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【実写レビュー】3万円台の魚眼レンズがコスパ最強-TTArtisan 11mmはレンズ2本分の性能を持つ!?

躍動感あふれるポートレートを撮りたい方には超広角レンズがおすすめ。元来、風景や建築物を撮るイメージが強い超広角レンズですが、ポートレートにおいても周辺が歪みやすい特性を活かして、人物の手足を長くしたり、物体を曲げたり、広げたりと、デフォルメイラストのような表現が撮れます。

ポートレート撮影だと標準レンズである35mm〜50mm、それ以上の望遠レンズで、人間の視野に近い画角で、背景をボカしたり、被写体と背景を圧縮したりして撮るのが定番だから、広角で撮影するのはイレギュラーかもしれません。ただし、海や山、星空、大きな建築物などのロケーションでは、背景を取り込んだダイナミックな写真を撮ることができます。そして、超広角レンズの一種で対角線方向に180°の超広視野角を撮影できるのが“魚眼レンズ”です。周辺が中央に引っ張られるように円形の歪曲を作ることから魚眼のようだと言われるわけですね。

こちらは超広角レンズ「SONY FE 14mm F1.8 GM」で撮った写真。14mm F1.8 1600SS 

ただし、筆者の場合は魚眼レンズで撮影する頻度は少ない。野球で言うならワンポイントのリリーフピッチャーみたいな役割です。お金をかけたくない、とはいえ、描写力が低いレンズは嫌だ・・・そんなわけで2年間くらい頭の片隅にありながらも魚眼レンズに手を出さなかったのですが、とうとうコスパ最強の魚眼レンズ「銘匠光学TTArtisan 11mm f/2.8 Fisheye ED」を手に入れました。

銘匠光学TTArtisan 11mm f/2.8 Fisheye ED(SONY Eマウント用)

中国にある2019年6月設立の光学機器メーカー・銘匠光学のレンズです。同社は “THE THINKING ARTISAN”の略に由来する「TTArtisan」ブランドを展開しており、 30以上の国や地域で販売中。SONYやCanon、Nikonなどの国内メーカーやドイツのライカと比べて中国メーカーと聞くと、技術力に不安を抱く人もいるかもしれません。しかし、今や日本のカメラマンの多くが利用するGodoxのストロボやLEDも中国メーカーです。近年の中国メーカーはレンズをはじめとするカメラ機材のクオリティーが非常に高く、国内メーカーにはない着眼点で開発されるユニークな製品が多いです。しかも国内メーカーと比べて価格も安い。

超広角特有の出目金レンズなので一般的なレンズフィルターは付けられません。

銘匠光学TTArtisan 11mm f/2.8 Fisheye ED」は約3万6000円。こちらはデジタルカメラグランプリ2021年金賞を受賞しています。国内正規代理店の焦点工房ですが、ヨドバシカメラなどの家電量販店でも発売しています。修理の際は購入店に持ち込むことができるので、焦点工房もしくは家電量販店での購入がおすすめです。

明るくて描写力も3万円台とは思えないほど優れていました。そして、本体サイズは67(最大径)×85~89(長さ)mm、重量は約490~510gと軽い。ただ、逆光耐性は弱いのと防塵防滴ではないこと、マニュアルフォーカスなので手動でのピント合わせが必要になります。さて、それでは「銘匠光学TTArtisan 11mm f/2.8 Fisheye ED」で撮影した写真を見ていきましょう。カメラボディはSONY α7RⅤです。

11mm 100SS ISO640(電子接点のないレンズなので、F値の記録が残っていませんがF2.8解放だと思います、以下の写真も同じく。現像で空を起こしていますが、強風と雨だったのでISOは高めなんだと思います)

モデル:KAPI(Twitter:@KAPI_827MP、Instagram:kapi_cos
ヘアメイク:Miyako 霊子:
@miyako_cheng、Instagram:miyako_reiko

11mm 100SS ISO640

もともと焦点距離が短いレンズですが、被写体に近づくことで周囲の歪みも強くなります。逆光耐性が弱いため、青天で空を映すとフレアやかすみが発生しやすいものの、周辺部まで高いディテールを保っています。周辺光が暗くなりますが許容範囲でしょう。

11mm 100SS ISO640

 魚眼レンズなので、被写体を水平に捉えても恐ろしく短足に映ります。なので、ローアングルもしくは座らせる、バストアップに絞って撮ることになるでしょう。

11mm 100SS ISO640

超広角レンズ撮影の基本は被写体をど真ん中に置くこと、寄りすぎると歪みが顔にまで出るのが注意するですが、魚眼レンズ特有の大きな歪曲による不安定感が躍動につながるので、多少の歪みは覚悟の上で(レタッチで調整する)撮るべきだと思います。

11mm 100SS ISO640

また、バストアップだけに絞って大きく歪ませる演出も、魚眼レンズでしか見られない絵になるので面白いです。暗くなってくると若干周辺の描写力が落ちてしまっていますが、光が当たれば被写体を十分綺麗に映し出してくれます。

しかも、こちらのレンズの歪曲はLightroomのプロファイル設定(「メーカー」を「Nikon」、「モデル」を「Nikon AF DX Fisheye-Nikkor 10.5mm f/2.8G ED」にセット)で、スタンダードな広角レンズの画像に簡単に補正できます。若干の微調整は手動で必要になるのですが、いわゆる二刀流だと宣伝文句を出しています。

11mm 100SS ISO640/プロファイル補正なしの歪曲あり
11mm 100SS ISO640/プロファイル補正によって歪曲を無くした

プロファイル補正でストレートな超広角レンズに直すと、魚眼レンズ特有の中心部分に向かう膨張が平らになりました。

被写体が際立って躍動感あふれるプロファイル補正なしver.

よりダイナミックだし、建築物や風景撮影にもってこいなプロファイル補正ありver.

1本のレンズで2本分の役割を果たす・・・まじでコスパ最強じゃないか。


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