多すぎる本と読書のマインドセット

2月10日

古本屋で本を買った。
あんまり買いたくなかったけど買ってしまった。

いま私は円城の言葉を必要としている感じがした。一文一文なにかを探っていくようなあの文体がしっくりくるマインドになっている。舞城は全部読みたいので無条件に買っている。

思惟って「しゆい」って読むのを初めて知った。「しすい」じゃないんだって。まあ推じゃないわな。

神保町のある古本屋に、『思惟の歴史』みたいな宗教哲学とか神学関連の研究書が天井まで棚一杯になっている店があって、どれも綺麗で五千円から一万みたいなわけわかんない感じになっていて、すげーー!!とか思った事がある。なんだこの神々しい本棚はつって。
それ以来そういう本の安いのがあったら絶対買おうと思っていて初めて見つけた。しかも五百円。五百円はやばい。

行った古本屋は普通のブックオフなんだけど、死海文書のちゃんとした研究書がどっさりあったりで、宗教研究に熱心な読者が通っているような気がする。私は敬虔な信者であり研究者であるその人のあとを追う形で本を読んでいくのかもしれない。
そこのブックオフには他にも私にあった読者が通っていて、円城の本とか舞城の本とかよくあるし、デリダの本もたまにある。近くの別のブックオフには全然ないのに。

文学研究に特化した店舗とか、心の哲学に特化してる店舗とか色々あって、ブックオフってチェーン店だけどすごく長い眼でかつ微細に眺めてみると、ちゃんと古本屋の良さを体現していると思った。

『思惟の歴史』のクラウス・リーゼンフーバーは1938年生まれのドイツ人だけど、67年に来日、69年には上智大学で先生やったりしていてめちゃめちゃ日本に縁がある。

ウィキペディアに、兄のハインツ・リーゼンフーバーは「私は頭が悪いから政治家になったが、弟(クラウス)はずば抜けて頭が良かったので神に仕えることになった」と語っている、っていうのが載ってるんだけど、これ良すぎない?

私の家系は臨済宗建長寺派で完璧に仏教なんだけど、私は神とか神聖とか神学とか教会とかそういう宗教性に関心があったりする。やっぱりバッハが好きなわけで、バッハの音楽に神をみたりしている。
まあ禅もいいけどさ。



社会学者の西田亮介が積読とか読書について述べている動画をみた。

堂々と全部読んでないし、二度買う事もあるし、自由にパラパラでいいと言っているのいいなと思う。
私も読んでない本たくさんあるし、読みたさは呪いみたいなものだから可能な限り買えばいいのだと思う。あと買っておいて手元に無ければ読むことができないとも思ってる。

あと本を買う事は著者や出版業界への貢献だという考えもいい。
かくいうお前は古本じゃないかって話だけど、それは古本業界への貢献であり、その貢献は間接的に著者や出版業界への貢献でもあったりするなと思った。

あと呼吸をするように本を読む、というのもなんだか言葉以上の深みがある。とにかく読み始めれば読み進むものだという感じでもあるし、呼吸とは吸う事と吐くことであり、吸う事はインプットであり、吐くことはアウトプットであり、それが勉強であるという感じもある。

モチベーションを保つためには読書をするためのインセンティブを決めると良いという事を、読書に抵抗のある人への助言として言っている。これも当たり前だけど、一つのマインドセットとして重要だ。女性のアナウンサーは内から湧き出る欲求にしたがって本を手にするという事で、演者の二人はいい対比になっている。



越乃寒梅の普通酒を飲んだ。

今までわざわざ越乃寒梅を飲むこともなかったから、ほとんど飲んだことなかったし普通酒も飲んだことがなかったけど、もらったので飲んでみた。この白ラベルうまい。むかし流行っただけの酒だと思っていたけどちゃんとうまい。

普通酒だけど糖類が入ってるわけではない。でもめちゃめちゃ甘い。醸造アルコールをなにで作っているのかわからないから何とも言えないけど、すごくまろやかで甘い。そして甘いけど重すぎない。後味はほんのり辛口さがあって、まるさと調和して食事の邪魔をしない穏やかな余韻という感じ。

雪中梅も出羽桜もそうだけど普通酒ってレベルが高いなと思う。
諏訪でたまたま泊まったホテルの近くにある、酒にこだわった居酒屋の大将が磯自慢の本醸造が一番好きだといっていて、へーそうなんだと思った事がある。本醸造もただ薄めるためにアルコールを添加しているのではなくて調整し目的の味にするために添加しているわけで、本醸造なりの良さがある。

越乃寒梅は久保田、八海山に比べて旨味の感性が特化しているような気がする。
味について『日本酒の教科書』を参照しよう。

【第一の香り】‥ 羽二重餅、アケビ、青竹など。
【第二の香り】‥ 桜餅、ウメゼリーなど。
【味わい】‥ 展開が緻密な設計図通りのように計算されており、酸味と甘み、旨味のあらわれ方とバランスが良い。しっとりしていて、静かで軽い。後口は辛口だが舌を休ませる潤いがある。
【料理との相性】‥ わさびを薬味に使う料理や、居酒屋で出てくる前菜的な料理によく合う。
【温度】‥ 冷やすと重さが出てきてしまう。20℃ほどの常温がよい。



ガルシア=マルケスの『ママ・グランデの葬儀』の「火曜日の昼寝」を読んだ。

10頁ほどの話だけど人物描写や構成はしっかりしている。
貧しい親子が描かれている。
愛らしい娘の様や、息子をなくした母のシリアスな雰囲気や、司祭に対しての毅然とした態度など人間性が簡潔かつ的確に描かれている。

あと「禿げた司祭の頭に欠けている毛が腕にはあまっていた」というような表現があって笑った。

司祭に「暑すぎるから日傘を持っていきなさい」と言われても、拒絶しそのまま部屋を後にして話が終わる。
最後の文章以外の意味を残して終るところもあるし、最後の不気味な状況も絶妙だし、全体的に抜かりなく構成されている。

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