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木が好きすぎる!わがまま家具職人の楽しいものづくりが地域を変える。HOLTO 布田 信哉

JR鷹ノ巣駅前を歩いていると、木の温かさを感じるおしゃれなお店が目に留まります。

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ここは2017年にオープンした「HOLTO(ホルト)~cafe&gallery~」。オニグルミの木をふんだんに使った店内は、まさに癒やしの空間。連日、地元の方や観光客が訪れる人気スポットとなっています。

そんなカフェに併設しているのは、たくさんの木材が並ぶ工房。

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北秋田市出身の布田 信哉(ぬのた しんや)さんが工房のあるじです。布田さんはオーダー家具や木製雑貨を作る職人で、全国から注文された商品をこの場所で作っています。

今回、あきたびじょんBreak取材班は工房におじゃまし、布田さんに「家具職人としてのこだわり」や「まちおこしに対する考え方」を伺いました。

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《名前》布田 信哉(ぬのた しんや)
《年齢》39歳
《出身》秋田県 北秋田市
《経歴》2016年、北秋田市にオーダー家具・木製雑貨を扱う「HOLTO(ホルト)」を設立。無垢(むく)の木にこだわり、木の持つぬくもり、自然の作り出すデザインを大切にした商品は、全国各地から注文が絶えない。2017年にJR鷹ノ巣駅前にオープンした「HOLTO ~cafe&gallery~」は、地域の憩いの場として愛されている。2018年には「レクサス匠プロジェクト」で、秋田県代表の家具職人として次世代の匠に選出された。

鷹巣の家具職人

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― 布田さんは昔から家具職人を目指していたんですか?

木に携わる仕事をしたい!って、小学生の頃から思ってましたね。でも最初は家具職人じゃなく、宮大工になりたかったんです。昔ながらの手法で木を自分の手で削ったり、加工したりして、形を組み上げていく...そんな大工さんを見て、かっこいいなって。

「木が好き」というのが根本にあったので、宮大工を諦めたというより、行き着いた先がここだった、という感覚がありますね。

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― 家具や雑貨をつくる技術は、どうやって学びましたか?

まず高校卒業後、図面の描き方を知りたくて、宮城県にあるデザイン専門学校に進学しました。その後、専門技術を学びたかったので、秋田に帰ってきて地元の木工所で1年間、合板の技術を学びました。

あとは細々と個人で活動していたので、修行経験などはありませんね。基本は全部、独学です。

それからは今と全く違う仕事をしながら、趣味感覚で友達へ木の雑貨や椅子を作ってプレゼントしていたのですが、口コミで徐々に注文が入るようになってきて。結構注文が増えてきたタイミングで、そろそろ起業かなと思い、HOLTOを設立しました。

自他共に認める「わがまま職人」

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― HOLTO設立後は、どんな注文が多いですか?

特に多いのは、ダイニングテーブルなどの家具ですね。全国から注文が来ていますが、最近では地元からも多くなってきました。いろんな注文がありますが、木であればできないものはないと自負しています。木が相手ならなんでもやりますよ!

― 使用している木にこだわりはありますか?

ぬくもりが伝わる、自然な状態の木を使うようにしています。使用する木のほとんどは広葉樹です。広葉樹は、硬いから削りがいがあるし挑戦的。強度もあって長持ちするので、好んで使っています。

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<木材は高い乾燥技術を誇る、藤島木材工業(北秋田市)から仕入れることが多い>


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<注文が入ったらスケールの小さい模型を作り、依頼主と共有する。「図面だと伝わりづらいから」という布田さんの心遣いが感じられる>


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<図面は引かず、自分の頭の中にあるイメージを独学の知識と経験で表現していくのが布田流>

― 布田さんのように、こだわりを持っている方からの注文も多いのでは?

そうですね。注文していただくのはありがたいですが...。僕は"わがまま職人"で、「誰かがデザインした物を作りたくない」という考えがあるんです。誰でも作れる家具じゃなく、自分だからこそできる、面白くて挑戦的な家具を作りたいんですよね。なので、内容によっては「作りたくないです」と、はっきり言うことがあります。

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― 木工の技術は独学で身に付けたとのことですが、布田さんならではの技はありますか?

