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テキサスでタコスを食べてたらSHEのCTOになった話

振り返ってみると、これまで絵に描いたようなエリート人生を送ってきた。

保育園から公文式は序の口として、私立の進学校に入り、東大でエンジニアリングを学んで、indeedという外資のIT企業に就職し、アメリカに引っ越した。いわゆるグローバルエンジニアというやつである。待遇も良かったし、同僚にも恵まれていたし、海外生活は楽しかった。永住権をサポートしてくれる話もあったりして、なんの不満もなかったはずなのである。

しかし、それからわずか1年弱、今僕は日本に戻りSHE(シー)という社員10名くらいのスタートアップで働いている。女性が8割、生まれて初めて女性の方が多い環境だ。いまだにちょっと緊張する。社員のエンジニアは僕一人、頼れる先輩も毎日議論してた同僚もいなくなり、ちょっと寂しい。

どうして俺はこんなことをしてるんだろう🤔

正直たまに自分でもよくわからなくなるので、この機会に振り返ってみたいと思う。


ジョイン前

機械学習との出会い

今から8年前の大学4年生の時、機械学習という技術に出会い衝撃を受けた。

データが大量にあれば、人間でも時間のかかる複雑な判断を、プログラムに行わせることが出来る。

というアイデアに胸が踊った。データを食い、プログラムを吐き出す新時代の道具だ。社会にはいろいろな非効率や負があるけれど、データさえオープンであれば、知見をプログラムとして抜き出し、人力ではできなかったスケールで多くの課題を解決可能となる。その先端で色々な事例を作りたいなと思った。大学院から専攻もバイトもそれ一色にしてどっぷり浸かり、職業としてもそれと関わる仕事につこうと思った。色々検討した結果、indeedという会社に就職を決めた。

■indeedへの就職: 仕事のマッチングをデータを使って解く

indeedは世界最大の求人検索エンジンで、月間1億人以上のアクティブユーザがいる。

データを使って意思決定することで知られていて、検索ランキングからUIにいたるまでほとんどの意思決定がABテストでデータの裏付けを取り決定されている。まさに僕にとってはうってつけの職場だった。僕は日本オフィスの新卒一期生として入社することになる。入社後は、いくつかのチームを経て求職者の推薦エンジンを作るチームに入った。

仕事のマッチングは、簡単なようで結構複雑だ。採用側と求職側、双方が相手に求めるものが、職種によって大きく違うからである。例えば求職者目線だと、レストランのスタッフでは近さが重要だけど、プロダクトマネージャーだと待遇や会社の事業内容を重視する人が多い。採用者目線だと、ドライバーでは資格を持っているかどうかが一番大事だけど、エンジニアでは経歴と職務内容を重視する。

こうした細かいが重要な要素をデータから丁寧に汲み取り、全職種対応の推薦エンジンを作ること、そしてそれを使って『求人が投稿されてから良い人が見つかるまでの時間を最短にする』ことが僕たちのミッションで、忙しく働いた結果良い成果を上げることができたと思う。チームとして何度か会社で表彰してもらったし、チームメンバーも入った当時は4人だったのが20名近くまで増えた。はじめはペーペーだった僕も、シニアエンジニアとしてチームをリードするようになっていた。

■indeedを振り返って

indeedでのキャリアは、僕にとってベストな選択だったと思う。

第一に、エンジニアとしての基礎ができた。機械学習モデル運用のノウハウから、検索エンジンの動作、ひいてはフロントエンドの実装まで、プロダクトの様々な側面に幅広く関われたのは良い経験だった。KaggleのGrand MasterやTopCoderのRed Coder、そして関数型界隈の人たちなど、領域ごとに突き抜けた人たちと働いたのも貴重だったと思う。

そして、多国籍のチームで働いた経験は、自分にとって大きな自信になった。最初は全く通じなかった英語で、意思疎通ができたときは本当に嬉しかったし、肌で多様性の重要さを体感することができた気がする。自分が考えていた以上に世界にはいろいろな人達がいて、生き方も様々だった。なにをやっていても、世界のどこかしらに居場所はあるのである。結局やりたいことをやって生きていけば良い。

