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フィリップ・マーロウはどうにもわからない。

題名に特に意味はない。久しぶりに読んだThe long goobyeに感化されてこの文章を書いている。

少し村上春樹っぽい文体を意識してしまっているのか、自分の文章でないみたいで気持ちが悪い。

単なる深夜の考え事であり、翌朝見返したらどうということはない、つまらない記事の一つになっているだろう。

というより、元々そういうものなのだ。

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人付き合いは惑星の周回軌道のようなものだと思っていた。

遠縁になっても、きっとまたどこかで会える。今は分かり合えなくても、将来どこかで酒を酌み交わすことができる。酷い言葉を浴びせあっても、いつかは理解しあえる。

そんな巡り合わせがやってくるのだと、そう楽観していた。

でも、残念だが、実のところはそうではないのだと思う。


初めて友人と縁を切った時。僕らは分かりあえなかった。小学校以来の旧友だった。

真っ直ぐで的を得ている彼女の意見に僕は耐えることができなかった。

自分の器が小さかったからかもしれない。が、いささか彼女の「べき論」が強すぎたのではないか?という考えは今でも変わっていない。


「ああ、この人とは分かり合えない」と気づく場面の一つに、「意見を交わす時」があげられる。

意見とは、極めて恣意的で、支えとする根拠や論理を必要とする主張と一線を画すものである。

例えば、二人が同じアイスを食べた時、「このアイスは甘くて美味しいね」という一方の人と「このアイスはほろ苦くて美味しいね」というもう一方の人がいたとする。

その二人が「あ〜確かにそんな気もする」「言いたいことはわかる」のように、互いの違いを尊重しあえるならその二人は合っている、といった例はすぐに思いつくだろう。

しかし、それは「互いの違いを尊重することを良しとする」信条を持った二人の間柄だからこそ成立することであり、もし「私の意見が絶対だ!」という人が紛れ込んでは成り立たない。

ということは、「私の意見が絶対だ!」という人と馬が合うのは「あなたの意見が絶対です!」といった考えをもつ人になる。

このロジックに従うのなら、「人間関係は意見に対する価値観・姿勢」のフィット感でおおよそ決まる。


先にのべた元友人の例では、彼女は「私の意見は正しい」派の人で、僕は「まあ、そういう意見もあるよね」派の人間だった。

一見、この組み合わせはフィットしているようで、実はフィットしていない。

彼女からしてみれば、正しいはずの自分の意見が認められないことが不思議でしょうがないし、

僕からしてみれば、正しいかどうかわからない(少なくとも自分にとっての最適解ではない)意見をそのまま受け入れることに抵抗がある。

「まあ、そういう意見もあるよね」派の人間は、実のところ、「私の意見は正しい」派の人と同等程度に頑固な場合があるのだ。

一見フィットしているかのように見える二人の関係性も、長期に渡るとギクシャクし、破綻する。

実際に破綻したのが、先の例である。


彼女とは当面、いや、後生よりを戻すことはないもかもしれない。

寂しいような気もするが、実はお互いのためになっている。

不要な言い争いで、使う必要のないエネルギーを割くのは御免被りたいだろう。


”The Long Goodbye”の作中に登場する私立探偵フィリップ・マーロウも、人付き合いには苦労しているように見えた。

ミスタ・マーロウは人付き合いが下手なやつだ。わざわざ皮肉っぽい遠回しな言い方や含蓄のある言葉を残す。

要は、一言余計なのだ。

そういうところは自分に似て、少し共感した場面もあった。


そんな彼にも時折センチメンタルになる時がある。

友人…と呼べるかわからないような間柄の、テリー・レノックスを生前自宅へ招き入れた際、朝食にカナディアンベーコンとパン、食後のコーヒーを淹れてやった場面があった。

しばしの歓談と一服の後、テリーはその場を後にする。


一悶着あった彼の”亡き”後、彼の遺言を受け取ったミスタ・マーロウは、自宅に帰り、一杯余分なコーヒーを淹れてやり、タバコを一本添えてやった。

そのタバコの燃えかすがテーブルに落ち切るまでぼんやりとそれを長め、物思いに耽る。


”The Long Goodbye”はこのテリーの事件を主に展開され、ミスタ・マーロウは面倒に巻き込まれていくわけだが、どうして彼はそんな面倒に首を突っ込んだのだろうかと思わずにいられない。


律儀しか取り柄のない酒浸り浮浪者のテリーのことを、どうしてか受け入れ、一時バーに足繁く通うような仲になったのか。

巻き込まれたら稼業はおろか、自らの生命すら危なくなることをどうして進んでやろうとしたのか。

最後にミスタ・マーロウが『ジャーナル』誌に事件の真相を告発したのは、誠にテリーの無念を果たしたかったからなのか。

マーロウとテリーはしょっちゅう仲違いをしていたし、別に特別親しくしていたわけでもなかったのに。どうして。

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僕と彼女との間になかったものなのだろうか。

こんな終わった関係に思いを巡らせるのはなぜだろうか。

まだやり直せるだなんて甘いことを考えているんだろうか。

僕は別に今更軌道を違えた星同士を無理やり同じ軌道に戻したいわけでもないし、それを望んでもいない。

かといって、今後の人間関係構築に不安を覚えていないわけでもない。同じような仲違いが起こるかもしれないからだ。

しかし残念なことに、仲違いというものは起こるべくして起こるし、望もうが望むまいが関係ない。なるべくしてなったのだと、受け入れるしかない。


こんな取り止めもない話を書くのには少々、酒をあおりすぎた。

が、床に着くのは、ライムの果汁にシロップとビターをたらしたギムレットを一杯やってからでも遅くはないだろう。



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