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とても短いショートショート

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1000字以内(原則)のショートショートを集めています。 《ショートショートnote杯》参加作品は、別マガジンに収録しております。
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記事一覧

だし巻き卵Bar

だし巻き卵を作るコツ、ですか? なるほど、当店は「だし巻き卵Bar」ですから、当然だし巻き卵…

秋田柴子
2年前
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穴の中のピアノ《ショートショートnote杯》

「さ、ここに蒔こう」 庭の片隅でパパが手を開くと、一粒の小さな種が現れた。白いかたまりに…

秋田柴子
2年前
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君に贈る火星の

小さな頃、君はとんでもない泣き虫だった。 幼稚園はおろか、小学校に入学した時さえ「ママ、…

秋田柴子
3年前
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違法の冷蔵庫

「警部、ヤバい冷蔵庫持ってるヤツがいるって噂が」 「ヤバい冷蔵庫?何だそりゃ」 「改造して…

秋田柴子
3年前
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1億円の低カロリー

「ほら、ここに埃が。ほんとに君はダメだなあ」 「ごめんなさい、あなた。さ、お食事よ。冷め…

秋田柴子
3年前
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空飛ぶストレート

いよいよ『全国本音で叫ぼう大会』決勝戦だ。 この大会は単なる絶叫ではなく「普段は言えない…

秋田柴子
3年前
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アナログバイリンガル

やあ、初めまして。 僕はテディベア。ドイツの本社で生まれて、遠くヤーパン——Japanのドイツ語読みだよ——までやって来たんだ。ここの家のお父さんとお母さんが「病気で学校に行けないマミちゃんのために」って僕を呼んでくれたんだよ。 正直、最初は言葉が判らないから、僕は不安でたまらなかった。でもマミちゃんに会ったら、そんな不安はいっぺんに吹き飛んだよ。彼女は満面の笑みで僕をぎゅっと抱きしめてくれた。そして何度も何度も同じ言葉を繰り返した。それが僕の初めて覚えた日本の言葉さ。

コロコロ変わる名探偵

ずらりと並ぶ関係者を前に、名探偵X氏は高らかに宣言した。 「この事件の犯人は、Aさん。あ…

秋田柴子
3年前
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金持ちジュリエット

「つまりロミオってば、あたしが死んだと早合点して後追い自殺。もう涙も出やしない」 ジュリ…

秋田柴子
3年前
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株式会社リストラ

リストラされた僕を拾ってくれたのは、大学時代の先輩だった。 「ウチに来いよ。大手の子会社…

秋田柴子
3年前
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数学ギョウザ

私の夫は数学者だ。 この数学者というのが厄介な生き物で、とかく日常の諸々を数式や定理に当…

秋田柴子
3年前
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しゃべるピアノ

「……暗いな」 部屋に入った男が呟いた。 煤けた灯りの下で、古ぼけたピアノが寂しげに佇んで…

秋田柴子
3年前
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朝ごはん ~ちくま800字文学賞 応募作品 ③

「あああ、スイッチ押すの忘れてた……!」 馨はまだ眠気の残る頭をシンクに突っ込むようにし…

秋田柴子
2年前
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昔がたり ~ちくま800字文学賞 応募作品 ②

「ほう、これは絶景」 「何でもいにしえより多くの歌人に詠まれてきたそうな。月昇れば棚田の一つ一つにその姿が写ることから“田毎の月”と言われるとか」 「そなたの博識は相変わらずじゃのう」 「何を言う、貴殿こそ武に強く芸に秀でておったではないか。まあいずれも昔話だが」 「何の、こうして彼の地を眺めれば嫌でも思い出すわ。ほれ、この高さじゃ。はきと見ゆるわえ」 「ふむ……互いによう戦ったの」 「おうさ五度じゃ、五度。今から思えば無駄に槍を交えずとも、我らが轡を並べて京に上