一方通行風呂【毎週ショートショートnote】

「大浴場内は一方通行でお願いします」

【一方通行】

訳がわからん。帰りどうすんだよ、着替えとか。
まさか全部脱いだ後に『注文の多い料理店』…というネタはすでに出尽くしてるみたいだから、ここでは割愛。

とりあえず服を脱いで浴室に入ると、入ってきたドアにわざわざ

【進入禁止】

体を洗っていると、目の前の鏡に

【落石注意】

「いてっ！」
広い風呂に興奮した子供が石鹸を放り投げたらしい。

洗い場を出ると

【すべりやすい】

ご丁寧にどうも、と広い湯船につかる。

せっかくだから露天風呂に行ってみると、板敷きの仕切り扉に特大の

【入るんじゃねえ】

良からぬ妄想が頭に浮かぶ。俺はあたりを見回した。
暗い。誰もいない。向こうからは女神の笑いさざめく声。

ちょっとだけなら……

俺はそっと扉を押し開け、隙間に顔を押しつけた。濛々たる湯気でよく見えない。もう少し中へ……

「はい、そこまで！」

突如、闇の中から警官が現れた。

「あんた、自己制御力が弱いですね。いかんですなあ。何にもしなきゃそのまま帰れたのに。はい、罰金ね。逃げないように署まで服とか預かるから」

【罰金が料金とはこれいかに】

ちっ、新手の点数稼ぎの仕掛けか。

「でもパクられなかった奴はどうやって脱衣所に戻るんだよ。一方通行なんだろ？」

警官は黙ってすぐ後ろの標識を指差した。

【画像オチですんません】

【あとがき】
6月末まで長編の締切に追われておりました。
既定枚数下限が200枚のところ、初稿で138枚というあるまじき事態に慌てた秋しばでございます。（締切10日前）
おかげで先週の毎ショは失礼させていただきました。今週は終わったハイテンションで文字数を無視しております。ごめんなさい。

＊この記事は、以下の企画に参加しております。