【宝塚宙組】FLYING SAPA感想、と、咀嚼しきれなかった疑問

感染症対策の一環でチケットの一般販売がなくなり、友の会会員限定で1公演1枚まで、と入手制限がついた宝塚のチケットを、友の会会員でもないライトファンの私が手に入れられるはずもなく。
そんな中、外箱を含む全公演どこかのタイミングで生配信されるという宝塚歌劇団のまさに「英断」は晴天の霹靂でした。

初演がドツボにはまた「はいからさんが通る」(東京公演のチケットももちろん確保していた)はもちろん観劇。
(眩耀の谷/Rayはチケットを持ってはいたのですが、映像で見たい内容ではなさそう…と飛ばしましたごめんなさい、劇場で見たかった!)

次はなにがあるかな〜〜と見ていたところに飛び込んできたのが「宙組・SAPA」。
上田久美子作品のお噂はかねがね、でしたが実は一度も拝見したことがなかったのと、ネット上の評判がすこぶるよかったので、とりあえずRakuten TVでポチり。

結果、とにかく超よかったです。

歌を歌っていなくても、踊りをほぼ踊っていなくても、ストレートプレイで通用する役者さんなんだと示せたこと。これは私の中では結構大きかったです。大げさな仕草や恋心を歌い上げる主題歌がなくても、感情の流れが伝わる演技、できるじゃん、という気付きがとても嬉しかった(まぁOGの方々は普通に舞台で活躍されてるので当たり前ではありますが)。

正直この演目を宝塚で上演する必要があるのか、と言われると難しいですが(ただ男女キャストでやったらアマチュア演劇になりそうな気はする)、個人的には夢夢しい理想だけではなく現実の生々しさも語れた方が、ファンの裾野を広げられると思っています。それを「現在」の話として上演すると、途端に男役の違和感が出てきてしまうのが宝塚の難しいところであり、そこを上手に回避した結果が今回の近未来設定なのかと思います。

そして、今回は説明ゼリフを説明しても違和感のない登場人物に任せた・その役回りを複数人に負わせたことで、長い説明ゼリフの印象が薄くなったのもよかったと思います。宝塚あるあるは色々ありますが、中でも大きなものの一つに、(特に大劇場での)短時間の作品に多くの登場人物を詰め込まざるを得ないが故の説明ゼリフ、があると思っていて。今回も「説明らしい説明だな」とは思いましたが、それも「役の役割」の一つだろうなと納得できる人が語ってくれたので、あまり違和感はなかったです。
脱線しますが紫藤りゅうさん、宙組異動早々際立つ美形っぷりを存分に発揮されていて…最後の方のシーンの一言に大きなメッセージ(と人間への皮肉)が込められていると思うのですが、前半の様子から打って変わって狼狽えた様子がお上手でした。これ以上はネタバレ…

そして何より、主演まかぜの男っぽさの説得力(私が最初に見たときは飛べないライナスだったのに!)、まどかちゃんの素っ気なさから滲み出る幼さと少年性(白いタンクトップ!?!?となる、素敵な二の腕)、キキちゃんの圧倒的正論を振りかざす爽やかさ(もうちょっと腹に一物持ってもいいかなぁと思ったりはした)、夢白あやちゃんの美しさと狂気(昔と現在でメイク変えてます???)。主役4人の説得力が物語を前に前に推し進めていました。娘役さん好きとしては今回の娘役2人が芯を一本通したキャラだったのも嬉しい。


ただ、色々と疑問が残る部分もありまして。考察をされている方が結構いらっしゃる気がするので、そんな人と繋がれたらいいなという淡い願いを込めて、簡単に書き記しておきます。完全なるネタバレを含みますので、まだ見ていない方は回れ右でお願いします。


①コードと生存者数
地球から出て水星にやってきた時の人数は30054人。オバクは兵士30011。タオカが記憶を塗り替えられたタイミングでコードが1追加されることを考えると、オバクの30011というコードは2つ目のコードのはず。となると少なくとも44人はコードを持たないことになる。クレーターに最初から逃げた人々はコードを持っていないのか?コードとへその緒は1対1対応になりそうなものなのに。

②素数
博士との素数のやりとりや、02・30011という素数の繋がり、オバク(089)やミレナ(307)の素数がやや唐突。特に「素数」を取り上げたことに意味はなく、ただ昔の記憶に繋がっているというだけの話なのか。

③ミンナの実験とポルンカの最後
ミレナはブコビッチの実験により全人類の思考や人格を自身の中に取り込んでおり、その「意識の中に入って」ブコビッチとオバクは会話をした。意識の中に入っていないブコビッチとオバク以外はどうなっているのか(全人類と同化したのか)。意識の中で「死ぬ」とはどういうことか。その後の世界として見せられる最後の場面では、各人が個人の人格を保った状態で出てくるが、これはミレナの夢なのか。

④ミレナはいつオバクを思い出したのか
ミレナは地球からポルンカへの宇宙旅行の記憶をいつ喪ったのか。そこでどこまでの記憶を喪ったのか。イエレナに関しては「思い出せなくてごめんなさい」という発言があったが、オバクに関する記憶は喪っていなかったのか。であればなぜ最初に兵士としてやってきた時に驚かないのか。

⑤ミレナの自暴自棄
キュリー夫人の宿で「いろんな男にちょっかいを出すミレナ」。グリープを撃ち殺したところを見ると、他の男には手を出させなかったのか。男にわざわざ近付く理由は何か(地球での最後の行動の裏返し?男性との距離の取り方を間違ってしまっている?)。


宝塚らしい夢夢しいお話も大好きですが、こんな新しいお話も大歓迎です。
次の宙組はAnastasiaとコスチュームもの(?)ですが、これも楽しみにしています。

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