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唐揚げのない人生なんて【12/19限定・唐揚げ祭り】

ひとつの原稿が終わりまして、休憩がてらふらふらとnote を歩いていたら、フォロワーさん経由でこんな記事を見つけてしまいました。

おおお、唐揚げ!?
唐揚げについての愛を語り合うってのか!?
よし来た、いっちょ書いたろかい!!

……と一人で盛り上がっている秋しばです。
初めまして。秋田柴子と申します。
たぶん今回お読み頂く方は、お初の方も多いのではと思いまして。

さて、本題の唐揚げでございます。
元記事にもありますとおり、日本全国老若男女問わず、唐揚げの好きな方は多かろうと思います。ね?そう思いますよね?
それなのに、ですね。
ワタシは若い頃からずいぶんと哀しい目に遭って来たのですよ。
まあ聞いて下さいませ。

若かりし頃、居酒屋で飲み会なんかがありますと、もう当然というように唐揚げ頼みます。みなさん、そうですよね?
唐揚げ、鉄板メニューですよね?
ところが、しかし。

「からあげ~?柴子ちゃん、いっつも唐揚げ頼むよね~」
「好きだねえ~(冷笑)」

なに、この反応。
飲み会に唐揚げって、そんなに変?

今なら判ります。この友達は、今で言うところのいわゆる「意識高い系」のヒトたち。そういう方々にとって、唐揚げなんてのは「脂っこくて子供っぽいタベモノ」でしかないのでしょう。

そしていざ、熱々の唐揚げが運ばれてくるとですね。

アレです。

定期的に世間やSNSを騒がせる、アレ。

「レモンかけちゃうね~(しゅぱぱぱぱっ)」
「………………!!!!」

その頃はまだ、今のような ” 唐揚げにレモン戦争 ” などなかった時代。
そして「レモンをかけた方がヘルシー、体に良い」と言われていた時代。
もはや問答無用で、揚げたての唐揚げの上からレモンが絞られていたのです。

もちろん、人の好みはそれぞれ。
好きな方はレモンをかけて頂けばいいと思います。

ですが、私は嫌なのです。
元々レモンはあまり好きじゃないし、お肉のじゅわりとした甘さに満ちた旨味が、妙に酸っぱくなってしまう。そして何よりせっかくの熱々が、レモンの果汁でわずかといえども冷めてしまうのが許せない。
いったい何度、秘かな悔し涙と共にその唐揚げのなれの果てを呑みこんだことでしょうか(レモン派の方、すみません)。

それに比べると最近は「レモンをかける前に聞くのがマナー」なんてことが言われるようになって、ちょっと気が楽になります。
もっともこの年になると、飲み会に参加することも少ないですし、そもそもそんな意識高い系のお友達とはとっくの昔に疎遠になっているのでありますが。

何だか話がズレてますね。
でも、思うんですよ。美味しい唐揚げを語るのも愛なら、愛するがゆえの悲哀というのも、またあるよなって。

そんなわけでもう一つ、哀しいお話を。
でもきっと判って下さる方もいらっしゃると信じて書きます。

今さら言うまでもないですが、ワタシは唐揚げ大好きです。
家でも作りますし、最近はスーパーのお惣菜コーナーなんかで買ったりもします。「今日はちょっと楽して、お弁当でも買っていこうか」なんていう時は、やはり唐揚げ弁当に目が行きます。

ところが、しかし。
ここ最近、立て続けにまさに犯罪的とでも言うべき唐揚げに遭遇しました。

「このころも、めちゃ分厚すぎ!!!」

これ、どう思います?
もちろん、この材料高・燃料費高の時代、作る方も大変かと思います。
多少ころもでボリュームアップ、全然OKです。そう、” 多少 ” なら。

でもですね。ころもとお肉を比べたら、少しでもいいからお肉の方が多くあってほしいと思いません?死ぬほど譲って、せめて1:1まで。

美味しい唐揚げ屋さんや居酒屋さんですと、ころもはうっすいですよね。
なのにあの美味しさ。醤油やにんにく、ショウガなんかがじわりと効いた、その店独自の味をまとったお肉を頬張る美味しさと言ったら、もう至福以外の何物でもありません。

でもスーパーとかで買う場合、それが高望みに過ぎることはよくわきまえています。ところがこの前私が買った唐揚げというのが。

冗談じゃなく、お肉がないの!
ほとんどがころもなの!!

