GIRL IN A BAND 〜キム・ゴードン自伝を読みながら。
外は春の嵐。黄砂と花粉で空も真っ黄色。こんな日はおとなしく家にひきこもって、レコード聴きながら本を読むにかぎる……なんてうそぶいても、こんな天気じゃなくても毎日そんな生活では? というツッコミも聞こえてきそうだが。
さて、ロシアがウクライナに攻め入って以降、心がザラザラにささくれ立ち、目覚めてから寝る寸前まで、ソニック・ユースしか聴かない(聴けない)日々を送っている。それにはちょっとした訳がある。
初めてリアルタイムで戦争が生中継されたと言われているのが、いわゆる湾岸戦争だ。イラクによるクウェート侵攻がきっかけで勃発し、米軍をはじめとした多国籍軍が参入した。
砂漠の嵐作戦と称する米軍の空爆が始まった1991年1月中旬。ぼくはちょうど大学のゼミで、期末に提出する写真をプリントするため、学校のラボにこもりっきりだった。
誰が持ち込んだのかは知らないが、ラジカセが一台置いてあり、遠い国で行われている爆撃の様子が実況中継されていた。赤いセーフライトだけが点いた薄暗いラボの中で、アナウンサーのうわずった声で伝えられる戦況を聞きながら「これで第三次世界大戦になったら、進級どころの騒ぎじゃないな」と考えていた。そしてその頃、ぼくがよく聴いていた音楽がソニック・ユースだった。
今、何年も積ん読だった『キム・ゴードン自伝』を読んでいる。
キムはニューヨーク州ロチェスターで生まれ、カリフォルニアへ移住する。父親の仕事の関係で香港で1年間生活し、ふたたびロサンゼルスに戻った。
LAでのハイスクール時代は、その後、ティム・バートンの映画音楽で有名になるダニー・エルフマン(オインゴ・ボインゴ)と付き合ったり、デストロイ・オール・モンスターズのマイク・ケリーと交際……など、めくるめく恋愛遍歴にときめき、ゴードン・マッタ・クラーク主宰のレストラン「フード」でサーストンが皿洗いをして食い繋いでいた話、彼女の仮面をかぶったような無表情さにも家族関係(兄)の影響があったこと……など、知らなかったエピソードのオンパレードだった。
近々、Netflixでウォーホルの日記を元にしたドキュメントが公開されるのだが、キムの視点から撮られた、80年代のニューヨークのアートシーンと音楽にまつわる映画なんて絶対面白いだろうな。
https://www.netflix.com/jp/title/81026142
言うまでもなく、ソニック・ユースは素晴らしいバンドだ。大学時代にはコピーバンドを組むほど大好きだったし、オリジナルアルバムだけでも20枚近くあるから、解散したとてたぶん一生、聴き飽きることはない。
でも、さすがに続けて聞くのはしんどくなってきた。ねえ、プーチン。早く戦争はやめて、ぼくに別の音楽を聴かせてくれ。