■次なるチャレンジ

しかしながら、働いていて自分の中でのもやもやが少しずつ大きくなるのを感じたのも事実である。それは一言で言うなら、

データに基づく意思決定は、そのままでは過去を再生産する

ということだ。

例えば、現在のアメリカにおいては、タクシードライバーだった人は、同じようなドライバーの職を勧められる確率が高い。開発していた推薦ロジックが、CEOの募集をすすめることは無いだろう。それがマーケットの動向だからであり経済的に合理的だからだ。しかし、本当にそれでいいのだろうか?自分の本音を言えば、

タクシードライバーが、CEOになるような世の中を見たい

のだと気づいた。

過去を再生産するのではなく、過去に前例が無いような飛躍を生み出したい。そのためには、データの活用だけではだめで、現状を変えるための強力なドライバーが必要だ。そんな思いが、徐々に僕の中で強くなっていった。


SHEとの出会い

■SHEについて

SHEは2017年の4月11日(シーの日)に創立されたスタートアップである。

一人一人が自分にしかない価値を発揮し、熱狂して生きる世の中を作る

をビジョンとして掲げ、女性向けのキャリア支援と教育事業をやっている会社だ。

デザイン・ライティング・マーケティングなどの学習カリキュラムを、コーチングと呼ばれるセッションを通して目標を設定しながら進めていくというもの。学習者同士での交流イベントも定期的に行っている。

最近少しだけ知名度が向上してきたようで、NHKに取り上げられたり首相官邸のツイートに取り上げられたりした。詳しい社内の雰囲気は弊社大本のノートを見てほしい。

■この会社大丈夫かなぁ

SHEと関わり始めたのは2年前の創業まもない頃、当時から友人だった共同代表の中山から、会社を立ち上げたのでシステム構築を手伝ってほしいと依頼されたのがきっかけだった。当時は教育事業ではなく、女性のためのコワーキングスペースとして事業を展開していた。

当時の印象は『急いで作ったハリボテ』と言った感じで、女性のためのコミュニティースペースとはいったものの、低予算で作られた会場は洗練された空間というより若い子のホームパーティ会場みたいだった。COOが徹夜で立ち上げたコーポレートサイトでは、可能性の花ってことなのか、一人ひとりが一輪の花を持って笑っている。正直安直で安っぽく見えた。ビジョンである『熱狂して生きる世の中を作る』も、なんか暑苦しい。すべてのコンセプトが荒削りで、不完全な気がする。今考えると予算も時間もないなかで、これが最適解だった思うのだけど、潤沢に予算のある大企業にいた僕には、すごく不安に映ったのだった。

■急ピッチで進む改善と人々の熱狂

そんなわけで、はじめはジョインなどは全然考えていなかったのだけど、その後徐々に僕の温度感は上がっていくことになる。理由としては、改善が鬼のように早いことと、そこに関わっている人たちの熱狂がある。

まず、改善のスピードが鬼のように早い。SHEは2年半で2回サービスのリニューアルをしている。それもサブスク→買い切り→サブスクという、事業構造を変える大きなリニューアルを。(エンジニア泣かせ!)そのどれもが事業的にも成功し、売上もユーザエコノミクスも改善してきているのだけれど、それは偶然ではないと僕は思っている。サービスを改修する以前の、オフラインでのPDCAの量が半端ではないからだ。毎日問題が議論され、重要なものは実装を経ずに直ちに検討され、最小の工数で改善策が取られる。最近MVPを受賞した大原が司会を務める運営チームのミーティングノートをたまに覗くと、膨大な項目が毎週追記されていて圧倒されるが、こうした愚直な改善こそが競合的な優位性を生み出す大きな要因になるのだなと、SHEを手伝っていて実感した。

次に、関わっている人々が熱狂しているように見えたことだ。今もそうだが、当時のSHEはかなりの割合を業務委託や副業の人たちに頼っていた。専門的なスキルを持っている人たちばかりではないし、みんな忙しくてタスクもパンパンだ。しかし、どんなに忙しくても、改善のスピードが落ちるようには見えない。それどころか、自分をわざと忙しくするような行動が取られる。少しだけヘルプで手伝い始めた人たちが、いつの間にかガッツリ関わってくれる様になる。

