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THINK TWICE 20201129-1205

2020年12月4日(金) 心のとどかぬラヴ・レター

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バタバタしてるあいだに金曜日。まさに師走ですね。夜だけでなく日中の寒さもぐっと増してきました。さて、月末更新でムスタキビのnoteにコラムを書いていますが、読んでいただいてますでしょうか?

先日6回目の更新をしたのですが、これまでは相方のムスタキビCEO・黒川栄作さんがお題となる石本藤雄さんのテキスタイルを決めて、それに応じて、ぼくが思いついたことをつれづれ書いてきました。しかし、今回は黒川さんのリクエストで、テーマとなるデザインもぼくが決めることになりました(なんでだろう?)。

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なんなら黒川さんがこれまで選んだきたものとはちょっと違うテイストで、なおかつ12月の季節感に即したもの、と考え合わせて、ぼくがチョイスしたのが、比較的最近───と言っても1992年なので、もう30年近く前の作品《Kamelia》でした。

コラムをまだ読んでないよ、って方は下のリンクを押して、ただちにチェックしてくださいね。

さて、本文に書いているとおり、ぼくが住んでいる松山と椿は非常に縁が深いため、街なかには椿〇〇といったネーミングのお店や場所が数多あります。そのため、あまり深く考えずに「なんとなく書きやすいかな」と考えていました。

ところが、ぼくの関心や知識の主なリソースであるサブカルチャーの領域においては、考察すべき対象として《椿》というキーワードはやや弱かったんですね。英語で書くと《Camellia》なんですけど、曲名などを検索して引っかかるのは花ではなく、外国の女性名のカメリアが圧倒的に多いのです。

たとえば、ホール&オーツの初期の楽曲「カメリア」。これも椿ではなく、名前のほう。1975年にリリースされた4枚目のアルバム『Daryl Hall & John Oates』に入っている、シングルカットもされていない地味な曲で、ジョン・オーツが作詞&作曲しています。

次に浮かんだのは《カメリア・ダイアモンド》。これを販売していた宝飾店《じゅわいよ・くちゅーるマキ》《ジュエリーマキ》が、バブル期に流していたスポットCMは、忘れられない強烈なインパクトがありました。ぼくと同世代以上の人には記憶に残ってる方も多いんじゃないかな。

深夜にテレビを見ているときなんか、2階建て、3階建てはあたりまえ。ひと晩に何十回も同じCMが流れていました。高橋真梨子「桃色吐息」や鈴木雅之&鈴木聖美「ロンリーチャップリン」など、このCMシリーズから火がついたヒット曲も多かったです。イマ風のシティポップ文脈では絶対に再評価されないような、独特の脂肪分と甘い香料が過剰に添加された《AOR歌謡》がよく使われてました。とっくに潰れたと思いこんでいた親会社の《三貴》は3度も経営破綻しているのに、2020年現在も経営元を変えて生き残っているそうです。

と、まあ、カメリアダイヤモンドはなかなか楽しく書けそうな切り口だったんですが、ムスタキビや石本藤雄さんとはなんの接点も見いださせそうになく、取り上げるのを諦めました。ギブアップしようかなあ、他のお題に代えてもらおうか───なんて考えてると、デスクのそばに置いてあった『花椿』の最新号が目に入りました。で、そこからインスピレーションが湧き、一気に書き上げたのが先ほどのエッセイです。

石本さんと松永真さんや石岡瑛子さんとの関係、また《資生堂》についてのエピソードは、書き始めた瞬間はまったく念頭になく、最後のブロックの直前に到達したあとで、どう文章を締めようかと考えたときはじめて、ああ、そういえば───と思いだしたのです。

こういうふうに着地点(オチ)ありきで書くのではなく、キーボードを打つ指に勝手に考えさせるような書き方ができるようになったのは、実はごく最近のことです。きっかけはキリンジのファンクラブが運営していたウェブマガジンで、2013年から月に一回続けていた、短編小説(のようなもの)の連載でした。小説の中身そのものを誰かに褒められたことはほとんどなかったけれど(笑)とにかく月に一度、筆の走るにまかせて、なにかしらの物語(のようなもの)を綴るという特殊な訓練を6年以上も続けた賜物で、こういう技術(度胸)が身についた気がします。

そのときに書いたぼくの小説『フォーカントリー』から3編を選び、ZINEにして販売しております。送料無料でお求めやすい価格です(在庫僅少)。興味のある方はどうぞよしなに。


ちなみに連載のタイトルは、石本さん世代にはおなじみエルヴィス・プレスリーの大ヒット曲「Return To Sender」から拝借しております。実際に石本さんが読んでくださっているかは神の味噌汁。まあ、なにせ邦題が『心のとどかぬラヴ・レター』ですからね。たとえ相手に読まれなくても、想いのたけを熱く綴って届けるのがラブレターの醍醐味です。

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