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「お米屋さんのお米、量販店と何が違う?」"五ツ星お米マイスター"に聞いてきた!お米の専門店 平沢商店 平沢敬太郎

あなたの住む町に、お米屋さんはありますか?秋田市大町には、平沢商店というお米屋さんがあります。

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昔は食糧管理法により、お米を販売できるのはお米屋さんに限られていました。しかし1995年に流通規制が大幅に緩和され、スーパーなどでもお米を取り扱えるように。これにより「ただ商品を並べるだけ」という従来の販売方法ではお米が売れにくくなり、それに伴いお米屋さんも減少していきました。

「量販店で売られているお米と今もなお存続するお米屋さんのお米、何が違うんだろう?」。そんな疑問を抱いたあきたびじょんBreak取材班は、「五ツ星お米マイスター」であり、平沢商店5代目の平沢敬太郎さんにお話を伺いました。

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《名前》平沢 敬太郎(ひらさわ けいたろう)
《年齢》35歳              
《出身》秋田県秋田市
《経歴》高校卒業後、花き生産者を目指し園芸を学べる専門学校へ進学。その後、県外で花き栽培に従事したほか、ホームセンターで園芸部門を担当する。2012年にAターンし、実家である平沢商店で5代目として勤務。2019年には"お米の博士号"とも呼ばれる「五ツ星お米マイスター」の資格を取得した。

米屋のあるべき姿

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― 「あきたこまち」をはじめとした、さまざまな品種がそろってますね!

平沢商店で取り扱っているお米は、20種類以上あります。玄米の量り売りもしていて、店頭で精米・販売するほか、5kg以上ご購入の方には無料配達も行っています(※お店から車で片道30分程度の地域まで)。

― お米はどうやって仕入れているんですか?

"おいしいお米"を皆さんにお届けするため、長年付き合いのある契約農家さんや、農協などを通して米作りにこだわりのある生産者さんのお米を仕入れています。

― 農家さんとは、どのような関わり方をしていますか?

お米を仕入れるやりとり以外にも、たびたび田んぼへ足を運び、その年の生育状況、栽培の工夫、病害虫対策を話し合うこともあります。

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生産現場を直接見ることで、お客さまにお米の生産方法や育った環境を詳しく紹介できますし、農家さんには「お客さまが『おいしかった』って言ってたよ」など、消費者の声を届けることができます。時にはお客さまの声が、農家さんへのアドバイスにもなったり。米屋は、消費者と農家との「橋渡し役」であるべきだと思っているんですよね。

お米屋さん直伝!おいしいご飯の炊き方

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― お米のプロの敬太郎さんが思う、"おいしいお米"が気になります。

硬さ、軟らかさ、粘り気など、人によっておいしいと感じる基準は違うので、人それぞれかと。日本酒の辛口・甘口で好みがあるのと同じですよね。ですが、僕が個人的に好んでおいしいと思って食べているのは、しっとりとしていて、どんなおかずにも合うお米。品種でいえば「ひとめぼれ」ですかね~。

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<店内には「粘り」「軟らかさ」「硬さ」「粒感」が一目で分かる、オリジナル品種別チャートが掲示されている>

― 好みは人それぞれだということですが、初めて来店された方には何をおすすめしていますか?

「おすすめのお米はどれですか?」と聞かれたときは、当店オリジナル商品の「福よ香(ふくよか)」を紹介しています。農薬と化学肥料の使用を通常の半分以下に抑えた「減農薬・減化学肥料」で栽培した、特別栽培米あきたこまちです。大仙市の契約農家さんと一緒にこだわり抜いて作った自信作です。

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よかったら「福よ香」、土鍋炊きで食べてみませんか?普段は店内での試食はしていないんですけど、せっかくなのでぜひどうぞ!

― いいんですか!?ぜひ試食させてください!!

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<カップにざっくりとお米を入れ、箸などですり切る。びっしり入れすぎないのがポイント>

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<最初にお米を手早く洗う。その後、水を張ったボウルの中で30回ほどかき回して研ぎ、2~3回すすいで終了。水が透明になるまで研いでしまうと、お米本来のうま味がなくなってしまう。研いだ後は、十分に浸水させる(夏は約1時間、冬は約2時間)>

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<水の量は、お米の体積(容積)の1.2倍。またはお米の重さの1.5倍>

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<土鍋で炊く場合、まずは沸騰するまで強火にかける。沸騰後すぐ弱火にし、湯気が弱くなったら10秒間強火にした後、火を止めて約20分蒸らす>

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<炊き上がったら、しゃもじで切るようにほぐす。余分な水分を飛ばすことで艶と歯応えが出る>

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<土鍋ならではのおこげがついたご飯に>

― いただきます...ん~おいしい!軟らかくて上品な味わいです!