SHEは会社としてまだまだ未熟だけれど、その未熟さはメンバーに自分ごととして共有されている。

関わっている一人ひとりがそれを埋めようと、自分の専門性をはみ出して、日々改善を積み重ねている。スキル採用で職務もきっちり決まっていた大企業出身の僕からすると、不思議な現象だった。ちょっとした奇跡みたいだったと言ってもいいかもしれない。僕自身も、はじめは数ヶ月でやめるつもりだった副業でのリードエンジニアを、冬が明けても、アメリカに行っても続け、結果今に至っている。

結果として、事業やサービスも、いつの間にか僕自身が胸を張れるものに仕上がっていた。会員の方の熱量も、日に日に上がっていった。はじめは少し暑苦しかった『熱狂して生きる世の中を作る』というビジョンが、なんとなくしっくり口に馴染むようになった。今の弊社の活気については、ツイッターのハッシュタグ#シーライクスを見ていただけるとよく分かると思う。

■成長のプラットフォームというアイデア

そうやって徐々にSHEに一目置き始めた僕だけど、ジョインを考え始めたのは、共同代表の福田からふとしたタイミングで出たアイデアがきっかけだった。

受講生が、学び終えた後も、SHE上で働いて生きていけるような仕組みを作りたい

普通に聞くと、スクールが職業斡旋をやり始めた良くある話に聞こえるかもしれない。しかし、そのアイデアに僕はとてもワクワクした。SHEが、単なる教育サービスから、成長するためのプラットフォームになる未来が見えたからである。

エンゲージメントの高いコミュニティーの上で、人・教材・仕事を密に融合させた時、何が起こるだろう

世の中にはオンライン・オフラインを問わず教育事業者が溢れているけれど、本当に成長することはとてもむずかしい。それはひとえに、変化することが非常に大きなエネルギーを消費するからだ。現状にとどまり続けるだけでも大変なのに、そこから前に進むのは2倍しんどい。僕もなんどかしんどい時期があったっけど、窮地を脱したのはいつも仕事の先輩や、友人の励ましがあったからである。しかし、それは偶然運が良かった話で、誰もがそのような機会を得られはしないだろう。

もし仮に、変化を切望する人が、志同じ仲間に、課題を明確にするための仕事に、そして最適なロールモデルに出会える仕組みがあったなら、今までの学習サービスでは作れなかった大きな熱量を生み出せるのではないか。結果として、より多くの人が夢を実現できるようになるのではないか。そして、そこではデータを使ってある程度の最適解を導けるのではないか。

マッチングの問題として熱狂を科学しよう

これこそが、『タクシードライバーをCEOにする』ために僕が出来ることであり、過去から飛躍するためのドライバーなのだ。そう思った時、無性にワクワクして帰国を決め、今CTOとしてここにいる。

 

半年でやってきたこと  

4月にジョインして半年ちょっと、いろいろなことがあった。

この機会に少し振り返ってみる。

4月:コーポレートリニューアル

入ってすぐの4月11日が創業記念日(シーの日)だったので、それを機会にコーポレートサイトとメディアをリニューアルをした。人生で初めてWordpressを触り、しっかりアニメーションするサイトみたいなのを初めて作る。リードデザイナーのカイくんがイケイケで、クリエイティブ系のコーディングも楽しいなぁと思った。

5月:CWIA

エンジニアリング関係ないけど、代表の中山がカルティエ・マッキンゼーが主催するCartier Woman Initiative Awards(CWIA)に日本初のファイナリストとして選ばれたこともあり、通訳件ヘルプとしてサンフランシスコに行ってきた。アワードこそ逃したけど、いろいろな国の人から共感いただいて、

9月:サービスリニューアル

それから怒涛の開発の日々が続く。

リニューアルは毎年恒例なのだけど(恐怖)、今回も我々のプロダクトがより大きな熱狂を生み出せるよう、大きなアップデートを行った。5月から動き始めて、7月にβ版リリース・9月に本リリースという結構パツパツのスケジュールで進めた。

