ)飼育担当となる。2018年に「男鹿水族館GAO」に活躍の場を移す。現在はゴマフアザラシ、ホッキョクグマ、ペンギンの飼育を担当するほか、YouTube・Twitterを活用した情報発信にも携わる。

柿添さんがGAOへ来た当時、GAO公式YouTubeチャンネルの登録数は300人程度でした。しかし柿添さんが担当してから数ヶ月で、1万人以上登録数が伸びています(執筆時は登録数約1万2千人)。

今回は飼育係でありながらYouTubeでの動画配信も担当する柿添さんに、「YouTubeを担当するようになったきっかけ」や「動画が人気の理由」を聞いてきました!

<ざっくり!柿添さんに質問したこと>
①YouTubeを担当するようになったきっかけ
②飼育係が発信する"強み"とは?
③これから発信したいこと・企画していること

飼育係が発信しても絶対面白い!

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― YouTubeにアップする動画の撮影や編集は、柿添さんが行っているんですか?

動画の企画を考えるのは、主にその動物の飼育係ですね。撮影は僕がすることが多いですけど、他のスタッフに協力してもらいながら...という感じです。編集は僕が全て担当しています!

― 動画編集の知識がもともとあったから?

全然なかったです(笑)
ここに来て初めて編集ソフトに触るという状態でした。撮影・編集も仕事の一環としてやっていますが、始めた頃はとにかく時間がかかって大変でした。動画の作成に力を入れすぎると飼育がおろそかになってしまわないか心配で、あまりこだわった編集をせず、視聴者に伝わりやすいよう工夫しています。

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<ゴマフアザラシ・あんずの誕生を機に、柿添さんがYouTubeに携わるようになった 写真:2020.3.26のブログより、誕生直後のあんず>


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<現在、特に配信数が多いのがホッキョクグマ、アザラシ、ペンギン。魚類はねらって撮影できるシチュエーションが少なく完全に水中のため、撮影が難しいと感じているが、魚類担当のスタッフと一緒に配信数を増やしていきたい>


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― 以前までは別の水族館で働いていたんですね。

専門学校を卒業後は、名古屋の水族館でベルーガ(シロイルカ)の飼育係をしていました。それはそれで楽しかったんですけど、”それ以外”の事にも興味がありました。

― ”それ以外”とは?

動物たちの魅力を発信することです。
名古屋の水族館では主に動物へのエサやり・掃除といった飼育管理業務がメインでした。当時は、「動物の知識や生態を一番知っているのは飼育係だから、僕たちが発信しても絶対面白い!」という考えを抱きながら働いていました。

ある時、男鹿水族館で職員を募集していることを知りました。これまでのスキルを活かしつつも新しいことに挑戦してみたくて、5年以上勤めた水族館を辞めてここに来ました。

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<「挑戦的なことに前向きなのがGAOのいいところ」と柿添さん。空いた時間があれば、どうしたら新しいことができるかを常に考えているという>


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<水族館で働きたいと意識したのは進路に迷っていた高校生の頃。水族館の飼育係がトドとコミュニケーションをとり合う姿に憧れを抱き、この業界に足を踏み入れた>


「伝えきれない部分」を伝えたい

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― 柿添さんがYouTubeを担当してから登録数が1万人以上も伸びていますね。動画を作るうえで心がけていることはありますか?

1つは、動物をなるべく近くで撮影すること。
お客様が普段近づけない距離で撮影することで、来館時には見られない新鮮なGAOを伝えられると思うので。近距離で動物の姿を捉えられるのは飼育係の強みでもありますしね。

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<主役は飼育係ではなく動物。動物を積極的に撮影し、説明を入れる際は飼育係の”声”ではなく”テロップ”で補うよう工夫をしている(写真はゴマフアザラシの爪を切っている様子 YouTubeより)>


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<ゴマフアザラシの切った爪を紹介する様子>


― ほかにもYouTubeで意識していることは?

なるべく新しい知識を伝えるようにしています。
時折、「この動物、かわいいでしょ?」といった、見た目にスポットを当てた動画も作ります。だけどそれだけじゃ面白くないので、動物の生態や飼育する上での工夫など、飼育係ならではの目線も紹介するようにしています。

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― YouTubeで魅力を発信することで期待していることはありますか?

動画を見て、男鹿水族館に足を運んでいただけることが理想です!先日、実際に動画を見て来館してくださった方が「見てます!」って声をかけてくださった時はとても嬉しかったですね~。

飼育係は観覧エリアで動物をいつも説明できるわけではなく、飼育スペースにいる時もある。だから直接お客様に魅力を伝えられる時間って限られているんです。YouTubeではそんな「伝え切れない部分」を発信できたらなと思っています。

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<柿添さんお気に入りの展示は「秋田の森と川の魚」。ホッキョクグマが見どころだと思われがちだが"秋田ならでは"の展示も魅力的だという>


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<秋田の魚・ハタハタの知られざる生態や秋田に根付いている食文化、漁の歴史について詳しく学べる展示もある>


動物たちのためにできること画像15

― 飼育係としての役割をこなし、かつ動画の撮影と編集...仕事量ってかなり多くないですか?

多いですよ(笑)
だけど僕は動物が好きで、魅力を発信したくてGAOに来ているので。大変ですけど、この先もどんどん新しいことに挑戦していきたいです!

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<取材ではペンギンのエサとなるアジ、シシャモを準備している様子を見学させてもらった>


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<エサとなる魚は常に冷凍保存。解凍するとビタミンが溶け出して少なくなるためビタミン剤を詰める作業が欠かせない>


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― この先どんなことに挑戦していきたいですか?

僕は飼育係のひとりですが、最近は動物を育てることだけじゃなくて、動物の将来のことも考えるようになりました。育てることだけが仕事じゃないなって。

そこで取り組みたいのが、環境問題の発信。

例えばホッキョクグマは、地球温暖化や北極圏の環境悪化などの影響で、個体数が減っていると見られています。今後はそういった問題をみんなで考えるきっかけをつくりたいですね。

SNSでの発信は、そのきっかけづくりの一つの手段にすぎませんが、他に
も動物の将来のためにできることがあれば、全力で取り組みたいと思っています。

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【男鹿水族館 GAO】
《住所》秋田県男鹿市戸賀塩浜壷ケ沢93
《連絡》TEL:0185-32-2221
《HP》http://www.gao-aqua.jp/

【取材・文:秋田ブロガー兼YouTuber じゃんご】https://dochaku.com/

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