『14年目の気持ち』
東日本大震災でお亡くなりになられた方々のご冥福をお祈りし、被災された皆様にお見舞いを申し上げます。
また、令和六年能登半島地震でお亡くなりになられた方々、まだ被害の渦中におられる皆様に、お見舞いを申し上げます。
元旦、わたしが住んでいる土地でもかなり大きく揺れました。
丸十三年が経とうとする元旦にやっと気づいたことがあります。
地震に遭遇すると、自分が完全にフリーズしてしまうということです。令和三年の福島沖地震の時にも、しゃがみ込んで動けなくなりました。
今年は揺れ始めてしばらくしてから、やっとストーブを消すことができました。
能登半島地震が起きて、様々な記憶がよみがえり、落ち着かない日々が続きました。
「わたしは被災者である」
という自認が、いまやっとできた。それが十四年目の私です。十四年かかりました。
今北陸で、
「こうした目に遭った方に比べれば、自分は被災していない」
と考え、耐えている方もきっと多くいらっしゃると想像します。
叶うなら、ゆっくりと被災を受け止めていってほしい。うけた被害に対してケアを求めてほしいと、願っています。
元旦、学生時代の友人と過ごしていました。その友人とは、2016年の春彼岸に、語り部タクシーで宮城県閖上地区にいきました。
仙台にいこうという話になって、
「もし気が向かなければ早めにいって一人でいくから、いかなくても大丈夫だよ」
と話したら、いきたいといってくれて一緒にいきました。
このとき友人を誘ったことを、わたしはずっと申し訳なく思っていました。2016年の閖上、津波の被害にあった地域を歩くことは、想像以上の悲しみを辿る道行でした。
閖上中学校の、犠牲になった十四人の遺品。
この寄せ書きの右側に、泥にまみれてしまった野球のユニフォームなど、十四人の子どもたちの遺品があります。
震災当時の閖上の小学校から街の方に移った中学生が、自転車でこの場所にきていました。微動だにせず、人々の声が入っている津波の映像を見つめていました。
十四人の子どもたちのための小さな黒い碑があって、たくさん触ってもらえるようにとそれは丸く作られていました。
わたしも友人もその碑に触れて、耐えようもなく涙で前が見えなくなりました。
ある程度の覚悟を持っていった訳なのだけど、そういう自分の感情に迂闊に友人を巻き込んでしまったと、後悔しました。
それから八年が経って、友人とその日の話になりました。
「いってよかった」
そう言ってくれて、わたしは驚いてしまった。
「想像とは違った」
友人は言いました。
「映像で見るのとは違うよね」
そういうことなのかと思って答えると、
「そうじゃない。まるで想像できてなかったことがわかった。だからいってよかった」
初めて友人からその時の思いが聴けて、わたしはありがたかった。
2014年から、年に一回か二回、宮城県と岩手県の津波の被害に遭った地域を歩き始めました。目的はなく、歩き始めました。
海辺で育ったけれど海を見ることができない友人と出会い、防潮堤に座って海を見つめている人を見つめ。
そうして海を歩くうちに、2018年の春彼岸、宮城県南三陸町で、今までと明らかに人々の表情が違うとはっきりと思いました。もちろん、その時も、今も、まだまだ辛い思いを抱えている方は多くいらっしゃいます。
けれど2018年の春彼岸の海辺には、笑顔があった。
どうしてだろうと、わたしが勝手に思い至ったのは、震災後に生まれた子どもたちの存在のおかげかもしれない。ということ。
春彼岸だったので、海辺にはお法事に集まっているご家族がたくさんいらっしゃいました。そのお法事は、震災で亡くした家族のお法事かもしれない。
けれど震災を知らない子どもたちが笑顔で走り回っている。
自然と大人も笑顔になる。
わたしは「戦争を知らない子どもたち」と呼ばれ始めた世代です。
笑える限り笑っていようと、この時思いました。
海辺を歩く習慣はコロナ禍で中断していましたが、今年また女川町と釜石市にいくつもりです。
会いたい人たちがいて、お魚がとってもおいしい。
それもまた、まぎれもなく十四年目のわたしの気持ち。
今年も、震災の後食べものを提供し続けてくださったパン屋さんで、その時たくさん食べたサンドイッチを買って食べました。
去年のこの日のnoteを読んだら、ちょうど確定申告の翌日で、令和四年にあまり寄付ができていなかったことをわたしは悔やんでいた。
なので今年は、今日寄付をしました。
あしなが育英会と、今能登に炊き出しにいったりという活動をしている「越乃結ゐ組」に寄付をしました。代表者は友人です。信頼していただいて間違いないです。
二時四十六分に黙禱をしました。
笑える限りは笑って、生きていきます。
サポートありがとうございます。 サポートいただいた分は、『あしなが育英会』に全額寄付させていただきます。 もし『あしなが育英会』にまっすぐと思われたら、そちらに是非よろしくお願いします。