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秋田柴子の東京探訪① ~秘境・東京駅を歩く〈2319字〉

事の始まりは、ある1本のツイートだった。

うおおおお、マジか!
殿が「新作落語台本」のファイナリストに!?

” 殿 ” というのは、Twitterでちょくちょく開催される『54字の物語』コンテストで使われる、makihide00さん の異名ふたつなである。
同コンテストの最終日、殿の号令により有志が参加する ” 尻しばり ” は、もはや恒例行事。ご自身も大賞を始め、何度も入賞している剛の者。
さらに私の属する無料SSマガジン『ベリショーズ』のメンバーでもある。

その殿がファイナリストになったと聞いて、私の落語好きに火がついた。
子供の頃、祖父に聞かせてもらった想い出に加えて、サライの『名人の落語』CDを夫と二人でしばらく聞き続けた時期もある。
だが長い人生で、寄席に行ったことは一度もない。

他のベリショーズメンバーも一部集結するらしいと聞き、この機会にぜひともお会いしたい、という想いが湧き上がる。
場所は東京・池袋演芸場。
これは行くしかない!と、私は拳を握った。

だがそこには大きな問題があった。例の忌まわしき感染症騒ぎである。
一時期に比べれば落ち着いたとはいえ、東京へ出かけるとなればそれなりに微妙なものがある。
とりあえずホテルは取ったものの、毎日世間の動向を見ながら悩む日々。
(同居ではないが近い身内に病人がいるので、いろいろと制約はある)

決行2日前の11月23日。この日がホテルのキャンセル期限だ。
感染者数は増えつつあるものの、自治体からの特別な制限指示は出ていない。

――行こう。

これを逃したら、いつまたこんな機会があるか判らない。日頃、リスクに対して臆病なまでに慎重な私が、珍しく決断した。

殿の晴れ舞台は25日の夜だ。
そこで初日の昼間、SSG時代からの盟友・射谷友里さんとのランチを組み込もうと企んだ。

射谷さんは公募&投稿サイト並行のスタンスがよく似ていて、かねてよりぜひ一度お会いしたいと思っていた方だ。
直前の誘いにも拘わらず、文字どおり予定をやりくりして時間を作って頂き、感謝しかない。

11月25日、当日。
何年ぶりかの新幹線のホームに立つと、忘れて久しい旅の高揚感がふつふつと湧き上がる。

と言いつつ新幹線の中では、もっぱら原稿とにらめっこだ。11月30日締切の公募の進みが遅く、初稿からひどく難航しているのである。
旅の定番、車内販売で買ったコーヒーと共に原稿と格闘していたら、あっという間に東京に着いた。結構な時間、乗っていたはずなのだが。
これでリニアなんて導入されたら、のんびり駅弁を食べている暇もないかもしれない。

さて、射谷さんとの待ち合わせは「中央乗り換え口」とのこと。変な出口から出てしまった秋しばは、当然のごとく辿り着けない。
というわけで、改札口の駅員さんに聞いてみる。

「あの、中央乗り換え口はどこですか?」
「ああ!このまままっすぐ行って、通路超えて、右にあります!」

はきはき、親切に元気よく教えてくれた駅員さん、ありがとう。

でもさ、こっちは田舎モンだからさ。
右にあるって言われたら右手に見えるところと思っちゃうよ。今いる通路の右斜め奥にある(通路からはほとんど見えない)なんて思わないよ。えーん。

さてそれでも何とか辿り着いた秋しば、きょろきょろと射谷さんを探す。何しろ、初対面である。肝心のご尊顔が判らない。
事前に聞いた目印は「バッグにつけたつば九郎」
そう、射谷さんと言えば、つば九郎。しかも途中で追加の情報が。

「薄いカーキ色のジャケット着て、青い柱の前にいます」

楽勝ですね、楽勝。らくしょう……あの人、かな?
いや、でもつば九郎がいない。
でも、カーキ色っぽいジャケットで、青い柱の前に立ってるよ?
なのに、つば九郎がいない。やっぱ違うの?
だけど、人待ちオーラ満載だよ?

ぐるぐる逡巡していると、その射谷さん(仮)の人と目が合った。

「あ!あ?ああっ!?」

お互い、意味不明な叫び声を上げる――やっぱり、ご本人だ。「つば九郎は?」と聞いてみると、バッグの内側からしずしずと姿を現すつば九郎氏。
いや、それは無理(笑)

さて無事に射谷さん(本)とお会いできたところで、ランチのお店を探して、東京駅内のだだっ広いショッピングエリア「グランスタ」を歩いて回る。何しろお昼時だったので、どこも結構混んでいて。しかもお高いお店も多いし。

それでも何とか無事に、リーズナブルなヘルシー系のお店にピットイン。サンドイッチとかサラダうどんなど、野菜を使ったメニューが豊富。
私はシンプルな生醤油うどんを頂いたけど、お洒落なだけじゃなく、ちゃんと麺にコシがあって美味しかった。ドリンク付きで1000円ぐらい。素敵。

グランスタ東京「CITYSHOP」生醤油うどん

そのお洒落なうどん(変なフレーズ)と共に、創作談義。
いつもSNS上では親しくやり取りさせてもらっているけれど、対面となると、使う言葉のひとつから迷ってふがふがするのは初顔合わせのご愛敬。

元々お会いできる時間も短かったので、店を出た後も途中まで一緒に電車に乗って話の続き。
「自分の書きたいものと、世の中で求められる内容とのバランス」
「書き続けることの大変さと大切さ」

などなど、話題は尽きない。

だが互いに次の予定があり、泣く泣くお別れの時間が来る。
本当にあっという間だった。名残惜しい気分満載で、射谷さんの乗る電車をホームから見送る。
(角度の関係で、お顔を見ることはできなかったが)
今度お会いする時は、ぜひもっとゆっくり話してみたい。

おみやげに「ひよ子まんじゅう」と「餃子ペン」を頂いた。
ありがとうございました!!


さて日が明るいうちに、旅籠ホテルのある池袋に向かうとしよう。

餃子がリアル(笑)

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