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想像力の訓練とハーブと開運無濾過にごり酒山田穂

2月11日

安部公房の『水中都市・デンドロカカリヤ』の中の「詩人の生涯」を読んだ。

ゲーテとかノヴァーリスの時代のメルヘンみたいな童話のような雰囲気というか非現実的な要素が入っている物語。

ある貧しい街の話で、人々はあまりに貧しいがために希望を持つこともできないような状態になっていて、人々は暖かいジャケットも纏うことができず、夢も魂も願望も身体から抜け出てしまって、その夢と魂と願望が空で集結して雲となり、太陽を覆い、よりいっそう寒い冬となり、その夢と魂と願望は雪となり街に降り注ぎ、その雪に触れたものは氷漬けにされたように凍ってしまうという話。

可能な限り想像力を働かせて空想と連想を紡いだような物語。

老婆が糸車で糸を紡ぐ場面から始まる。
39歳と書いてあるけど、昔といえど39歳で老婆という事は現代の知によるとありえなさそうで、明治24年のデータで女性は60とか70歳くらいまでは一般的に生きてるっぽい。

その老婆は糸を紡ぐための毛がなくなったから糸車を止めようと思ったけど止まらず、引き込まれる毛の先に指先が絡みついて、ついには老婆が糸になってしまう。そばに寝ていた息子は老婆の引き込まれたすぐ後に目を覚まし、その場に出くわしてしまう。

ーー三十九歳の老婆の息子が、今日も工場の中に残っている哀しい仲間の倖せのために、彼らの消えかかった心臓のストーブに吹き送る酸素の言葉を、一日ヤスリと鉄筆の間に挟んだ原紙にほりつけ、一日とうしゃ版のローラーに押しつづけた疲れから、裸の腹の上に新聞紙をあてがって、ユーキッタンと糸車を踏む母親の足元にぐっすり睡っていたが、タロタロという音に変わる最後の瞬間ふと目を開けて見た、水あかに染まった黒い仕事着の中から、するすると抜け出していった足の先を。そして、足の先が、さらにするすると引きのばされて、糸車の細い穴から吸込まれていったのを。
ーー母さん。

いや「ーー母さん。」じゃねえわ。

そのあと心情についての描写が続くけど、糸車に母親が引き込まれて「ーー母さん。」で改行だと、っえ!!ってなるよね。それでいいんだというか、そう来るかっていうか、安部公房すごいなって。
それにまあそれでもいいかなってなる全体の雰囲気とか小説という形式もすごいなと思う。

全体的に比喩表現が多いし、印象的な表現ばかりで構成されていて、かつ実験的な表現も取り入れていてすごい密度で構成されている。
昭和26年、1951年にこれを書いてるのがすごい。

あと最後の一文は余計なんじゃないかと思った。あまりに安易にその一文を付け加えている気がする。私は何かを見落としているのだろうか。
と一瞬思ったけど、まあよく考えればありなのかもしれないし、なんなら一貫性というかイメージのつながりがあって全然ありなんじゃないかと思いだしてきて、第一印象というか短絡的な思考の価値判断て役に立たないなと思ったりした。



ネトルを買った。

ネトルは浄血作用とかアレルギーに効果のあるハーブの一種。緑茶みたいな緑を思わせる味で、効能がかなり優秀なのでハーブティーのブレンドにたまに含まれている比較的メジャーなハーブ。

最近ルイボスティーが尿酸値を下げる作用があるという研究があるという記事を読んで、よく飲んでいて、なら他のハーブも入れようということで、飲みたいハーブを適当に混ぜて飲んでいる。

肝臓サポート系を主体にしているのでミルクシスルとアーティチョーク、なんか冷蔵庫の中にあったので神経系やメンタルによくてリラックスや鎮静作用のあるパッションフラワーと、チャットGPTに痛風体質によいハーブティーを聞いたら答えたネトルはマストでいれて、あと飲みやすくするためのレモンバーベナとかオレンジピールとかハイビスカスを適当に混ぜている。

これにウコンとオートムギとかゴツコーラとかを入れたいけど生活の木で売ってないのでスタメンに入っていない。

ちなみに身体に合わないハーブもあるし、長期服用がだめとか、禁忌が結構あるので、調べないで適当に飲むのはおすすめしない。


私はファイテンのテープがよく効くと感じているので使っているけど、貼ったテープがすぐ痒くなったりならなかったりしていて、最近テープが痒くないのはハーブティーのせいでは?ということで意識して飲んでいる。

人の身体は個人差がかなりあるっぽいけど日々かなりの炎症にさらされていて、人生はそれをどれだけ抑えるかというゲームだって言ってるような感じの人がいるくらいの雰囲気だけど、ハーブティーでそんなに明確な抗炎症作用があったらすごいなと思って確かめている。



「開運 無濾過純米 山田穂 にごり酒」を飲んだ。

山田穂は山田錦の親にあたる酒米。山田穂と短悍渡船の子が山田錦。

バニラのような香りと程よい重厚感が山田錦を思わせる。
開運の他の無濾過にごり酒より甘めでボディ感のある生酒らしい質感は、酒米の特徴をよく表しているような気がする。

滓を混ぜるとにごり酒らしい苦味に覆われて、それはそれでいいけど山田穂の良さがなくなっている気がする。
甘くて香りがある感じだけどイワシの臭みを消してくれたので魚との相性はいいと思う。

実は数日前に開栓していて、時間が経つと香りがなくなってしまっているような気がする。開けて3日位までが上品な香りを醸しているかもしれない。



花村萬月の記事を見た。

花村萬月は芥川賞をとった純文学のカテゴリーの作家で、読みやすくてオーソドックスな文体で、かつ文量が多くて、わりかし想像力豊かな内容というか狂気を扱っているという印象。
私は好きではないけど、小説という形式を使うのに最も適した思考とか内面性を持っているんじゃないかと思う。

彼が「安易に小説家を志すな」といっている。
そりゃそうだ。
「小説家」なんていう職業は「ほぼ」存在しないのだから。

この短い記事の中に、「小説にオチはいらない」というのがあって、確かに!と思った。
「最後のどんでん返しが云云かんぬん」みたいなのが死ぬほどくだらないと学生の時から思っていて、でもなんとなく物語にはオチみたいなものはいるんじゃないかと思ってたけど、そう!オチとかいらないよ!とはっきり思った。というかごにょごにょって終わる小説いくらでもある。


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