ここまですごいのは初めて見ました。せっかく奮発して、モモ肉の方を選んだのに(ムネ肉の方が安いですもんね)。

ちょっと下の図を見て下さい。

唐揚げにおけるころもと肉の相関図(笑)

めちゃめちゃ手抜きの図で恐縮ですが、私が買った唐揚げは、まさにこのいちばん右みたいな感じだったんです。大袈裟でなく。
もうこれからスーパーでは買わない方がいいのかもしれません。

さてそうなりますと、自分で作るのが最善かという話に行きつきます。
少し前に「唐揚げなんて簡単だから手抜き」とのたまった男性が世間の批判に晒されたことは記憶に新しいですが、これはさすがに発言者の認識に問題があると言えそうですね。

唐揚げは決して楽な料理ではありません。
揚げ物全般に言えることですが、素揚げを除けばだいたい面倒な下拵えが必要ですし、揚げれば熱い油が容赦なく跳ねます。壁もコンロも汚れますし、後から油の始末もしなければなりません。

それでもなお、人は唐揚げを揚げます。
どうして?
だって、美味しいんだもの。
家族が、喜ぶんだもの。
自分だって、食べたいんだもの。

まだ微かにしゅうしゅうと湯気がのぼる唐揚げをほふほふと頬張り、口の中に溢れる、舌を火傷するほどの肉汁に思わずため息を洩らす。
火照る舌を休めるために、きりっと冷えた○○(お好きな飲み物を入れて下さい)をくいっとひとくち。
……ああ、幸せ。

おりしも季節はクリスマス。
街中にチキンが溢れる今日この頃。
ファミチキ、ナナチキ、モスチキン。ケンタッキーにマックナゲット。
それらもまたよろしいですが、正統派の唐揚げを好む一人として、僭越ながら我が家の唐揚げレシピをご紹介いたします。

今から10年近く前、某有名料理雑誌の『唐揚げ特集号』に載っていた「唐揚げが名物メニュー」という居酒屋さんのレシピを参考にしております。

*2人分
・鶏モモ肉(1枚)
<下味>
・しょうゆ(大さじ2)
・味噌(小さじ1)+ 砂糖・みりん・酒・豆板醤
 (元のレシピ「コチュジャン小さじ1」の代用)
・しょうが、にんにくのすりおろし(適量)
・和風だしの素(小さじ1/2)→ 我が家は省略

下味がちょっと変わっています。しょうゆ+味噌ベースなんですね。
もみ込む時に下味の量が少ないのでいささか頼りない気分になるのですが、心配いりません。もったりとした味噌ベースなので、少量でもしっかりお肉にからんでくれます。

あとは簡単です。

①切った鶏肉をしっかりもみ込んで3時間、できれば一晩おきます。
②片栗粉をまぶして、余分な粉をはたいてから揚げます

ひとつ、大事なことを言います。

この「できれば一晩」がミソです!

もちろん、3時間の漬け込みでも充分美味しいです。
でもね。これ、騙されたと思って一晩おいとくと、もう冗談かと思うぐらい味が激変します。

初めてこのレシピで作った唐揚げを食べた時は、大袈裟じゃなく声が出ました。それぐらい美味かった。冗談抜きで。
これまで自分が作ってきた唐揚げは何だったのか、と思うぐらいに。

でも前の晩から下拵えするなんて、確かに大変です。
だからワタシは、余裕がある時にしか作りません。うちは夫と二人暮らしなので、油ものの頻度はそこまで高くないし。

そのかわり、作るとなったら全力でやります。
気合が勝負です。ハンバーグやコロッケなんかと一緒で、唐揚げも我が家では気合料理のひとつです。

真っ白につやつやと輝くごはん、揚げたて熱々の唐揚げ、シンプルなお味噌汁。あとはお好きな飲み物を用意して。
ああ、もちろんお気に入りのお店に足を運ぶも良しですよ。

さあ、乾杯の準備はできましたか?

いきますよ?
せーの……

「唐揚げ、ばんざい!!!」

(3122字)

古い過去作ですが、よろしければご賞味下さいませ。


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