ポジショナルプレー 人から見るか?ボールから見るか?

サッカーファンの間ではすっかり定着した「ポジショナルプレー」というワードですが、ぶっちゃけよくわからんって人は多いんじゃないかと思います。でもそれって、

「5レーン」「偽サイドバック」「レイオフ」「ファルソ・ヌエベ」

このへんの言葉にピンと来てないからじゃないでしょうか?でも、これらはあくまでポジショナルプレーを活かしたり、あるいはポジショナルプレーによって活かされるものなので、別に知らなくったってポジショナルプレーは理解できます。

むしろ、ポジショナルプレーはもっと簡単なものです。簡単だからこそ奥が深いっていうだけの話なのです。あんまり奥深くまではいかないようにしながら、本稿ではポジショナルプレーについて少し考えてみたいと思います。

はじめに: 「ポジショナルプレー」をひと言で言うと?

ポジショナルプレーを簡単に説明するとすれば、「やりたいサッカーをやりやすくするための位置取りをすること」。極論これに尽きると思います。

ポジショナルプレーというとどうしてもマンチェスター・シティやバルセロナのように華麗なパスサッカーを思い浮かべがちですが、ああいうサッカーだけがポジショナルプレーとは限りません。言ってしまえばアリゴ・サッキが率いた“グランデ・ミラン”のゾーンプレスだってポジショナルプレーに当たります。

「ボールを奪って素早くカウンターに移行する」という目的を達成するための位置取りをしているからこそまとまりのあるプレーができるので、これも立派なポジショナルプレーでしょう。

ちなみに、シティやバルサの源流ともいえるヨハン・クライフがいた頃のオランダ代表は更にエグいゾーンプレスを遂行してますが、これも実は約束事があって、それに合わせた位置取りをしてるんじゃないかな…と思っています。

そして、オランダ代表の急襲プレスを現代風にアレンジすると、現リヴァプール監督のユルゲン・クロップが好む「ゲーゲンプレス」になるでしょう。

大人数でプレスを掛けてボールを奪う…というところは上のオランダ代表ともミランとも同じなんですが、ゲーゲンプレスは奪った後のカウンターをより意識したやり方になっています。

ゲーゲンプレスによってボールを奪うことが目的というよりも、その後の攻撃につなげるためのプロセスとしてゲーゲンプレスがあるイメージです。

「攻撃するための守備」にもポジショナルプレーがある

このように、パスをつないでつないで崩すイメージのあるポジショナルプレーについて少しだけ見方を変えるため、代表的な守備的戦術をいくつか見てみました。とはいえ結局サッカーは点を取らなきゃ勝てないスポーツですし、ボールを持ってるのと持ってないのじゃ主導権は明らかにボールを持ってる側にあります。

アリゴ・サッキのミラン、ヨハン・クライフ中心のオランダ代表、そしてリヴァプールはいずれもまず相手に渡った主導権を奪い返すこと、そして奪い返した上で相手よりも優位に立つことを守備の目的にしているので、その目的を効率よく達成するには適切なポジショニングが欠かせません。となればつまり「やりたいことをやりやすくするための位置取り」ということになるので、これもポジショナルプレーとなります。

少し話は逸れますが、ひたすら相手の攻撃を跳ね返すことだけを目的にするような、完全に守備的な戦術ってなかなか存在しないんじゃないかなと思います。心当たりがあるのは、リードした状況で試合終盤を迎えたときの相手のパワープレーに対応するときぐらいですし…

おわりに: ポジショナルプレーはボールを見たかった

ここまでざっくり見てきましたが、つまり位置取りは大事なんだということが伝わればそれで良いと思います。

こう書いてしまうと、あたかもポジショナルプレーは選手の配置さえ合っていれば良い…みたいに取られちゃいそうな気がしますが、実際はそんな表裏一体のものではありません。攻撃でも守備でも効率化を図るなら位置取りは確かに大事ですが、その位置取りの基準点は他ならぬボールです。

サッカーというスポーツはボールがゴールに入ってこそ得点となり、それによってスコアの上での優劣が変わります。ということは、プレー中の流れの主導権はさておいて、ボールの存在が何よりも大事ということになります。だから、ポジショナルプレーはむしろボールの位置を考えることが重要――ボールホルダーではなくボールそのものの位置が、です。

ボールの位置、チームが志向するスタイル、試合に出ているメンバーのスキル・特徴があってようやく位置取りへとつながっていくので、選手の位置を見るということはこれらの要素をひとつひとつ見直していくことが大切になるわけです。位置取りを見るようでチームを理解し、そしてボールの位置とその重要性を捉えることへとつながるのです。

アイディアのシンプルさ故に細かい戦術などを見ていくと膨大な量になってしまうので、わざと概念的な部分を取り上げてみましたが、これもあくまで私見なので完全な答えではありません。むしろ、本稿が何かしら思い巡らすきっかけになればと思います。

最後になりましたが、タイトルの着想はアニメじゃありません。奥菜恵の方です。それじゃみなさまアディオス!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?