宮大工などがよく使う「木組み」かな。他の職人さんもできる技術なんですけど、自分ほど手の込んだ加工はなかなかしないと思います。手間がかかる採算度外視な作り方なので(笑)。

また、木の特性をそのまま生かすために、接合部分に釘やビスを一切使用していません。そうした家具は、ゆがむことなく生涯使うことができます。

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<テーブルの脚の接合部分。手作業で削られている>


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<釘やビスを使わなくてもしっかりと家具が組み上がる>

「まちおこし」との向き合い方

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― 一度県外に出ている布田さんですが、「地元」に対しての思いは何かありましたか?

この地域が寂しくなっていくのを見てきたので、「いつか地元で何かしよう!」というざっくりとした気持ちは、ずっと抱いていました。

― 昔と今では、まち並みが変わっているんですね。

子供の頃とは全然違いますね。あの頃はおやじ世代が、昼間から駅前でお酒を飲んでいたりして、とにかく人通りがあって活気づいてました。

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HOLTOの設立当初から「まちおこしをしたい!」と意気込んでいたのですが、途中で「まちおこしに入れ込むのは違うな」と感じるようになりました。それから、地元の同世代の仲間と楽しいものづくりをテーマとした「TANOC(タノック)※」というグループを立ち上げました。

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※「TANOC(タノック)」とは?
北秋田市鷹巣エリアで活躍する30代の若手経営者が立ち上げたグループ。メンバーは、前列左から高杉拓磨さん(農家/山岳アドバイザー)、布田信哉さん(HOLTO)、コンドウダイスケさん(アキテッジ株式会社)、後列左から藤島新さん(藤島木材工業株式会社)、中嶋俊輔さん(シード株式会社)、柳原まどかさん・小倉大さん(コマド意匠設計室)。

― TANOCではどのような活動をしているのですか?

鷹巣発信のブランドとして、オリジナルデザインの椅子やテーブルを作り、イベントなどで販売していますが...みんな、いい意味で売ろうとしてなくて(笑)。

肩の力が抜けているというか、「まちおこしをしよう!」って強く意気込んでいないんですよね。いつからか僕も「自分たちが楽しいことをしてりゃ、誰かが続いてくれるだろう」っていう考え方につられて変わってきました。とにかく楽しんで仕事をすることが、結果的にまちおこしに結び付いていくんじゃないかって。

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<TANOCオリジナルデザインの椅子。注文を受けてから丁寧に仕上げる>


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<TANOCメンバーが北秋田市で開催したイベント「Sunny SATURDAY's」>

面白い場所は、俺たちが作るから!

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― 今後、「こんな挑戦をしてみたい!」ということはありますか?

HOLTOとしては、家具や木製雑貨をこのまま作り続けたいです。TANOCとしては、面白がって何でもやっちゃうメンバーが集まっているので、とにかく楽しいことができたらなって思います。

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― そういえば先ほど、地元の方が工房に足を運ばれてましたね!

日曜大工の相談をするため、ホームセンターより先にHOLTOに足を運んでくれる方もいます。近所のじいちゃんがここに来て、勝手に木を切ってたりすることがあるくらい身近になっているようです(笑)。地域の子供たちが遊びに来てくれるのも、うれしいですね。

― 気軽にコミュニケーションがとれるお店が地元にあるだけで、故郷の良さを感じられると思います。

そうですよね~。地元の小中学校から講演を依頼されることがあるのですが、その時は「俺らが面白いって思えるまちの下地を作るから、一度秋田を出て、また帰ってこい!」とかっこよく伝えています。口がすべって「勉強の期限は守らなくていいから!」と言ったときは、先生の顔色が変わって大変でしたけどね(笑)。

【HOLTO(ホルト)】

《住所》秋田県北秋田市材木町1-17 TANOCビル 1F
《問い合わせ》TEL:090-6782-5193
《HP》https://holto.jp/
《インスタグラム》https://www.instagram.com/holtocafe/

【取材・文:秋田ブロガー兼YouTuber じゃんご】https://dochaku.com/

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