それはよかったです!「福よ香」は減農薬・減化学肥料で栽培する分、収穫できる量が少ないのですが、その分、味わい深いお米に仕上がっています。

ー それこそ、2022年にデビューする「サキホコレ」も土鍋で食べてみたいですね~。

きっとおいしいと思います!試作段階のサキホコレを試食したのですが、炊き上がると粒が大きく弾力があり、つやつやしていました。ちょっぴりいいことがあった日や、家に友人を招いた日などに食べる、特別感のあるお米としてぴったりだと思います。

父の背中を見て

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― 敬太郎さんは、最初から平沢商店を継ごうと考えていたんですか?

いつか継ぐんだろうなとは、頭の片隅で思っていました。けど親は、無理に継がなくてもいいと言ってくれた。流通規制により米屋しかお米を売れなかった時代ではなくなり、継げば苦労すると分かっていたからの言葉だったんだろうなと思います。

そんな米屋の存続が危ぶまれる状況の中、メディア露出を増やしてPRを積極的にしたり、ほかの米屋と差別化するため工夫をこらしてブレンド米を商品化したりするなど、努力して平沢商店を守ってきたのが4代目の父でした。その背中を見て、「自分の代でお店をつぶしてしまうときっと後悔するな」と思ったんです。

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<4代目の敦(あつし)さんが商品化したブレンド米「技あり合わせて一本!」は、単品では出せないうま味が特徴>

さらに3代目の祖父が体調を崩し、体力的に厳しくなってきたところで、東日本大震災があって...。当時、僕は宮城県のホームセンターに勤めていたんですけど、ホームセンター周辺も被害にあったりして。「そろそろ秋田に帰る時かな」と感じ、家業を継いで店に立つことにしました。

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― 米どころの秋田でお米を売るプレッシャーはありませんでしたか?

よりお米のことを知っていなければならない立場ですから、最初は不安でしたね。なので、同業者と情報交換をしたり、農家さんのところに足を運んだりして、常に最新の情報を入れるようにしています。もちろん父からも、精米のこだわり、精米機の使い方、ご飯の炊き方など、多くのことを学びました。

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量販店とは何が違う?

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― 量販店と平沢商店で売られているお米の違いはどこにあるのでしょうか。

違いは2つあります。
1つめは、信頼できる生産者さんから仕入れたお米を、食味計で繰り返し測定し、試食を重ね、さらに厳選していること。
そして2つめは精米のレベルですね。お米は白くしすぎるとうま味のないご飯になってしまいます。平沢商店では、米粒の表面にあるうま味層を残すように精米し、お米本来のおいしさを生かしています。また、品種特性だけでなく、その日の気温や湿度、お米の保管状態によっても精米の加減を調整しています。こだわった精米をしている分、品質では絶対負けていないと自信を持っています!

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― 食の西欧化、多様化などに伴いお米の消費量も減っています。この現状をお米屋さんとしてどう捉えていますか?

少し言いにくいですが、近年、炭水化物を抜くダイエットが話題となり、お米が少し敬遠されがちなのが残念だなと感じています。60年前の日本人は今の倍近くのお米を食べていましたが、昔はメタボや生活習慣病といったものはありませんでしたし...。

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そのほか、食事において、おかずにこだわるのもいいですが、毎日食べるお米にこそスポットライトを当ててほしい!という願いもありますね。最近では自宅で過ごされる方も多くなり、お米に対する関心度は少し上がったんじゃないかなと感じています。

― 平沢商店の5代目として、敬太郎さんのビジョンを教えてください。

量販店では価格競争のため、低価格のお米のニーズが大きいです。ですが平沢商店は、価格よりも品質重視というスタンスを守っていきたいです。

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ミッションを達成するためには "お米のストーリー" を消費者に伝える努力が大切だと思っています。例えば「標高の高い棚田で作られました!」「白神山地の地下水で育ちました!」という "産地の環境" や「減農薬にこだわって作っています」といった "生産者の努力" などなど。

― イベントや学校では、「ごはん教室」も行っていましたね。

ストーリーを伝える取り組みとして開催し、また、ご飯の栄養価や正しい炊飯方法、品種による食感の違いなど、お米のすばらしさを伝えています。今のご時勢では難しいですけどね。

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このような活動を続けていくことで、「この料理にはこのお米」という、日によって品種を選ぶくらいこだわりのあるお客さまが増えてくれたらうれしいです!お客さまが望むアドバイスをするなど「ただお米を売る店」ではない、唯一無二の存在を目指したいと思います。

【お米の専門店 平沢商店】
《住所》秋田県秋田市大町5-7-18 
《問い合わせ》TEL:018-862-4032
《営業時間》8:30~19:00 ※定休日:日曜・祝祭日・年末年始
《HP》http://www.umaiokome.com/

【取材・文:秋田ブロガー兼YouTuber じゃんご】https://dochaku.com/

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