隔週警察【毎週ショートショートnote】
晃の家では、彼と妻が隔週で保育園の送迎をする。1週めが晃なら次の週は妻、といった具合に。
「今週は俺だね。莉子は安心して仕事してなよ」
「ありがと」
ありがたいことに晃の職場も協力的だ。
「お迎えの時間か? あれ、今日はちょっと早いな」
「そうなんです。木曜日は保護者当番があるんで早めに行かないと」
そう言い残すと晃は会社を出た。
保育園のお迎え? 保護者当番?
「まあ、まったくの嘘じゃないけどな」
保育園とは正反対の方角の駅裏に、見慣れた車が停まっている。晃は素早く窓にスモークが貼られた後部座席へ乗り込んだ。マスクとサングラスをした女性が運転席から振り返る。同じ保育園に通う子供の母親だ。彼女の仕事は木曜が休みだった。
「お待たせ。さて子供の前に、まず『保護者の当番』をすませないとな」
二人を乗せた車は、街はずれのホテルへと消えていった。
「――最近、妙に嬉しそうにお迎えに行くと思ったら、こういう理由だとはね。でも証拠固めにはまだ足りない。これから隔週でしっかり張り込みさせてもらうわよ」
夜中に夫の鞄に仕込んだカメラの映像を確認した妻は、暗闇の中で静かに呟いた。
(472字)
【あとがき】
なんかちょっと前に似たような事例があった気がするのですが「本編はフィクションであり、実在の人物・事例とは一切関係ありません」と、固くおことわりさせていだきます(笑)
それにしても不倫どうこう以前の問題で、保育園のお迎え前にというのは本当に理解ができない。「目的のためには手段を問わない」の悪しき例でしょうね。やれやれ。
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