短歌 001‐050
嘘つきの言葉の澱で眠る魚開けた口から泳げずにいる
月光を辿って僕ら彷徨った街灯の白は何故か不安で
蜃気楼渡り鳥の見る夢よ青い地平は未だ遠くにて
店先に並ぶ綺麗な髪留めよ寝床に伏した君に似合わぬ
眠る街、夜風を羽織り星を見た君の形に空気を撫でる
白い膜、掬って食べた部屋の隅 無味無臭の日々にも似てて
誰を見た鈍いレンズと煙る草フィルター越しに映した光
透明度0のラムネを飲み干した不安が肺を弾いて泳ぐ
紙の上、水彩絵の具の魚たち群れて滲んだマリンブルー
僕の声、君の途中で言い淀む 大事なとこでステレオノイズ
こんぺいとう照らして虹を手に入れる口に含めば失う苦さ、
ダ・カーポを指でなぞってふりだしへ/たった二文字が言えないでいる
指折りでお別れの日を確かめる/閉じた手はなぜか開けず
赤い糸だらけの街で絡まってこの苦しさが愛なのですね
べっぴんさん一人飛ばしてべっぴんさん飛ばされたのが醜い私
みおつくしあなたの元へ行かぬようアクアリウムで微睡む人魚
未送信メールばかりが溜まってく指先一つ押すだけなのに
起きてても眠っていても朝は来て不安だらけの夜を隠した
街灯の明かりに縋る夜の道 月の光はなぜか不安で
アナログの時計の針を巻き戻す「過去に行けたら」なんて笑って
ドーナツの輪から覗いた彼のこと甘い匂いがなぜか苦くて
「得意なの」占うからと手を握るあなたにふれるための口実
今だけは大人だからと都合よく子どもと大人を行ったり来たり
明けましておめでとうなど呟いて過ぎた昨日に目隠しをした
窓越しに反射する君うつむいて汚れたレンズ透明度0
思い出を照らす光が乱反射/別れのようなプリズムの午後
夢沿いのサナトリウムで星を見る/サナトリウムで。サナトリウムで、
水槽を嘘で満たせば苦しくて吐いた気泡が何処へも行けず
朝方のひとつ飛ばしの座席には見えぬ「嫌い」が佇んでいて
不規則に並ぶ雨音聴きながら布団で眠る7分手前
砂浜の「好き」が波間にさらわれる海の向こうの君まで届け
ふるふると星降る夜にぶるぶると繋ぐ右手が星座に見えて
号令の「右向け右」で左向く間違うフリであなたの顔を
百年に一人の君とうそぶいて作業のような恋をした
朝のない国で生まれて過ごせたら知らずに済んだ別れの夜明け
つま先で愛を伝えるバレリーナ辻褄合わせみたいなおしゃれ
顔のせい認められずに鏡拭く辻褄合わせみたいなおしゃれ
やがて来る哀しい夜に目を閉じて枯れる花火を過去から見てた
「危ない」と自分で引いた白線の内まで下がる/壁はないのに
からからと転がる缶に重なった私の影を掬っては捨てた
あなたとの隙間へできた距離感に手持ち花火で白線を引く
「久しぶり」『お掛けになった番号はーー』「あのとき私、」『ーー確認の上』
夢跡の喰い潰された残骸が宙(そら)を象る星にも見えて
追うとまた避けられるのに「それでも」と絶えず求める自動人形
苦しくて吐いた言葉が泡になり海月のようにゆらゆら揺れた
酸性の雨が染み込む鉄の街/想いは溶けて融けて流れた
今はまだ橙の中/やがて来る夜の帳を願って逃げる
不確かな心に潜むズレだけを愛せたのなら許せたのなら
目を閉じて出来損ないの夜を生む/月のフォントを崩して見てた
「永遠」の真似事をする子供らの影を疎んだ砂上の私
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