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脳を取り替える

2月19日

価値観がはっきりしている人ってすごいなと思う。何かが正しいとか何かが善であるとか悪であるとか。それが嘘だったり矛盾していた時のグラつきが嫌だからはっきりした態度は取れないなと感じる。

学生の頃から思想を表すような一つの態度をとることは、その背後に膨大な論理を必要とするので、簡単に断定的な判断をくだすことは出来ないなと思っていた。だからいつも曖昧な優柔不断な、ぼんやりした態度を取ることしかできなかった。

何か一つの思想を標榜することは、常に嘘というか間違いを忘却しているような感じがしてしまう。でもその間違いを乗り越える思考力がないので、「これ絶対違うなー」とか思いながら、どうしようもなく呆然と立ち尽くす感じにしかならなかった。

だから価値観がはっきりしている人はすごいと思う。



最近テクノを聞いている。

テクノってエイフェックス・ツインとかオウテカとか聴いていた時があるけど、とくに良さはわからなかった。
でも最近聞いていてテクノの魅力の一つを見つけたような気がする。テクノの音楽には、現実世界ではあんまり聴かないような、あるいは想像できないような、でも特徴的で印象的な変わった音が盛りだくさんで、そういう音を聴いた時の感触を楽しむようなところがある。
この曲の最初のぐわんぐわんとしたところとか、ツクツクいってるところとか心地よかったりする。そういう変わった音で、リズミカルに曲を構成しているのも面白い。

テクノって色んな音が使われていて、バンドで言うなら何百という楽器を使って演奏してるみたいなクリエイションだ。
そういう音単体の面白さとか感じが魅力の一つだと思う。だからすごく創造的な行為だし、体験する面白さみたいなものに独特な価値がおかれている。アートみたいな感覚。



なんだか体調が悪い。
ここ一週間くらいほんの少しだけ体調の悪い状態が続いていて、足場を踏み外すと様々な症状がでている。

飛蚊症まで出てきた。すごく疲れていて生きていることに疲れているようにさえ感じる。日中は風邪をひきそうな弱体感を感じるし、頭痛もした。たぶん熱はないと思う。体温を測らないのは面倒だから。熱があったところで何も対応は変わらない。熱があるかもしれないから早く治るための食事とか睡眠をとるといった対策をするだけだ。

起きている事のすべてが疲れる。52時間ぐらい寝て、一度生きることを中断したい。そんな気分だ。


ふと思ったけど52時間寝たらお腹はペコペコだろうか。たまに事件や事故で何日間も目覚めなかった、というようなことがあったりする。食事はどうするのだろう。注射でオッケイなのだろうか。排泄はどうするのだろう。

人間の医学の未来って結構色々想像されている。究極はサイボーグみたいなもので、身体のほとんどを人工的なものにしてしまうというものだ。そういう想像は昔からあると思うけど、現実はできてない事の方が多い。それはたぶん難し過ぎるので人間の想像が先行しているだけだと思う。


年を取ってから「肩が上がんねえから肩買うわ」とか「内蔵全部だめだし、全取っ替えで」って言ってる世界はいいなと思う。めちゃめちゃ快適だし、長生きできそう。

身体の入れ替えはできるかもしれないけど脳は無理っぽいから、結局人間の寿命って100歳くらいなのかもしれない。意識を取り出して新しい脳に移植します、っていうのはちょっと無理がある気がする。

どう考えても意識というか、心というか、魂みたいなものがあるし、物質性から離れている領域が存在する。脳という物質的な領域を入れ替えるだけでは問題が生じてしまう。

魂、心、意識みたいなものをコピーしてどこかの媒体に保存する技術があったらかなりいけるかもしれない。一度心的なものをどこかに保存しておいて、身体の脳を入れ替えてから、心的なものを戻して意識を復元する。

心をどこかに保存できるようになったら脳の入れ替えに光明が見いだせるかもしれない。
ただ心をどこかにコピーしたとき、そのコピーした人の心は2つの場所にあるみたいな事になって倫理的におかしな事になる。心のクローン。心の複製。人間の量産だ。その人の人生がそこで分岐する。保存しておけばいつでも復元可能です、みたいな世界だ。一回ここでセーブしとくかつって。時間だけは戻せないけど。

何かの媒体への心の保存が、コピーではなく移行だったら結構嫌だ。移行して保存したんだけど、データ消えました、とか言われたら最悪だ。もうそこで私は存在しない。身体は単なる物質となる。

あと移行したんだけど、なんかバグって戻せないわ、っていうのも最悪だ。いやなんでやねん、どっかに戻してよ。でもだからといってワニとかヒトデに意識を戻されても嫌だけど。


でも、移行途中に心消えたんで戻せません、というのも不思議な感じがする。やっぱり心を取り出している異次元の世界だ。

脳が酸素なしで生きられるのが3〜4分らしい。なんかよくわからないけど損傷があって障害が残るらしい。脳ってめちゃめちゃ繊細だ。
脳って臓器だから作った時点で生かされていなければならない。まあでも脳を作っている世界なら脳の保存や維持も可能かもしれない。

あるいは受注生産なのかもしれない。
「はい!出来ました!」ですぐに身体に脳を装着し、心の移行をしないといけないのかもしれない。1〜2分で。

いやー、そんなにテンパってたらそりゃあ心消えました、って言うわ。神経の接続ミスで、とかなんとかいって。


それだとやっぱり心の移行は難しいから、やっぱり従来の脳ってダメだよね、つって改良版というか進化版の脳を開発しているかもしれない。脳の役割をする代替脳で、血液入れたらブイーンって感じで起動するみたいなノリで、保存とか置いておくだけだし、酸素なしで損傷とかしません、臓器というか機械です、みたいな。

ていうか人間のエネルギー(栄養素や酸素)って血液によって運ばれている。エネルギーの本質は色々な栄養素っぽいけど、血液で運ばれなければならないから、血液がエネルギーだといっても間違いじゃないような気もする。よく知らんけど。


臓器は細胞によって構成されている。現代ではips細胞みたいな感じで細胞による臓器を作る技術が進んでいるけど、細胞以外とかハイブリッドな感じで作る臓器の技術が進むと、かなり世界が進んでるって感じがする。別次元と言っていいくらいに進んでいる。そして脳の場合は非細胞性の脳を作らないと保存や移植ができない気がする。脳が損傷してしまうから。

非細胞性で、臓器と言うより機械だけど、生体に馴染んで電気とかのエネルギーではなく血液で駆動しなくてはならない。

半分は機械だけど、半分は細胞でもあるみたいなものである必要があるのかもしれない。それってすごい。そんな世界はめちゃくちゃ楽しそうだ。いいね未来って。そんな未来あるのか知らんけど。


身体を機械に変える話とか意識がどうのこうのという話はSFの中に色々あると思うけど、『ポストフューマンSF傑作選』の中にいろいろ手っ取り早くまとめられている。身体を機械に変えていく事の不幸もロバート・チャールズ・ウィルスンの「技術の結晶」の中に描かれていて、そのifを擬似体験できる。



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