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謹製金星菌性【毎週ショートショートnote・裏お題】


木星のジュピターの元に、金星のヴィーナスから宙間宅配便が届いた。輝く箱の表には『ヴィーナス謹製』とある。

「ほう、美の女神からの贈り物とは…」

勿体ぶった呟きとは裏腹に、目尻は垂れ、鼻の下を伸ばしたジュピターがいそいそと箱を開ける。

「うわ、くっさ!!」

不気味なにおいを発する品と共に手紙が入っていた。

「このたび地球の『菌性食品』とやらを我が星でも作ってみました。なんでも菌で腐らせたり、中には菌そのものを食べるのだとか。ぜひお召し上がり下さいませ ヴィーナス拝」

見ると、白くてどろっとした固まりやネバネバした豆粒、ころりとした傘状の物体などが入っている。においは強烈だが、食べてみると意外に美味い。

「そうだ、何か礼をせねば…」

いそいそと贈り物を物色するジュピターの浮かれ具合を小惑星に住む妻・ジュノーが見逃す訳がない。

「またあんたは若い子にうつつ抜かして!」

ジュノーの鶴の一声で、金星からの菌性食品は、以後ご禁制となったそうな。
怖や怖や。


【あとがき】
ローマ神話で最高神のユピテル(ジュピター)、その妻ユノー(ジュノー)、そしてウェヌス(ヴィーナス)の揃い踏みです。
ちなみにヴィーナスが贈ってきたのは「ヨーグルト・納豆・きのこ」でした。作ったものの、実はあまり食べたくなかったのかもしれません(笑)


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