特にエンジニアリングとして行ったものは以下である。

定期課金化と決済システム刷新

ユーザとの関係性を長期化するために、サブスクリプションに舵を切った。
2年間で、サブスク→買い切り→サブスクという変遷をたどっており、その知見を活かして新プランの追加やアップセル等が簡単に行えるよう、決済システム全般を刷新した。結構イケてる感じになったと思う。

カリキュラムのオンライン化

より熱狂を生み出すことにフォーカスするため、基本的なカリキュラムはすべて動画でオンラインで視聴できるようにした。ワードプレスみたいな簡易的な入稿システムを作成し、バージョン管理とかもつけた。

コンテンツチームと二人三脚のなかなかハードな開発であったけど、そのかいもあり、現在は13のコースがオンラインで閲覧できるようになっており、今後も追加予定である。

コーチング予約と目標管理

今回のリニューアルの目玉であったのが、『コーチングによる目標の深堀りとペースメーキング』である。

コーチングの予約まわりとコーチのシフト管理、そしてそれに紐づく目標管理機能を実装した。

CI刷新

合わせて、CI(Corporate Identity)も刷新した。
この背景は、共同代表福田のノートが詳しいので是非読んでほしい。

2月:銀座拠点オープン(予定)

そしてリリース後すぐ、新拠点の話が決まる。

現在は、次の新拠点オープンに向けて、オペレーション面の改善を急ピッチで進めている最中だ。

振り返ると、結構色々やったな。

これを僕と業務委託の方最大2名で回していたのは、まあまあよくやった気がする🤔


これから先

最後にこれからの展望について書く。

幸いなことに、僕たちのサービスは少しずつ世の中に受け容れられるようになり、会員は順調に増えている。来年2月には銀座拠点がオープンし、今後も拠点は順次拡大していく予定だ。

プロダクトチームとしては、学習の基礎をやっと作り終えたという感覚で、これからは学習を楽しくする機能を拡充しつつも、より大きな熱狂を生み出すための『次のステップ』を形にしていきたい。アイデアはたくさんあって、オフラインで並行して検証を進めているところだ。日々状況が変化していくので、何に注力していくのか僕も正直まだわからないけれど、きっと来年は今まで以上に受講生の方の熱狂にコミットできていると信じている。

プロダクト開発全般で大事にしているところは以下である。

Flexible

やりたいことは常に今できることより大きい。そのため、やりたいことを最小限の労力でテスト出来るための仕組みが必要だ。特にプロダクト以外のチームの知見を即座にサービスに落とし込める仕組みが重要だと考えている。マーケティングチームが新しいキャンペーンを考えた時、運営チームが新しい会員とのインタラクションを考えた時、即座に実行出来るようにしていく。

現状でも、新しいプランを作ったり、割引をしたり、通知メールを入稿したりとかは行えるが、もっと自由度を上げていきたい。特にインタラクションの部分に関しては、イベント駆動のアーキテクチャの導入を積極的に進めていきたい。

Personalized

SHEのゴールは、個々人が自分の大切にする価値観を実現するところにある。最適なカリキュラム・メンター・仕事は個々人によって当然異なるので、サービスとしても個々人に最適化できる設計にしていかなければならない。会員の嗜好性・学習状況を柔軟にインデックス出来る仕組みを整備し、サービスで利用していく。

Connected

オンラインとオフライン、個人の学習体験、コミュニティ、仕事の斡旋、SHEでは様々な一つのプラットフォームの上で複数の機能・サービスが存在することになる。これらをシームレスに連携し、かつ独立して開発していけるように、アーキテクチャを改良していく。


最後に - We are hiring😉

最後になるけど、エンジニアを絶賛採用している。(その他の職種も絶賛募集中だ。)

上のように、状況が目まぐるしく変わる環境で、サービス開発をするのは大変で、アーキテクチャーが重要になってくる。フロント・バックエンド・インフラを問わず、良い設計とはなにか、一緒に議論しながら進められる方、是非応募してほしい。

一緒に人が熱狂して学び続けられる仕組みを作りましょう。スタートアップ楽しいですよ😉

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