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『悪は存在しない』

『寝ても覚めても』『偶然と想像』はまったく口に合わなかったぼくですが、『ドライブ・マイ・カー』がとても良かったので、今作も劇場に馳せ参じてみたところ……。

たぶん、濱口さんが映画を通して観客に提供したい”栄養”は、他の作家の映画、小説、ノンフィクションの書籍、良質なドラマ、ドキュメンタリー、音楽……経由でぼくは充分まかなえているんでしょうね。

「新聞、読まない」「納豆、食べられない」「サッカー、興味ない」という意見と同様、他の人にとって滋養にならないとは決して言いません

むしろその逆。濱口さんのような力量のある映画作家がもっと日本から現れてくれ!と願ってさえいます。また、この作品の映画の視点を混乱させる大胆な”仕掛け”は、テレビやスマホの画面で観たってちっとも面白くないはずで、映画館でご覧になることを強くお薦めします。

《以下、ややネタバレ的なことを書きます。見たくない方はスルーしてください》

すでに観た方には、同様の感想を抱いた方もいらっしゃるはずですが、山田太一や倉本聰が書いたらもっと面白くなりそうなプロットでしたね。後半はずっとその事ばかり考えていたせいで、エンドロールが流れ出した瞬間、何かとても大事な場面を見逃したのではないか、と焦りました。SNSに感想をアップしていた遠方の友人にDMを送り、わざわざ確認したくらいです。

ただ……ああいうオープンエンディングは嫌いではないけれど、ちょっと開き過ぎじゃない? とは思いました。だからこそ、山田さんや倉本さんならどういう形で物語を締め括ったかな? と、今もまだ答えのない妄想を続けています。

これって、新しいガールフレンドと新しく見つけたレストランで食事しながら、昔の恋人がこのハンバーグを食べたらどんな顔するだろう? と想像するみたいで、すごく失礼な話なのですが。

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