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第6章 6-❶ 復帰

 翔馬の1年7ヶ月振りの騎手復帰というセンセーショナルな報道は、あっという間に世界を駆け巡った。

 急遽設定された緊急記者会見が、日本外国特派員協会主催で行われ、世界中の競馬ファンの衆目を集める中、JRA始め
多くの競馬関係者、そして世界中の競馬ファンに対しての心からの謝意を伝え、1年7ヶ月という時間を支えてくれた人達への感謝を述べた上で、これから一層の自己研鑽に励み、改めて競馬を支え続けていく事を力強く宣言した。

 世界中、数多の彼のファンが共に喜びを分かち合った。

 しかし、騎手という職業•••復帰したからといって、すぐに勝ち星を重ねる事ができるほど甘い世界ではない。
 精神的、体力的には一回りパワーアップしたとはいえ、騎乗技術に関しては、やはり馬上にて取り戻さなければならない。
 故に翔馬は、ゴールデンウィーク明けの復帰から9月中旬までの4ヶ月を、様々な厩舎に出向いての調教や追い切り騎乗を中心に、実践復帰の為のトレーニングに励む事になった。


 やはり、馬上こそが彼の居場所であった。

 日を追う毎に、その瞳が輝きを増してゆく。
 馬に乗れる事の幸せを感じていた。
 息吹を、鼓動を感じていた。

  〝ようやく戻ってきたんだ!〟
 喜びがふつふつと湧いてくる。

 長い間眠っていた細胞の隅々が、目覚めて行くような感覚に捉われていた。

 調教中も数多くのホースマンの視線が彼に注がれていた。

 長いブランクを感じさせないその技術
。手綱とあぶみを接点に、馬と同化するような惚れ惚れする美しいフォームで、CWコースを、坂路を、芝コースを疾駆する。
 気性難の扱いにくい競走馬も、彼の前では、その素振りさえ見せず落ち着き払っている。

〝彼は本当に馬と会話ができるのだ〟 
彼を知る者全員の共通意識である。
 彼を目標としている若手騎手は血眼になり、その騎乗技術を目に刻み付けていた。いや、ベテラン騎手でさえも例外ではないのだ。

 彼は今日もまた、競走馬とのボンディングエクスペリエンス(絆を深める経験)を積み重ねていくのであった。


 澄み切った青い空、切り抜いたように浮かんでいる白い雲、去りゆく夏を締めくくるかのように、強烈な日差しが降り注ぐ中を引き上げてくる、調教を終えた1頭の競走馬•••その馬上から彼は大地に降り立ち、いつものように鼻面を優しく撫でて声を掛けていた。
 いつもの人馬のコミュニケーションを、優しい眼差しで見守っていた調教師が声をかけた。

「翔馬お疲れさん。どうや?気持ち良く走れていたように見えたが?」

 その競走馬は調教後も息を乱す事なく前搔きをし、〝何かくれ!〟と催促していた。
 繋靭帯炎からの復活を目指すG1レース6勝馬、ゲメインシャフトであった。

「はい。先週まではちょっと浮くような走りでしたけど、馬が変わってきましたね。推進力が出てきました。グンと沈んでキレも出てきましたね。何よりも、また走る事のできる喜びに満ち溢れていますね!」
 厩務員が差し出した人参をあっという間に咀嚼するG1馬のたてがみを撫でる調教師が笑みを浮かべた。

「お前と一緒やないか!」翔馬は笑った。
「次走、頼んだで!」
「はい!全力を尽くします!」

 ゲメインシャフトの復帰戦は、東京2000メートル、天皇賞秋と決定した。


 翔馬は空を見上げた。
寒さ厳しい師走の暮れとは思えない程の眩しい太陽光線が降り注いでいた。
 大歓声が彼らを包み込む。
年末の大一番、グランプリ有馬記念の幕が今開けようとしていた。

 15頭がそれぞれ返し馬を終え、輪乗りで各鞍上が騎乗馬を落ち着かせている。

 この戦いは、彼の引退戦であった。
何としてでも有終の美を飾らせてあげたい•••その気持ちが伝わったのか、彼もまたテンションを上げ、周りを威圧するかのように鼻息を荒くする。

〝いけないいけない!〟翔馬は苦笑いをする。

 COOL HEAD BUT WARM HEART!
 心は熱く、頭は冷静に!

 翔馬は彼の肩口をポンポンと叩き、たてがみを優しく撫でながら呟いた。

「これで最後だな。一緒に頑張ろうな」

 彼は両耳をピンと立て、落ち着きを取り戻したように、輪乗りの輪に加わった

 やがて、壮大なファンファーレが鳴り響き、超満員のスタンドからの重なり合う手拍子が織り成すそのライブ音が、大空へと羽ばたいてゆく。

 翔馬は瞑目した。
 この瞬間に想いを込めて。
神経が研ぎ澄まされてゆく。もはや、歓声も聞こえない。支配するのは自身の鼓動のみ。

 そして•••人馬の鼓動が重なったその瞬間、年の瀬に見る夢の幕が音を立てて開いたのであった。

全馬ゲートイン完了🐴💨🔥😤


 PS•••いつもお目に留めて頂き、心より感謝申し上げます🥹🙏新章が始まりました🐴💨🔥😤大空翔馬復活へ‼️
 次回配信は、6月8日土曜日午前8時🕗です!数多のサラブレッドがターフを駆け抜けます💨😤翔馬も少しずつ感覚を取り戻し、虎視眈々と復帰の機会を狙います!
 それではまたお会いしましょう🙏🙏

          AKIRARIKA


   新規入厩🐴🐴しました🤭

左奥は幻の三冠馬と言われた、皐月賞馬のアグネスタキオン
正面はダービー馬、ジャングルポケット
右隣は菊花賞馬、マンハッタンカフェ
あの年、この3頭でクラシックタイトルを分け合いました🏆🎖️😳

 以下、時計回りで
   •ダービー馬アグネスフライト
   •菊花賞馬エアシャカール
   •JAPAN CUPを圧倒的な強さで
   逃げ切ったタップダンスシチー
        •ジャパンカップダート勝ち馬の
    イーグルカフェ
   •朝日杯3歳ステークス勝ち馬の
    エイシンプレストン
   •宝塚記念勝ち馬ダンツフレーム

 本日のAKIRARIKA厩舎、新たに8頭の入厩がありました🐴😊続々と入厩予定です😤😤年内100頭に向けて、着々と準備が進んでおります🐴🐴😤ではまた👋👋

馬運車?で北海道へ転厩のオドウことドウデュース君🤭🤣ではよろしくね〜🙏🥹

 この作品を通して、養老牧場への牧草寄付等の引退馬支援を行います。その為のサポートをしていただければ幸いです。この世界に生まれたる、すべてのサラブレッドの命を愛する皆様のサポートをお待ちしております🥹🙇