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失楽園ぼっち【毎週ショートショートnote・裏お題】
7年も付き合ってれば、飽きることもある。
新しい彼女は5つ年下で、可愛くてちょっと小悪魔っぽいところがいい。カタくて真面目な菜緒とは大違いだ。
それに正直、若い子の方がいいっていうのもある。
俺は彼女との新鮮で刺激的な日々にすっかり浸っていた。
「ユウジといてもつまんない。思ってたよりお金ないし」
ある日、唐突に彼女が出ていった。ただその一言を残して。
一人残された俺は、呆然と壁を見つめるしかなかった。
がらんとした部屋の中で、失われたものの残像が俺の心を締め上げていく。
思わず傍らのスマホに手が伸びた。
『俺たち、やり直そう。俺には菜緒が必要なんだ』
遠い遠い場所から帰る電車の中で、スマホが鳴った。
――雄司から?
短いメッセージだ。驚きと共に微かな笑みが浮かぶ。
私は小さな声で呟いた。
「そう。でも私には必要じゃない」
私は彼の番号をブロックすると、電車の窓から外を見た。
辺りは一面の枯れ景色だ。
でも、まもなく春が来るだろう。
きっともう、すぐそこに。
(417字)
【あとがき】
表お題の『失恋墓地』と対にして書いてみました。
一人では生きていけない。一人でも生きていく。
同じ「ぼっち」にもいろいろあります。
ともあれ一人飲みの好きな秋しばは、声を大にして言います。
「ぼっち上等!」
*この記事は、以下の企画に参加しております。
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