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作品は半永久の命を持つので

「今日は何観た帰りなの?」

お世話になりまくりの人たちとの忘年会に悠々と遅刻した私は、得意げで、ご機嫌だった。

その時の私の顔が、好きなものを見たばかりで、キラキラしてたんだと思う。かといってデートでもなく。こちらは肩肘張らず一方的に幸せを享受する関係。エンターテイメント。おそらく「満足!今日も生きてて良かったです!」って顔をしてたのでしょう。

誰を?と問われたので正直に答える。それほど私と、前職の先輩二人は仲が良かった。互いが最高のオタクであることを笑って、最高だなとにこにこし合える大事なお友達だ。なので、何を答えようとも「えー知らない、マイナー!」と困られることもなく、斜に構えてると言われることもなく、興味なけりゃ詮索されないし、知ってるなら乗るのみ。

「最近、お笑いにハマっててライブたくさん行ってるんですよ」

意外、と彼が噴き出したのは、私が元々別界隈…二次元や2.5次元を追ってきてたので、本人が本人として本人の命で、体で生きてる人々を追うのが久々で(なんだこれ)だったから。Fate Grand Orderきっかけで仲良くなったIさんは、とりあえず、と聞いてきた。

「ちなみにお名前は?」

「ザ・ギースさん…っていう、コンビですね」

もしその芸人さんが第7世代なら辛うじてわかるかな。あるいはバラエティにたくさん出てる人とか。ライブ中心に活動するザ・ギースだからこそ私はこの追っかけ(?)に満足してるけど、申し訳ないと思いながらちょびっと、はにかみながら言った。

Iさんはカープファンでもないし、大喜利狂いでもないし、キングオブコントなんて見ないだろうし、気を遣わせるのも難だ。まあまあ、お二人をピッチでご紹介してから肉を頬張ろうとしたのだが。

「……! しいたけ触る人だ」

「はい、はい!?」

「触ったものの名前言っちゃうコント! オンバト世代だよね!?!?!?しいたけ!って叫ぶやつ」

「そ、そう、サラリーマンで、カバンの中にしいたけがあって」

「覚えてるよなんとなくだけど…! なんだ!ギースかよ!なら見たいよ!!!」

そんなにはしゃがれたら、なんか、泣いちゃいそうだった。

そう、そう、私がなんとなく足を運んだあの単独も、オンバトを覚えてたからで。

作品が記憶の中に、生きていたから私、あなた方をまた見つけられたんです。まだ続けてくれてたから出会えたんです。

耳を切り落とす前でよかった。諦めてしまう前でよかった。

作品は誰かが覚えてる限り死なないから。

ザ・ギースをいままで支えてくださったファンの皆様、関係者の皆様もありがとうございます。

なによりご本人様、ありがとうございます。まだまだ成長期なザ・ギースを見守りたいし、もっと多くの作品を見てほしいので

「四月に単独があります。チケ発売日出たらLINEします。とりあえずこのDVD見てください」

と、もう一人の先輩からたった数分前に返却されたDVDを渡した。チョイスは、「Pretty Best」と「Altanate Green」。まずは親しみやすいベストで気を緩ませて、尖った角で刺す戦法。ちなみにもう一人の先輩Sさんは見事にハマった。「すいているのに相席」の応援上映に行くために会社を早退しようとしたら上司に怒られた可哀想な人だ。待ってろ。年始の予定を確認中だ。俺はお知らせBotになる。

「え、荷物増える」

「じゃあこの場でAmazonギフト券を買うのでそれで見てください、事務所にお金が入るし再生回数が増える」

私は迫る。畳み掛ける。人間、ふわっとした熱なんて、懐かしさなんて、一時間もあれば冷める。ここだ。ここでとりあえず物握らせるしかねえんだ。オタクはヤクザのごとくヤクみてえな娯楽を押し付けあって毎日酩酊状態なんだから詳しいんだ。

「受け取れ!郵送するぞ!おら!

「じゃあ…この大きな荷物を代わりに渡しちゃいましょうかね」

Iさんは渋々折れると同時に持っていた紙袋を私に差し出した。千疋屋のでけえ紙袋に重たいブツが入ってる。りんごジュースだった。

カーーッ ずるいわずるいわ!そんな気障なやり方!

「お笑いに関する出費は私が持ちます、2人は指定された日程にライブハウスに来てください」

「「おまえはあいつらのなんなんだ!?!?!?」」



私は尾関さんのツイートをグループLINEに投稿した。


「とりあえず18日までにラジオにメール、最低5通送ってください」

なぜならば命は儚くて、数字はとっても強いから! シュールナイトニッポンへのメールは今月18日までよ!

食べると気が晴れるので、ケーキを買わせてください(半分無職)