翔べ君よ大空の彼方へ 5-⑱ 砂時計
たくさんの思いが込められていた。
その一枚一枚、一字一句から、彼に対する思いが泉のように湧き出ていた。
箱一杯の手紙や写真が、空白の時間を、欠けていたピースを一つずつはめ込んでいくかのように、彼の全身に染み渡っていく。
こんなにまで支えられていた。
こんなにまで繋がっていた。
やはり彼の円の、縁の中にはたくさんの糸が張り巡らされていたのだ。
住職の温かい眼差しを思い浮かべる。
〝夢を叶える為に起きなさい。叶える努力をする為に生きなさい。そして、努力をした今日に、支えてくださった人達に感謝をして眠りなさい•••。〟
これまで支えてくれた多くの人達に笑顔を届ける方法を、彼は1つしか持っていない事に気付いている。
それこそが、彼の生きる術であり、道であるのだから。
鉄器の中の抹茶はまだその温かさを保っていた。彼は再び急須に移し、その香りを胸いっぱいに吸い込んで、ゆっくりと吐き出す。そして、頂いた風呂敷を広げ、その懐かしい味に手を伸ばした。
彼は笑みを浮かべた。
人と人との縁は、こうやって繋がっていくのであろう。永遠に。
その稲荷寿司は、やはりこの場所でも変わらぬ同じ味であった。
静寂が闇夜を包み、大きな満月が彼の姿を照らし出した。
春の暖かな風が、彼に寄り添うかのように流れていた。
彼自身は知らぬ。
その背中を照らす、黄金の光の存在を。
彼は今、自身の足でしっかりと大地を掴み、その視線はただ1点だけを見つめていた。
その瞳には、一切の迷いも見られなかった。
答えが、はっきりと見つかったのだ。
「そこに座りなさい」
彼は大僧正の前で膝を正していた。多くの仏像に見守られながら。
「うむ。良い表情になった」
一切の迷いも見られぬ、煩悩を断ち切り
、1つの境地に達したかのような佇まいに
、心底敬服している様子であった。
「我々は1人では生きられぬ。支えて、支えられ、生かされる。時には苦難もあり
、窮する事もあるであろう。しかし、そのような時こそ真価が問われるのだ。
松や柏は、周りの木々が青々と命を輝きせている時は目立たない地味な存在であろう。しかし、凍えるような冬が到来しても、寒風に耐え忍び、なおも緑葉をつけているのだ。
我々、人も同じであろう。
苦難から目を背け逃げ出すか、受け入れて、祈り立ち向かうか。
君は立派に立ち向かった。
そして、自らを解放した。
〝艱難汝を玉にす〟とも言う。見えぬ力が、これからの君を守ってくれるだろう
。その背の光もしかり•••。」
大僧正は一旦言葉を区切り、1つの包みを彼に差し出した。
「開けてみなさい」
彼が丁寧にその包みを解くと、中から1つの砂時計が現れた。
大僧正は目の前の、砂時計を見つめる青年を優しい眼差しで見つめていた。
「砂時計の落ち切った砂はひっくり返さない限り動く事は無い。過去はこの下に溜まった砂と同じ。しかし、ひっくり返せば、今度は新たな未来を刻む事ができるのだ。そして、砂が落ちるスピードは決して変わらず一定のまま。
砂時計は、私達に生き方を教えてくれる最適な贈り物だよ。
この砂時計を君にプレゼントしよう。
まあ君の、大空翔馬の体内にも時計が刻み込まれているだろうけれど」
そう言って大僧正は笑った。
その言葉の意味を悟り、彼も表情を緩める。
彼はその砂時計を手に取り、畳の上にそっと置いて瞑目した。
彼の身体が、砂時計が時を刻む。
やがて••••••。
彼が目を開けたその瞬間、大僧正の驚きの表情がそこにあった。
彼の体内時計には、寸分の誤差も見られなかったのだから。
PS•••いつもお目に留めて頂き、心より感謝申し上げます🥹🙏次回配信は5月15日午前8時です🕗
この日を待っていました。🥹🥹
大空翔馬が遂に、和解を成し、旅立ちます。自身の道へと舞い戻ります!
必見です‼︎翔け、大空翔馬!
それでは15日、お会いしましょう!
AKIRARIKA
先日、小説を読んでくださっているM・O様より寄付を頂き、彼女が愛するタニノギムレット様に牧草送付を依頼しました🍀🐴🍀🐴
たんとお食べ、ギム様🤭🤭🍀
🐴ヴィクトリアマイル👩
多士済々の女の子達の対決🔥🐴💨
⑥マスクトディーヴァ、⑮ドゥアイズ、②フィアスプライド、この3頭で勝負します
🐴💨🔥😤さて、いかなる結末に⁉︎
AKIRARIKA
この作品を通して、養老牧場への牧草寄付等の引退馬支援を行います。その為のサポートをしていただければ幸いです。この世界に生まれたる、すべてのサラブレッドの命を愛する皆様のサポートをお待ちしております🥹🙇